062 番外編02 お風呂で泡遊び

お風呂編です




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 リア婆ちゃんの息子たちは、なんだかんだ言いつつ数日お泊まりしていくことに。

 その間、オレとプルンはいっぱい遊ぼうって約束した。

 プルンは同じ年頃の子と遊んだことがないから、すごく喜んでいたよ。オレはお兄ちゃんだからね、ちゃーんと先輩として遊んであげたんだ。

 まずはお風呂!


「ムイちゃー、あわわ、すごいでちゅ」

「で、しょー! もっこもこになるの、たのしいよねっ!」

「ムイちゃん、あまり悪い遊びは教えちゃダメだよ」

「ルシ、ムイちゃんはわるいあそび、おしえてないの」


 楽しい遊びしか教えてないよ。全くもう。風評被害もいいところです。

 ルシはオレたちが溺れないか見張ってて、基本的には好きにさせてくれてる。お風呂の深いところに入らないかどうかもチェックされてるけど、オレはそういう怖い真似はしないのだ。

 安全第一!

 冒険者としての心得として、胸に刻んでる。これはフランの教え。

 オレが見習い冒険者になったので「危ないことは禁止だ、これは大人も同じだからな」と約束させられたのだった。


 前世、高校生ぐらいの年齢だったオレは当然そんなこと分かってる。

 でもね、先輩のちょっとした教えに全力で頷くのが後輩の務めってもの。オレは「はい!」と元気よく答えてあげたんだよ。後輩も大変なのだ。


「ムイちゃんムイちゃん、泡が大きくなりすぎてプルンが見えなくなっているよ。大丈夫かい?」

「はっ!? まずいの、プルンー! どこー!」

「ここでちゅぅ」

「まって、まってね。はっくつするから」


 あわあわ作りすぎて水面に浮かぶのはもちろん、プルンまで隠れちゃった!

 オレは急いで泡を避けてプルンを助け出した。


「ふう。ぶじ、きゅうしゅつー!」

「出てない汗を拭く真似も板に付いているねぇ」

「あせりをひょうげんしたの。プルン、あわあわあらいながそうね」

「……ムイちゃー、あのぅ」


 プルンがもじもじするので、オレはピーンときた。


「おしっこ? おといれ、すぐだからがまんしてね」

「ううん」

「ちがうの?」


 あれ?

 オレが首を傾げると、プルンはお風呂からよじ登るようにして出ると洗い場で仁王立ちになった。


「ムイちゃーの、しっぽ、あわあわしたいでちゅ」

「おおー」


 分かる、分かるよ!

 だってオレの尻尾は魅惑の塊だもの。ふっさりもふもふだもんね! それに泡を付けて撫でると上質なブラシみたい。

 前世で姉ちゃんが言ってた。化粧ブラシは最高級のものを使わなきゃいけない、お肌をいたわる最高のものを選ぶべし、ってさ。

 小熊猫レッサーパンダ種の毛が上質かどうかは分からないけど、オレのは最高級品。だって毎日丁寧にお手入れしてるもんね! ……ルシが。


「じゃー、いっしょにあわだてよー!」

「でちゅ!」

「あわあわ~」

「やわわ~」


 あわあわって言いづらいよね。さっきも実は「ぁわぁわ」みたいになってた!

 オレがくふふって笑ったらプルンが気付いて「なあに」って顔に。


「んーん。だいじょぶ。いっぱいあわだてよーね」

「あい!」

「あわのうえに、あわのせー」

「のちぇー」

「くすぐりのじゅちゅー」

「じゅちゅー」


 術が言えなくて噛んだけど、プルンも言えないからセーフ。ルシは笑ってるけど無言。さすがデキる男は違うのだ。


「しっかりめの、あわ、たんじょー!」

「たんじょー! ムイちゃー、ちゅごいでちゅ」

「んふっ。でしょ。でしょー!?」


 こんもりの泡に大満足。尻尾を手に持って泡を載せ、プルンのほっぺを撫でてみると――。


「きゃー!!」


 すんごく喜んでくれる。キャッキャと両手伸ばして楽しそう。


「では、プルンもどうぞー」


 洗面器にたっぷり作った泡の前で尻尾をふりふりすると、プルンの目の色が変わった。

 おそるおそる泡だらけの尻尾を掴むと、それに泡を載せていく。オレは体の向きの関係上、どうしても背中をプルンに向けておく必要があるんだけど、たまーに振り返って見てみた。


「んちょ、んちょ」


 一心不乱に泡を載せて、それを今度は筆のように動かしている。

 こういう時は普通の赤ちゃんみたい。

 プルンはちょっと賢い系の子なので、言動とか赤ちゃんぽくないんだよね。うむ。まるでオレみたい!

 でも前世の記憶があるようにも見えないから、本物の天才?


「たのしー?」

「たのち!」

「プルンがたのしーと、ムイちゃんうれしい」

「……ムイちゃー!」


 尻尾を放り出してぎゅぎゅっと抱き着きにくる。なんか感動したっぽい。こういうとこ、素直で可愛い赤ちゃんなのだ。

 ふふふ。

 オレはお兄ちゃんだからね。プルンをいいこいいこしてあげた。


「さて、仲良くなったのはとてもいいことだけど、そろそろ湯冷めするからね」

「あっ、ルシ」


 問答無用で抱き上げられ、お湯を掛けられる。泡は無残にも消えていった。あああー。

 プルンも残念そうだったけど、素直にルシに抱っこされたまま。赤ちゃんなんだから泣いてもいいんだよ?

 オレはちょっと泣きそう。……泣かないけどね!



 その後、お風呂にまた浸かってから出た。もちろん風呂上がりにはフルーツ牛乳を飲む。


「ムイちゃー、たのちーね!」

「うん!」

「やわわー、ちゅぎもちゅるの!」

「しよーね!」


 お風呂遊びが気に入ったみたい。

 よし、プルンには階段遊びも教えてあげなきゃ。

 大人たちはまだまだ飲んだくれたりマザコンしたりするだろうしね!

 その間に、オレはプルンにたくさんの楽しい遊びを教えてあげるんだ。もちろん、コナスやハスちゃんを含めた冒険もするよ。

 あ、でも。オレが脳内計画立てて一人くふくふ笑ってたら、ルシに「嫌な予感がする」って言われたのは納得できないのだった。






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来週また投稿予定です!

(今、二話分書き溜めてますので)



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