第34話 『火力こそ全て』の現在と『組織』(アーツィー君の助けは一体!?編)
「リーダー、ヤバイですよ。これ。上に魔人が現れましたよ」
「ああ、たぶん奴もこいつが目的だろう」
ゼクスが鞘に収まっている剣を軽く持ち上げる。形状はロングソード。
パーティーメンバーのイーナが怪訝そうな顔をしてゼクスに問いかける。
「ゼクス、その剣が何なのかそろそろ教えてくれません?」
「……」
「ねぇ、リーダー。国からの依頼ってことだけしか聞かされてないし、もう状況が状況だし、もう教えてくれてもよくない?」
「……」
「そうそぅ……、ぜぇ、はぁ……、いっ、言っちゃ、っても……はぁー、よくない?」
「……」
イーナ以外にも気になっていた他のメンバー無言を貫こうとするゼクスに追求する。ちなみに最後に息切れしながら発言したのはエウスマキナ。小一時間ほどこのダンジョン全体に結界を張っていた人だ。今は仰向けになって倒れている。
「……はぁ、仕方ない。言わなきゃお前ら今日一日うるさいからな」
「む、その
「「「そうだそうだ」」」
「現に今うるさい」
「なにぉ~」
「ちょっと、リーダー。わざと煽って話を脱線させようとしてます? とっとと本題入って下さいよ」
「……わかったよ。う~ん、どっから話したらいいのやら……」
「時系列順で話せば?」
「いや、そんな時間はない。上の人達がピンチだから簡潔に言って?」
「……わかった。……簡潔に言うとだな……。そのぉー……、えっとだなぁ。まず、先に言っとくけど、これ、他言無用ね」
「い・い・か・ら! 早く言って! 分かってるからッ!!」
「そう怒るなよ。……俺だってホントは伝えたくないんだ。……それじゃあ、えー、コホンッ」
「!? 待って! 上の人達が死にかけてるッ! なんか助ける案無い? 一番ヤバイ状況の人は一人でこのダンジョンに剣一本で突っ込んだ人ッ!! もう剣がボロボロで剣が無くなったら死にそうな人。魔法が使えない人みたい!」
ミーシャがゼクスの言葉を遮って、ゼクスはホッとした顔を一瞬したのち、すぐキリッとする。
「よし、ならこの剣をそいつに届けてやれ。ただし、魔人に剣をとられるな、と言っといてくれ」
「え? いいんです?」
「このサイズの物で上の階に飛ばすくらいならこっからいけるだろ。ベイ、いけるか? ミーシャ、そいつの方角は? あとそいつに剣を届けることを伝えろ」
「いいのか? リーダー。こいつ投げちまって」
ベイは
ベイはゼクスから剣を受け取り、ミーシャはアーツィーがいる方角を指差した。
「方角は向こうだけど……」
「わかった。 ……ベイ、そいつは壊れねぇ。そういうシロモノだ。もしそいつが壊れてくれれば厄介事が消えてくれるだろうよ。ま、壊れるわけがないが……」
「あいよ」
ベイは受け取った剣を槍投げのように構えて魔力を溜める。
「あ! ちょっ!! 待って待って! まだそこにいる人に伝えてないからッ!! まだ投げないで! 絶対まだ投げちゃダメだからねっ!!」
「……」
ベイは投げる前のポーズをしたままミーシャと顔を合わせる。
......ベイは鼻で笑ってから思いっきりぶん投げた。
そしてミーシャの悲痛な叫び声がダンジョン内によく響き渡った。
──────
同刻。アストフィア王国内のとあるギルドの地下室。
「さて、挨拶は抜きにして火急的な問題の対処を決めよう」
モニターに向かって話始めるシルフィー・ハモンド。モニターの向こう側に見えるのはギルドマスター、この国の重鎮達、組織の上層部の人間などの国の方針を決定付けられる者達がいる。
「対象を
この場にいる人はみな、『
「
コホンッ。と一度咳払いをしたのち言い直そうとするこの女性はこの国の戦略国軍参謀のミリア・ザンディゲーティ。
彼女は若くして参謀の地位に上り詰めた才覚の持ち主。歳はまだ20代。だが、それでも彼女の考えた戦略・戦術は現場的にも政治的にも誰もぐうの音が出せない程、理に叶ったモノであり、実行可能なモノしか提示しない。
そしてこの場では政治的な絡みが大いに発生する内容のため、ハモンドは最初に意見を聞いた。
「──では、改めて私の考える
魔王軍の表と裏。これは勇者が戦っている方の舞台の表にいる......世間に認知されている方の魔王軍と、組織やレル達の裏の人間が戦っている方の新魔王軍の方のこと。
裏の人間(組織)が間引き作戦と称し、新魔王軍と戦争を行っている。結果だけみれば裏の人間の被害が軽微で新魔王軍の魔物の数を減らしているため、間引きという表現で合ってはいる。
「他にも他国から勘繰られ、うちがあれを保持していると噂されれば我が国の発言力が弱まるかと。近隣諸国に組織が根付いているとはいえ、こればかりはどうしようもありません。しかし、メリットといえばあれを扱える者がいればプラスの戦力になることでしょうかね。ただ......」
喉が少し渇いたミリアはホットココアが入ったマグカップに口を付けてから話を続ける。
「ただ、その者が我が国家に協力的かどうかにもよりますし......それになにより、
低い可能性だと思いながらも自分で提示したメリットにミリアは苦笑する。
限り無くありえないような低確率なのですが、とボソリと呟き意見を続ける。
「その場合はその力を堂々と使えるので魔王軍にも他国にも強い牽制になるので是非欲しいです。......が、そんな運良く都合の良い展開になるまであれを、
「......なるほど。
「......よろしいか?」
「はい、ヘルモント殿どうぞ」
ハモンドがアーツィーの姉、ルーヴィライト・ヘルモントに促す。
「壊す、とのことですが破壊する手法・手段は如何するのですか?」
「それはマルチデリーターに任せれば問題ないです」
「......組織の実行部隊のトップの実力と実績を疑う訳ではありませんが本当に、確実に
ハモンドの回答にルーヴィライトが少し懐疑的になる。
というのも、ルーヴィライトは姫の近衛隊員として史上最小年齢で席を置く実力を持ち、自分の目で見たモノしか信じない性格ため、
このことはハモンドはもちろんのこと、ここにいる殆どの人間は知っている。だからかハモンドはルーヴィライトにこう告げる。
「フッ、なら彼らが
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