059 かくれんぼ



 プルンを起こして、ハスちゃんを落ち着かせ、コナスはオレのポケットにイン!

 不安そうなルシに「だいじょーぶ!」と安心させて、オレたちは全員でかくれんぼを始めた。

 全員だよ。もちろん、リア婆ちゃんも一緒。

 意外にもルソーがやる気になってるのは面白かった。


 幼児組にはハンデをもらって余分に数えてもらう。

 あと魔法は禁止。


「じゃー、はじめー!」


 オレの宣言で、大かくれんぼ大会が始まった。



 実はオレには秘策があるのだ。オレは何事にも真剣になる男。何の策もないまま大人を相手にかくれんぼなど提案はしないのだ。

 プルンには可哀想だけど、今はライバルなので!


 さて、オレの秘策その一を呼ぼう。


「ハスちゃーん」

「わぉん」

「うむ。いいかね? ハスちゃんはかくらんがかりだよ。みなさんのにおいをかいで、おいたてるように」

「わぉん!!」

「コナスはスパイ係だよ、みんなの様子を見ていてね!」

「ぴゃ!」


 尻尾が飛んでいきそうなほど激しく振るハスちゃん。戻ってきてすぐはオレから「もう離れないぞ」って感じだったのに、今はいつも通り。

 楽しそうにぶんぶん尻尾振ってる。


「よし、れっつごー!」

「わぉぉぉん!!」


 コナスを頭に乗せたハスちゃんが走っていくのを確認すると、今度は空を見上げた。


「カザトリせんぱーい!」

「ここだ」

「やったー!」

「こらこら、声を控えないとダメだろう?」

「そうだった」


 オレは手で口を押さえ、急いで建物の影に隠れた。

 うむ。

 でもまだ大丈夫。幼児が逃げるため時間はたっぷり取ってもらってるのだ。最初の鬼はフラン。オレが指定した。何故か。フランが一番空気が読めるからだ。

 リア婆ちゃんは優しいけど、手心を加えるタイプじゃない。ルシは生真面目なので不正とかしそうにないでしょ。

 そういう感じで仕分けていくと、フランが一番だったのだ。ふふふ。

 オレってば頭脳派じゃない?


「ムイちゃんよ、では掴むぞ?」

「うん!」


 やっちゃってください。



 オレは空を飛んだ。本当は屋根の上に運んでもらうつもりだったけど、あんまり気持ちいいから!


「わーい!」

「ははは。最初呼ばれた時は一体なんだと思ったが。まさか、遊びのためとは」

「ムイちゃんのおしごとはあそびですー」

「そうだったね。まだまだ遊び盛りの幼子だった」


 カザトリ先輩は、もし何かあったら呼んでいいと、オレに笛をくれたんだ。魔法の笛だって。リア婆ちゃんなら魔法でちょちょいのちょいって呼べるけど、それ以外の人には難しいからね。

 仲良しの人に配ってるんだって。仲良しっていうか、連絡専門の使い魔たち?


 それを早速、使ったのだ。

 みんなが遅い朝ご飯を食べてる間にこそこそとね。準備万端、オレ偉い。


「ねえねえ、カザトリせんぱいもたのしー?」

「ああ、楽しいぞ」

「ふふー」

「ムイちゃんといるとワクワクとした気持ちになる。何故だろう」

「なんでだろーねー」


 上空の高いところをシューって飛んでいると、下の方で誰かの声が聞こえた。


「あんなところにいたぞ!」

「いないと思ったら!」


 みんなが集まって見上げてる。

 おーい! って手を振ったら、カザトリ先輩が笑った。


「あまり激しく動くと落としてしまうぞ」

「ええー!? ムイちゃん、しずかにしてます」

「そうしなさい」


 その後、下から「危ないから降りておいでー」って声が聞こえたのもあって、カザトリ先輩が徐々に降下。

 お空の旅はあっという間に終わってしまった。残念。


 それで地面にシュタッと降り立ったら、みんなに怒られちゃった。


「どこにもいないから探し回ったんだぞ!」

「魔法を使っても見当たらない」

「まほーはきんしだったのに」

「ムイちゃんが消えたからだよ」

「かくれんぼをしようと提案したのはムイちゃんだったのに」

「プルンが泣いていたぞ」

「犬が血相変えて探していたな」

「ハスちゃんってよんであげて」


 みんな入り乱れての会話で何が何やら。

 その間、リア婆ちゃんはルシが用意した椅子に座って楽しそうに笑ってた。

 こういう時でも魔王様スタイル。さすがリア婆ちゃんなのだ。

 でもなんであんなに偉そうに見えるのかな。

 椅子? 椅子かな? 肘置きあるから?


 リア婆ちゃんを観察してたら、プルンたちがやって来た。騒ぎに気付いて家の中から出てきたみたい。

 プルンは家の中を探してたんだね。


「ムイちゃー!」

「プルンー!」

「わぉぉん!!」

「ぴぇゃー」


 最後なんか変な叫び声。目を凝らして見ると、ハスちゃんの頭の上にコナスがいた。騎乗スタイルが危険。両手でしっかり頭の毛を掴んでるけど、風速何m? 飛ばされちゃう!

 それにそのままだと、またオレにぶつかっちゃう。


「ハスちゃん、ストップ、とまってー」

「わぉんっ」


 直前で急ブレーキからの、ドーン!

 透明の壁にぶつかったのはハスちゃんだけで、コナスは反動で飛び上がってピューンと……。

 なったところをカザトリ先輩がぱくっと咥えて助けてくれた。

 よ、良かった。


 たぶん、無事。


「ぴゃ……」

「ごくろうさまです」

「ぴぇ」


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