第11話 遠藤修平9
「修平さんの願いとは、その沙織さんのこと
ですね。」
「そうだ。沙織姉さんの意識が戻る、ただそ
れだけの願いなんだ。新山教授と幸二郎さん
がどれだけ頑張っても出来ないんだ、俺には
どうしようもない。」
「その願いを叶えてくれると?」
「沙織姉さんの意識を戻してくれる、とは言
ってないけど、俺の願いを叶えてくれる、と
言った。俺はそれを信じる。信じるしか手が
ないんだ。俺たちが少女を確保できたとして、
その少女がどうなってしまうのか、それは全
く判らない。但し、いくら俺の願いを叶えて
くれる、と言っても少女に危害を加えるよう
なら協力はしない、と言ってある。」
「色々な意味で信用できますか?」
「賭けだな。俺は信じてもいい奴だと感じた
からやる気になった。お前たちは会ってない
から判断が付かないだろうけど、そこは俺の
勘を信じてもらうしかない。駄目なら手伝っ
てくれなくてもいい。強制はできないと思っ
ている。最初から全部話して手伝った貰おう
と思ったんだが、今一俺自身も半信半疑だっ
たんだ。最初は半分ゲームのつもだった。だ
から強い言葉で煽ったりもしてみた。ところ
が、高弥がすぐに特定してくれて、現実に居
る少女であることや、どうも他にも探してい
るグループがあることが分かってきて、どう
やら何かとんでもないことにお前たちを巻き
込んでしまったと思ったんだ。」
途中から修平は謝罪モードだった。
「特に亮太には悪いことをした。まさか、危
害を加える奴らが居るとは思ってもなかった
んだ。」
「今更、ですね。修平さんの気持ちは理解し
ました。私は言うまでもありませんが修平さ
んのやりたいことをお手伝いするだけです。
他のメンバーは関わらせない方がよさそうで
すね。」
「修平さん、高弥さん、俺たちもお手伝いし
ますよ。」
広瀬渉と五代祐作は口々にそう言った。
「駄目です。私たちも自らの身体を守るので
精一杯になる可能性があります。君たちの身
柄を守るには手が足りません。」
「自分のことは自分でなんとかします。」
「駄目です。足手まといだと言っているので
す。暫らくはベースにも近寄らないでくださ
い。君たちが攫われて人質になったらどうし
ます?」
渉と祐作は高弥に言われて渋々ベースを後
にした。
「悪いな、嫌な役をやらせてしまって。」
「いいですよ、それが私の役割ですから。信
一にも連絡を入れておきます。それはそうと
亮太は病院を抜け出して何処にいってしまっ
たのでしょうか。」
「連絡は取れないのか。」
「スマホも電源がオフになってますね。位置
情報では追えません。監視カメラを辿ってみ
ますか?」
「頼む。怪我をしたままだから心配だ。」
「それにしても桜井亮太という人間はでデー
タ上、日本には居ないことになっているんで
すが、一体何者なんでしょう。」
「判らない。あいつが1年で入ってきたとき
向こうから俺に接触してきたからな。特に何
も疑問にも思っていなかったし、おかしなと
ころもなかった。」
「確かに。私も全く気が付いていませんでし
た。なぜだか亮太の素性を調べようとは思わ
なかった。他のメンバーは銀行の暗証番号ま
で調べてあるというのに。」
「おいおい、それは合法か?」
「もちろん、違法です。」
「相変わらずだな。そうか、お前が調べなか
ったのは、やはりおかしいな。調べていたら
すぐに判った筈だからな、亮太がデータ的に
は存在しない、ということが。」
「亮太と少女と、二人を探さないと。」
修平と高弥は作戦会議に入るのだった。
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