053 息子を召喚
魔王様が息子を召喚する儀式をワクワクして待ってたんだけど、特に物々しい何かはなかった。
しょんぼり。
とっても残念。
普通、円形の召喚式みたいなのが出ると思うよね? そんなのなかった。
リア婆ちゃんが指先をひょいっと振っただけでポンと目の前に現れただけ。ポンだよ。つまんないの……。
「何故そんな顔なんだ」
「リスト兄ちゃん、だって、すごーいキラキラしたのがあるとおもったんだもん。しゃらーんって」
「でちゅ」
「プルンもおもったよね-」
「でちゅー」
「ぴゃー」
さんにんで「ねー」ってやってると、突然呼び出された四番目の息子が「な、なんだ!」と騒ぎ出した。
そだよね、ビックリだよね。勝手に突然呼び出されるんだもん。転移って怖いー。
もっと怖いのがリア婆ちゃんです。
なんか、魔王様が更に魔王様。
プルンがビクッとしたので、オレとコナスでくっついた。
「おむつ、だいじょぶ? まおうさまのときのリア婆ちゃん、こわいもんね。でちゃってもふつーだからね」
「でちゅ?」
「うん。ムイちゃんもおむつにはおせわになりました」
「でちゅか。プルン、おむちゅ、もうちたくないでちゅ」
「がまんでちゅよ。あ、うつっちゃった。んと、もうちょっとのがまんだからね?」
「でちゅ」
オレたちがくっついて話していると、ラウがぷるぷる震えてる。何か聞こえるので耳を澄ませていると――。
「おむつ、おむつか。筋肉におむつは合わないな……。やはり、もちもちとした肌だからこそ似合うのか。しかし、筋肉とは正反対なのに何故こうも気になるんだ」
危険!
とっても危険!
なんだか分からないけど、超危険です!!
とりあえずオレはプルンを連れてラウからできるだけ離れた。今のところ一番安全なのは使い魔先輩のところだけど、これから修羅場になるので、次に安全な場所へ!
安全な場所!
どこ!?
リスト兄ちゃんは真っ当ぽいんだけど、真面目すぎるんだよね。問題を解決しようと真っ只中に突入するタイプ。
フランは冒険者の師匠としてはいいんだけど、大雑把だし。問題発生源に何の策もなく入り込みそう。
実力だけならリア婆ちゃんが一番。だけど、今から修羅場を始めるわけで。
あ、ノイエ君は問題外。戦力外通告です。
……タック先輩ー!!
一番無関係のタック先輩が一番頼りになってたなんて。
でもいないものは仕方ない。オレは扉の前で微動だにしないルソーのところへ、そそそと近寄った。
助けての合図はちゃんと伝わったみたい。メイドさんを二人入れてくれて、オレとプルンを各自抱っこしてくれた。ありがとー。
「あの方の筋肉思想は変わらぬものと思っておりましたが、どうやらお気持ちに変化があったようですね。ムイちゃんの心配も分かります。不肖わたくしめが、必ずやお二人を守ると誓いましょう」
「あ、うん。ありがと……」
こっちはこっちで、暑い人だった。
そう言えば初めて会ったときに切腹しようとしたよね。
……オレ、今気付いたんだけどさ。
もしかして変な人の発生源ってリア婆ちゃんじゃない?
でもそこで考えるのを止めた。だって、背中がゾッとしたんだ。足下から冷えるみたいな。
うん。
オレたちは今、魔王様の力に触れようとしているところだったのだ。
呼び出された四番目の息子の名前はクシアーナ。超絶美人さんで、他の四人と比べるとそよっとしてる。ふにゃっ、というか。でも筋肉がないわけではなくて、細身なのにしっかりしてる。
なんで分かるかっていうと、スケスケの服を着てるから。
これ、公然わいせつなんとかになりません?
幸いなことにオレは男性の裸にうっとりする性癖はないので、変態さんだーとしか思わないけど。
ちょっとラウに近いよね。そんなに体を自慢したいのかしら。
そうそう、体を見せるところはラウっぽいけど、お顔は全然違った。他の四人とも似てない。美人顔なんだ。
他の四人は男性顔でイケメン。
ていうか、リア婆ちゃんがイケメンだから当然なんだろうけど、息子全員イケメンって!
……オレもイケメンになりたい人生だった。
ひそかに悲しんでいると、一際高い声が聞こえてきた。
「兄様たちは黙ってて! ママ、僕はノーラの美しい姿が好きなだけ。ちょっと型取りをさせてほしいだけなんだよ」
「そう言って、クシアーナ様はわたしの体を触ろうとしましたね」
「触らなければ型取りできないもの」
「ですが、ねっとりと触る必要はないのでは? それにわたしは最初からお断りしていたのです。先日も正式にお断りするため参ったというのに、しびれ薬を盛ろうとしましたね?」
「クシアーナ、あんた……」
「ち、違うの、ママ! 僕はちょっとだけ形をね? だって、触らないと分からないでしょ」
「あなたが使おうとした薬は鱗人族にとっては良くないものでした。ゆえに気付きましたが」
あ、リア婆ちゃんから発する何かが変。
温度下がってる。
パキパキいってるー!
「母上、少しお待ちを」
「リスト、止めるのかい?」
「いえ。ただ、ムイちゃんとプルンが怯えております」
いえ、正確には寒くて震えてるだけです。
嘘ごめんなさい。ちょっぴり怯えてました。だって、リア婆ちゃん激おこなんだもん!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます