052 危険な台詞と魔王様が動き出す
リア婆ちゃんによると、そもそも偵察班の使い魔から垂れ込みがあったみたい。
使い魔たち、リア婆ちゃん関係の情報は常に集めているとかで、言われもしないのに息子たちについても定期的に調べていたんだって。
それ、ストーカーって言わない?
こわっ。
もちろん、オレのことも入れ替わり立ち替わり見てたっぽい。
リア婆ちゃんが張ってる結界の外からジーッと見ている使い魔たちの姿を想像すると、なんか笑うしかないよね。
「あそびにきたらいーのに」
「それでは負けた気がするのだ」
「??? ムイちゃん、わかんない」
「そうだな。とにかく、そうやって遠くから見ていたのだ」
「ふーん」
で、オレのお昼寝の時とか、畑でお仕事してる時にやって来てリア婆ちゃんにいろいろ報告してたんだって。
リア婆ちゃんは情報を知っても、ノーラ先輩が自分から何も言わない限りは手助けしないつもりだったみたい。
というのも、ノーラ先輩、自分でやらないと気が済まない性格だから。
「わたしの手で始末したかったのです」
「そうかい」
「しまつ……。こわいね?」
「怖い意味の始末ではないのよ。わたし自身できちんと片付けてしまいたかったの」
「そっかー。あのね、でもね、ムイちゃんはそうだんしたほうがいいとおもう」
「そうなの?」
「ムイちゃんも、かってにかんがえてめいわくかけちゃったの。だけどリア婆ちゃんは、ゆるしてくれたんだよ。ちゃんとすきって。こどもだよって。せんぱいたちもリア婆ちゃんのこどもだからね? こどもはおやにたよってもいいの。んと、ぜんぶはダメ。そうだんごととか? だったらいいんだよ。ね、リア婆ちゃん!」
「ああ。そうさ。あんたらは優秀すぎて、あたしの手なんざ要らないのかもしれない。でもね、あたしの息子が相手じゃ、やりようがなかったろ? いつもならもっとスッパリ始末していたはずだ。そうじゃないかい?」
だから、始末って! 言い方言い方!
「リア様……。確かに、クシアーナ様を強引に切ることはできませんでした」
切るって、ナニソレ。冗談でも怖いよぉ。
「多少なら問題ないさ。あたしらの血は強いからね。みじん切りだと、さすがに難しいかもしれないが」
ていうか今すごく怖いこと言いませんでした? みじん切りって、人に対して使っていい言葉? オレもう分かんない。
「いえ。そうしたやり方では無理だったでしょう。今なら分かります。あの方に対して、わたしがすべきだったのは……」
チラッとオレを見るノーラ先輩。え、何ですか。
ノーラ先輩は艶っぽく笑った。
「正直に気持ちを伝えることでした。ええ。はっきり、きっぱりと完膚なきまでに」
「なんなら、今、言ってやるかい?」
「よろしいのですか?」
「構わないさ。とはいえ、ムイは病み上がりだ。ここじゃうるさいだろう」
「ムイちゃん、だいじょぶよ?」
「おや。目がキラキラしてる。さては楽しんでるね?」
「えへー」
では場所を少し変えよう。そう言ってリア婆ちゃんはオレを抱き上げて部屋を出た。
カザトリ先輩もノーラ先輩も背筋ピーンでついてくる。格好良い!
そっか、ノイエ君はこういうのが好きなんだね。
オレは可愛い枠だけど、将来は格好良くなる予定。だったら、こういうのもちゃんと学ばないと。ピーン!
「どうした、ムイ。石になる真似かい?」
「……そうじゃないの」
おかしい。
これはちょっとずつ頑張るしかない。オレは「技を盗んで覚える」という鍛冶屋さんの弟子気分になることにした。
それはそうと、コナスが見当たらない。どこにいるのかと思えばプルンと一緒だった。正確には息子たちがいる部屋にまとめて詰め込まれてたんだけど。
「コナスー!」
「ぴゃー!」
ひしっと抱き合い、再会を喜んだ。あとでハスちゃんにもしないと拗ねられそうだけど、見られてないからバレないんだった。
コナスはずっとプルンが保護してくれてたみたい。
「ありがとー」
「でちゅ!」
「びっくりした? ごめんね」
「だいちょぶでちゅ」
「ほんと?」
「……ちょとだけおどりょいたでちゅ。ムイちゃー、ごろーんってとんでっちゃったでちゅ」
「うちのハスちゃんがごめいわくかけて」
「相変わらず幼児らしくないこと言ってんな」
「あ、フラン、ししょー」
「お前やっぱり師匠って思ってないだろ?」
「おもってないことないこともない、ない? あれ?」
「分かった分かった。で、頭は大丈夫か?」
その言い方はなんか嫌なんですけど、もう大丈夫。オレはしっかり頷いた。
「そうか。いや、ポーンと飛んでいったからな。あれはすごかった。タックが血相変えてたぞ」
「あ、タックせんぱいは?」
「あいつには依頼完了の報告にギルドへ行ってもらった。あとはもう俺たち兄弟の問題だしな。ムイちゃんのことを心配してたが、うちには優秀な魔法使いがいるから大丈夫だって言い聞かせておいたよ。また今度、顔を見せてやってくれ。先輩『冒険者』にな」
「うん!」
なので、今は身内しかいない状態。
つまり? そうです。これより魔王が召喚を行うのである!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます