第33話 俺は......死ぬわけにはいかないんだッ!!(結果は次回へ)
「つうううううぅぅぅううう!!!!!!」
「むうううぅぅゥゥウウウーーーー!!!」
「リイイイィィイイイイッ!!!!!!!」
ふぅー。やれやれ、こうもモンスターの断末魔がうるさいと流石に耳障りだな。耳栓が欲しくなる。戦闘中に聴覚塞ぐとかできないからつけられないけど。
などと考え事をしながらアーツィーはバッタバッタとモンスターの腕、足、首、胴などを切り飛ばしていく。
モンスターはただ外へ外へとダンジョンから出ていこうとするだけでアーツィーに向かって攻撃という攻撃はしてこない。だが、それでも体長2,3メートル級の大型モンスターが一心不乱になって大量に走ってくるだけでも
モンスター1体にでも轢かれれば死ぬ。しかし、足元は踏み潰された小型モンスターの血や臓物で足を取られやすく、ダンジョン入口の両サイドにあった松明はモンスターによって破壊されていたため、視界が悪い。
そんな極限化の中でアーツィーはモンスターとモンスターの隙間を見つけ、間一髪でモンスターの突進を避け、さらにはすれ違い様に一撃加えていく。また、隙間が無ければモンスターを切り裂き、強引に隙間を作っていく。
このザイツェダンジョンの入口付近の天井の高さはそこまで高くないため、モンスターを足場にして首を狩っていくこともできない。高さがあればアーツィーはやっていたことだろう。
アーツィーにとって辛いのはこの入口付近だけ。もう少しダンジョンの奥に入れれば場所も開けて
ゆえに、アーツィーの目的はそこまで進みきることにあった。
「やべ......キツ......い。......ハハッ」
ぬおおおおおぉおおおおおおおッ!!! 想像の5倍はキツいわッ!! ハハッ。なんかから笑い出てきたわ。
「いつもは攻めばっか......だけど、こう......も、避け、たり! 受けに回るのってぇッ!! なんか、新鮮ッ!!」
息も絶え絶えで独りごちる。現状はまだ若干の余裕があるアーツィーだが、何十体ものモンスターを連続して斬ったアーツィーの剣の方が限界にきていた。
どんな名刀であろうともどんな達人が使おうともモンスターを斬れば斬るほど刀身に血や
視界不良で足場もわるい。そんな中で振るう剣がまだ折れていないというのはアーツィーの成せる
とはいえ、もう
「マジかよ......」
小さく
剣のない剣士は攻撃手段がなくなる。
そうならないためにもアーツィーは剣を折らないようにしながら、モンスターの突進を避け、攻撃をくわえつつ、何か他に武器になるようなものがないか目の端で探す。
「......ッ!! くそッ! ......ねぇ!! 武器はッ! どっか、にッ!!」
あってもゴブリンが持っていたこん棒や錆び付いた短剣くらいしかなかった。しかもオークやトロルなどの大型モンスターが踏み潰し、ただのゴミとなっていた残骸しか……。
「持って、くれよぉ......。頼むから」
アーツィーは自分の剣に祈るように頼るしかなかった。レルが使っている剣をふと思い出す。
「あいつの、剣......ニホントウって、やつだったっけ、か? あいつの、剣だったら、もう、ポッキリ、いってる、よ、な......。ハハッ、なんで、今、そんなこと、思い、出したんだろうな......」
精神的にもキツくなってきたアーツィーがぼやく。そして、アーツィーの剣のヒビがさらに大きくなる。
───
アーツィーが突入した直後、マイクたちはすぐさま行動をとった。が、マイクたちが思っていた結果とは良い意味で違う結果となっていた。
「おお......。こいつは......」
「まさかこうなるとはね」
「もしかしたらアーツィー君はこうなるように一人で突撃したのかも......」
「なるほどな。たしかにそいつはありえる」
「でも、中のアーツィー君は大丈夫かしら」
「それは彼の腕を信じるしかない」
「ああ、そうだな。でも、今はまだ大丈夫みたいだ」
「? どうしてそう言えるの?」
「見ろ。モンスターの出る量を。......一定数でしかも勢いも変わらないときた。つまり、一定数のモンスターをいまだ狩り続けているということ。じゃなけりゃ、これが崩れて勢いよくモンスターどもが出てくるさ」
「ふーん。そうゆうことね」
