番外編
061 番外編01 野菜
ホラー祭りに参加してみたんですけど、ホラーかどうかは不明……
いつものムイちゃんです
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オレは
本当は「ムイムイ」って名前を付けられたんだけど、由来が虫から来てるので必死になって自分は「ムイちゃん」だと連呼してたら定着したんだ。
そのせいで、いまだにオレは自分のことを「ムイちゃん」と呼んでいる。
でもいいんだ。だってオレはまだ三歳! 可愛さ真っ只中だもん。許されるよね!
そんなオレの名前を一番呼んでくれるのが育て親のルシ。
今日もお台所で作業中です。そのルシが、オレの頭をポンと叩いた。
「ムイちゃん。ほら、お手伝いするんだよね。しっかり手元を見て」
「はーい」
「ぴゃ!」
お返事はオレだけじゃなく、コナスも一緒に。
コナスはナスの妖精なんだよ。このあたりってね、魔力がすごいせいか底上げすごいらしいんだ。それでコナスも生まれたの。
最初はナスが動くし喋るからびっくりしちゃったけど、オレに懐いてて可愛いんだ。
今では大事な相棒。
一緒にお手伝いもします!
「コナスはちいさいやさいをきってね。オクラを……。てがとどかないんじゃない?」
「ぴゃ!」
「あ、そう。だいじょーぶなの。ふうん」
ほそーい針みたいな包丁でまな板の上に立ってオクラを切ってるコナス。なかなかシュールです。
気を付けてね、まな板の上にナスなんて、フラグもいいところだよ。
実はオレ、コナス誕生のシーンを見て以来、ナスを切るどころか畑から採ってくることもできなくなった。
だっていつ動きだすか分からないもん。いきなり動いて喋るんだよ? 野菜が妖精に進化しちゃったんだよ?
こんな怖いことってないよね。
幸い、それからは何もない。
だから、オレ、ちょっと油断してたんだよね。
「つぎはキュウリ-」
「あ、そっちのキュウリはまだトゲが残っているね。ムイちゃんが採取したものか」
貸してごらん、とルシが手を出す。でもオレはキュウリのトゲを取る方法知ってるんだ。
包丁の背でこそげ落とすんだよ! どうどう!?
「あああ、手付きが危なかっしい……」
ルシはあわあわしてるけど、そっちの方が危なかっしいよ。慌てないで!
オレはホラ、ちゃんと、ね?
そう思って手元を見ると、キュウリが動いた。
動いたんだ。
でもね、手に持っていた包丁は今正に振り下ろされるところで。
子供用の包丁っていっても案外重くて。
「あ、あっ、あー!!!!」
「どうしたんだい、ムイちゃん!?」
「ぴゃーっ?」
グサッ。
「せっ、せつだん、しちゃった……」
妖精殺し事件発生。
オレはフラッときて、その場に倒れたのだった。
目が覚めたらベッドの上で、ルシが心配そうに見ていた。
オレが急いで起き上がろうとすると支えてくれる。
「ムイちゃん、よっ、ようせいころしちゃったぁ……!」
「ん? 何を殺したんだい? 虫かな」
「え?」
「ムイちゃん、熱中症になったみたいだね。畑で騒ぎすぎたのかな。無事で良かったけど、今度からちゃんと水分を摂ろうね」
「う、うん」
それからルシは、落ち着いたら簡単なご飯を食べようねって言って、オレを抱っこして食堂に運んでくれた。
あれは夢だったのかなあ?
変なの。
でも夢だったなら良かった。だってオレ、もうちょっとで妖精殺しの犯人になるところだったよ。
そう言えば、コナスはどこだろ。
「ルシ、コナスは?」
「コナス? なんだい、それは」
「えっ」
ルシはニコニコ笑って、オレを子供用の椅子に座らせた。
そして、テーブルの上に野菜サラダやスープの入ったお皿を載せて――。
野菜サラダには不揃いに切られたキュウリが飾られていた。
見覚えのある切り口にオレが無言で見つめていると。
「きゅぅぅぅ……ぎ゛う゛う゛……」
え? キュウリが喋った?
その時、スープのお皿からパチャッと音が鳴った。そうっと視線を向けると、そこには大きめの紫色の物体が浮かんで……。
「ぴゃぁぁ~」
コナス!? 待って、小さい手が、アイルビーバックになってる!!
じゃなくて!!
「きゃーっ!!!!」
ハッとして目が覚めた。
今度はルシはいなかった。でもでも絶対これダメなやつ!
オレはそろっとベッドを降りて、コナスのベッドを覗いた。サイドテーブルの上に籠が置いてあるんだ。
「ぴゃぅぅ」
「あ、ねごと。かわいい」
良かった。生きてた。スープになってなかったみたい。
よし、じゃあ、次はお台所!
オレはそろそろっと暗い中を進んだ。
お台所はほんのり明かりが付いていた。ルシかな? 何してるんだろう。
ひょいって覗いてみた。
「ぎゅぅー!」
「ぴゃお!」
「ごりごりっ」
「んぞぞ」
……野菜たちがフォークを片手に踊ってる。あ、違う。抗議パレードみたい?
ふ、復讐されるんだ。なんで? 野菜いっぱい食べたから? それとも妖精のキュウリを切り刻んだから!?
「きゃー!!!!」
ハッと気付いてムクリと起きた。するとそこには――。
「あ、起きたんだね、ムイちゃん。熱中症になったみたいだよ。畑で騒ぎすぎたのかな」
これって夢? それともループ?
それはそれでどうしたらいいか分かんないから嫌だけど、それよりオレは言いたいことがある!
「ムイちゃん、やさいがようせいになるしくみにはだんことして、はんたーい!!」
※皆さんも熱中症には気を付けましょう!
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