第2話青春を探したい

「優子、朝よ。今日からテストでしょう」

「もう少し寝かせてよ、母さん」

 朝からてきぱき仕事をこなす母親をみながら、私はぼんやりしていた。バンドを作りたい。だけど私には友達がいなくて、メンバーも集められない。今の生活を送っていても、私のバンドは作れない。

 自分が変わらないと、何もできない。自分ががんばらないと、一歩踏み出せない。

「田口先生、同好会ってどうやったら作れますか?」

「山本、テスト期間中に余裕だな。そうだな、3人以上の部員と顧問がいればいい。何がしたいんだ? 今ある同好会、部活動じゃダメなのか?」

「自分で始めたい、大事なモノを見つけたんです。テストなんてどうでもいいくらい。先生、顧問になってください」

 断られるかと思ったけど、田口先生は顧問を引き受けてくれた。条件は2週間以内に部員を見つけること。あと、テストもがんばること。これは努力義務だけど。

 テスト勉強の合間にポスターを作った。田口先生にハンコも押してもらった。あとは学校に貼って部員を募集する。

「優子はピアノを習っていたから、キーボードはどうだ? 歌も悪くないし」

「それもいいんだけど、そもそも部員集まるのかな? 私の思いつきだし。お父さんは私に甘いし」

「高校2年生のお遊びならちょうどいいんじゃない? プロ目指しているわけでもないし」

「お姉ちゃんはちょっと言葉がキツイって」

 家族と話していると少しつらい。たしかに、プロは難しい、どころか考えてもいなかった。大学に行く準備をしながら、少し青春がしたい。そう、私は青春がしたいんだ。全力で遊びたい。それで食べていきたいわけじゃない。それって、甘いのかな?

 ペタペタ。

 放課後にポスターを貼っていく。そんなとこにクラスメイトが通りがかった。

「山本、部活作んのかよ。バンド? おまえ歌えんのかよ」

 口が少し悪い石川さんは、規則違反のいでたちだけど、音楽の成績はいい。

「そう、私がキーボードとボーカルをやるの。石川さんも何かやらない?」

「俺はドラムならできるぜ」

 口ぶりを聞いていると、まるで男の子。部員になってくれるのだろうか。

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