第15話
僕は来た道を早歩きで戻る。随分暗くなってきた。だが、前の時に比べればまだ時間は早い。
正直、本当に彼女を信じていいのか分からない。僕に対して「死ぬ」と言ってきたやつのことを、信じる僕は頭がおかしいと思う。
でも、たまに見せるどこか寂しげて、悲しそうなあの瞳を持つ彼女が嘘をつかない気がした。僕の感覚だけだが、今はそれを信じるしかない。
早歩きで間に合わない気がして、僕は走り出した。どこへ向かえばいいかなんて、分かるわけがなかった。でも、彼女を助けなければいけないような気がした。
真っ暗な道を必死に走る。何回走ればいいのだろうか。さすがに体が痛い。
僕は電車に乗る。電車の中には数人しかいない。この時間から、都会に向かう人などそうそう居ないだろう。
乗り換えをしたから、いつもより数分遅く着いた。
駅を出ても、人は沢山いる。建物の明かりが光り、街頭も沢山ある。そのせいか、空の暗さがあまり分からない。僕の町とは大違いだ。
また僕は走り出した。途中に並ぶ居酒屋からは、酒の匂いがそこら中に充満している。
どんなにうるさくても、僕の耳には届かない。
必死なんだ。彼女を救うために。名前すら覚えていなかった、彼女を救うために。
ハァハァ
僕は校門の前まで来た。苦しくなった心臓をどうにか落ち着かせながら、校内へと入る。
彼女がここにいるという確証は出来ない。本当に、僕の勘でしかない。なんとなく、ここにいる気がしたのだ。
運良く、1階の保健室の窓の鍵がかかっていなかった。僕は、そこから廊下へと出る。
非常用のランプが点いているだけで、どこの電気も消えていた。
薄暗い学校に少し寒気がしたが、今はそんなことを気にしている暇はない。
僕は階段を走って上る。1段飛ばして上るが、さすがに疲れが溜まって足が動かない。
やっとの思いで最上階に着いた。そして、僕は錆び付いたドアを開ける。
「......。」
見渡しても彼女はどこにもいなかった。生ぬるい風が僕の肌に当たった。
結局、彼女の言った事は嘘だったんだ。
最低だ。僕は自分じゃなく、彼女を責めてしまった。
自分でこの場所まで来たのに......。全て自分の意思だ。彼女のせいじゃない。
僕はため息をつき、その場を去ろうとした。
いきなり、強い光が僕を襲う。何事かと思い、振り向く。
「えっ......。」
まただ。また、僕は彼女を......。
そこには、綺麗に並べれられた靴が置いてあった。
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