ダンジョンの入口は今、アーツィーが瞬殺したモンスター死体の山でいっぱいになっている。
そしてその死体の山でダンジョンの入口がほとんど塞がり、モンスターが物理的に出れなくなっていた。
マイクたちは死体の山を押し退けて出てきたモンスターを殺して、死体の山に積み重ね、ダンジョンから出てこれないようにしているだけだった。
「一時はどうなるかと思ったけど、アーツィー君がこれを狙ってやったかはさておき、俺たちはこれを崩さないようにしなければな。でなければアーツィー君が一人で突っ込んだ意味がない」
マイクの言葉にみんなが頷く。
とはいえ、徐々にモンスターが死体の山を押し退ける力が強くなって来ている気がする。
モンスター1体1体に一撃を与えているようだが、傷が浅くなっているような......。怪我をしたのか? ......いや、武器か? 両方か? だとしたらマズいな。
マイクはアーツィーの今の状況をモンスターを処理しながら推察する。
「アーツィー君はもしかしたら怪我をしているか、武器が破損した可能性が高い。俺たちはアーツィー君の無事を祈ることしかできないが、さっきも言ったように俺たちは俺たちの出来ることを精一杯しよう」
と意気込んだマイクの背後に何かの気配がしてマイクは振り向く。
「んだぁ? こいつはぁ?」
「マ......ッ!!」
マイク以外も声のした方へ顔を向け、マイクは驚きのあまり思わず声が詰まってしまった。
「ここにあるからぁ。急いで行けってつってさぁ。言われて来てみりゃぁ。どうなってんだぁ?」
「マ、ママママママ......」
「魔人ッ!!」
マイクはマしか言えてなかったが、ゲイルがマイクが言いたかったことを叫ぶ。
そこにいたのは体長2メートル程の魔人。人語を話すが人間と決定的に違う点が2点ある。
1つは体の一部がモンスターの体である点。この魔人は背中の右側から片翼のガーゴイルの翼を生やしていた。
そしてもう1つ違う点は人間なら誰しもが気づく邪気がある。
『邪気』とは人間で例えるならS級冒険者パーティーのリーダー、ゼクスが放つ『覇気』である。覇気を受けた弱いモンスターは一目散に逃げようと体が勝手に動くもの。
その逆もしかり。『邪気』を受けた人間は今のザイツェダンジョンのモンスターみたいにその場から一目散に逃げたしたくなるものであった。
一般の人間なら狂って逃げ出す場面だが、ここにいるのはみな冒険者で、そこそこの経験者だったから、逃げたしたい欲求を押さえ付け、魔人の
魔人はマイクたちとモンスターの死体の山を眺め、頭をポリポリ掻く。
「でえぇ。どおすっかなぁ。......んん? そういやぁ、先にここに向かわせたぁ、オークどもがぁ、死んでぇ転がってたなぁ......」
マイクたちは息を飲んだ。魔人の次のセリフを言い終わった後にどんな行動をするか予想が付いたからだ。
「お前らぁ......だなぁ?」
魔人の雰囲気が殺気だつ。魔人は背中の左側から右の腰に掛けて背負った大剣を抜き、構えた。
魔人にしては珍しく剣を使うようだ。そんなことをマイクは考えた。が、マイクはそんなことより指示を出す。
「みんな! S級パーティーが出てくるまで時間稼ぎだ! 一人はそれを崩さないようにしろッ! 他はこいつの相手だ!! あと、わかってると思うが......死ぬなよッ!!」
「ああ! こんなところで死んでたまるかッ! 俺、帰ったらサラと結婚するだ!!」
「ええ、そうね! 私はフィオの誕生日を祝ってあげないといけないんだから、こんなやつに殺されてたまるかって!!」
「ネヴィアにマイクのこと宜しくって頼まれてんのッ! ここでマイクが死んだら、ネヴィアが浮かばれない! だから、絶対にみんなで生きてやるッ!!」
「俺はこれを崩さないようにしながらここから援護射撃をするッ!! ......俺にはまだ、死ぬわけにはいかない! あいつを倒すまではと決めているッ!!」
ゲイル、ミレイヤ、リシエラ、カークの順にみんなが気合いを入れ、最後にマイクも気合いを入れるために叫ぶ。
「ネヴィアに助けられたこの命、恩を返すまで俺は......死ぬわけにはいかないんだッ!!」
マイクが叫んだ直後、魔人も含めてこの場にいた全員が動き出した。
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