第3話問題のある仲間 石川さん

「入ってくれるの?」

「書いてあんだろ。レモン・スカッシュを目指せって。あのバンド好きなんだよ。ダチにギター、適当なのいるぜ」

 意外なことに、仲間が見つかってしまった。もっと難しいと思ってたのに。石川さんとはそれほど仲良くないけど、仲間になったから仲良くなれるかな。それに、同じバンドが好きだということが分かった。こんな偶然なかなかない。

 小躍りしながら廊下を進んでいると、先生がいた。渋い顔をしている。

「先生、どうかしたんですか?」

「まずいぞ山本、石川は停学常習者だ。あんな不良と一緒にいたらお前も同じだと思われるぞ。悪いことは言わないから、別の生徒を探せ」

 カチンときた。

「先生、私は自分の仲間と音楽をやります。やりたいと言ってくれた子を拒絶したりしません。もう彼女は私の仲間なんです」

 廊下から長身の女の子が出てくる。石川さん。

「山本、けっこー言うじゃん。うれしかったぜ。これからよろしくな」

 そのまま先生は職員室に戻っていった。私の肩に手をおいてから。

 短すぎないスカート、黒髪を2つに縛った髪の毛など、私は性格だけでなく外見も地味。そして石川さんは茶髪に染めてピアスを片耳に2つずつ。指輪もしている。レモン・スカッシュのかわいらしい青春は、どちらとも似合わない。

「石川さんは、レモン・スカッシュのどこが好きなの?」

 思わず口にしていた。なんでだろう、そう思ったから。

「あいつら、妹に似てんだよ。1年前に持病で死んじまって。かわいくて明るいやつだった。だから、妹に似ていてがんばってるあいつらが好きなんだ。俺にはにあわねーよな」

 そうなんだ。妹がいなくなっていたなんて、噂にも聞かなかった。きっと、大好きだったんだろうな。

「私と音楽がんばって、妹さん喜ばせようよ」

「もともとドラム好きなんだよ。でも、天国に響かせんのもいいな。俺のドラムうるせーから」

 明日は仲間のギターを紹介してもらうことになった。石川さんの幼馴染。彼女以上の問題児か考えると、少し笑みがひきつった。

 

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