第6話

 キーンコーンカーンコーン


 完全下校のチャイムが鳴る。まだ、校舎からは人がチラホラ出てきている。

 僕は、大輝と一緒に駅まで行く。



 大輝はサッカー部で、完全下校ギリギリまで練習をしている。部長をやっているだけあって、信頼が厚い。並外れた運動神経を持っているからか、大学からの推薦もよく来るらしい。


 僕といえば、図書室でペンを片手にずっと教科書と向き合っている。別に成績を上げようと思ってやっている訳ではない。部活にも入る気もさらさらないから、暇つぶし程度に勉強をしているのだ。飽きたらそこらにある本を読んでいればいいから、別に嫌じゃない。



 駅に行く道は部活終わりの人が多いのか、僕の学校の制服以外の人も多くいる。


「......ょう?......りょう??ねぇ、涼??聞いてる??」


 大輝がこちらを向きながら、顔を傾ける。


「あ、ごめん。ぼーっとしてて......で、何の話??」


「大丈夫??やっぱり、疲れてるんじゃないの??」


 僕よりも、大輝の方が疲れているのは確実だ。目の下に、薄く隈が見える。

 テストはまだ先だが、サッカーをやりながら勉強をするのは相当キツいものだと思う。大会も近いし、大輝はテストでは上位3位以内をずっとキープしている。誰よりも努力をして、苦労しているだろう。


「大輝こそ、ちゃんと寝てるの?目の下に隈出来てるよ??昨日も、遅くまで勉強してたよね??」


「あ、バレた。俺さ、サッカーの強豪大学目指してるから、勉強も落としたら入れないんだよね。」


 大輝は笑っていたけど、相当なプレッシャーなのだろう。周りの大輝への期待は、半端ないものだ。サッカーをよく知らない僕ですら、よく分かる。よく折れずにここまでやっていると思う。



 そんなことを話していたら、駅に着いた。

 僕らは改札を通り、空いてるベンチを探す。どうやら、全部埋まっているみたいだ。

 人もちょうど帰省ラッシュなのか、随分混みあってきた。


「まもなく、1番線に列車がまいります。黄色い線までお下がりください」


 アナウンスがホームに響き渡る。人の喋り声がうるさかったが、僕の耳までちゃんと届いた。


 電車が近づいてくる。僕らはこれに乗ろうと、1番端の列に並ぶ。


「きゃーーー!!!」


 ホームに女の人の声が響く。全員の目線がそちらに向く。僕も周りの視線の先をたどる。


「美沙希ぃぃーー!!!!」


 あの声の主は、中崎だった。中崎の見る方向に、僕も目線を運ぶ。


「え......。高井......?」


 横で同じ光景を見ていた、大輝の声が聞こえた。


 僕は、自分が何を見ているのか分からなかった。


 電車がどんどん近づいてくる。鼓膜がはち切れるような、金属同士が擦れ合う音が大音量で響いた。



 そして、彼女の体は大きく宙に舞った。


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