第14話 始まりの少女3
なんとか高校生らしき数人を撒いて路地裏
に身を隠したところで瞳は少し落ち着けた。
でも、本当に心当たりもなく、全く意味が判
らなかった。追いかけてくる一人を捕まえて
問いただそうか、とも思ったが一人ではどう
しようもなかった。
「あっちか。」
また、声が聞こえる。
「探せっ!、絶対に逃がすな!!」
言葉だけ聞くと闇の組織かのようだが、声
が若い。
「ちくしょう、どこに行きやがった。」
「お前たち、逃がしたらどうなるか、覚悟は
できているんだろうな。」
リーダー格の少年が威嚇するように叫ぶ。
「闇雲に探していても埒が明かない。一度戻
るぞ。」
とりあえずの危機は脱したようだった。な
ぜこうも自分の位置がわかるのだろうか。や
はり発信機か?持ち物や着ているもの、身体
の隅々までも探してみたが、何も見つからな
かった。
「まさか、あちこちの監視カメラをハッキン
グでもしてるっていうの?」
近未来のご都合主義の映画みたいなこと、
あり得ない。でも、そうとしか思えない。幸
い今潜んでいる場所の近くには監視カメラが
ないようだ。それで彼らは私の位置が掴めな
かったのか。もしそうだとしたら、ここから
一歩も動けないことになる。
実際には確かに結城高弥が各地の監視カメ
ラをハッキングし自分で作った顔認証システ
ムで少女を探していたところ、新宿でヒット
したのだった。
「繁華街の人混みに紛れようとしたのが失敗
だったかな。」
自宅周辺の方が監視カメラは少なそうだっ
たが、ここらにはありとあらゆるところに監
視カメラが設置されていた。
瞳は一か八か監視カメラを意識して避けな
がら自宅に戻る決心をした。ずっと逃げ回る
わけにもいかない。とりあえず少年たちの姿
は見えなくなったので、できるだけ顔を隠し
て駅えと走り出した。
荻窪駅に戻り、別の二人組に声をかけられ
た公園を避けて自宅方面へ急いだ。ふと思い
ついて自分が自宅アパートを見張るとしたら
何処から監視するか、という見地で場所を数
箇所ピックアップし、その場所にそっと近づ
いてみた。案の定、3か所に見張りが居た。
幸い瞳が逃げるときに使った隣のアパート
を抜けるルートには誰もいなかった。住んで
いないと判らないイレギュラーなルートだか
らだ。
誰にも気づかれず自宅に戻ることに成功し
た瞳だったが、電気を点けるわけにもいかな
かった。
「なんで私がこんな目に合わなくちゃいけな
いのよ、私が何をしたっていうの?」
何回目かの問いにも答えられるはずはなか
った。
外で大きな音がした。気づかれないように
伺ってみると、さっき新宿で撒いた少年たち
だった。ひとりが倒れている。見張っている
者どうしで揉めたようだ。開いては反社のチ
ンピラと呼ばれるような類の男たちだった。
「もう勝手に潰しあってくれないかしら。」
少し物騒な、でも真剣な願いだった。
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