041 悪巧み
お水をもらえたコナス、復活!
萎れていたヘタ、じゃなくて髪の毛? がシャキーンとなった。お肌もつやつやです。まるで食べ頃色。……もちろん食べないよ。だから一瞬こっち見て震えるの止めようね?
で、オレもジュースを飲んでまったりー。
「おいちーね」
「おう。絞りたてだからな。新鮮だ。まあ、ビールの方がもっと美味いんだが」
「ひるまっからのんじゃうの、ダメじゃない?」
「それがいいんじゃないか。背徳の味だな!」
「ダメなおとなー」
「るせー。仕事の後の一杯は許されるんだよ! これが楽しみで仕事頑張ってんだ」
一杯じゃなかった気がするけど、タック先輩の言葉は姉ちゃんを思い出させた。一番上の姉ちゃんも仕事終わりの一杯が美味しいって言ってたなあ。
オレもビールがどんな味なのか飲んでみたかった。
あっ、もしかして今じゃない? 今なら飲んでいいんじゃないかな!?
「タックせんぱい、いっぱいなら、のんでもいいよ?」
「あん? どうしたんだ急に」
「ないしょにしてあげる」
「……何を企んでるんだ」
企んでるって、ひどい言い方だなあ!
ちょっとした好奇心です。でももちろんオレは賢いので言いませんよ。ふふふ。
「おかいもの、したいの。タックせんぱいのために、かってくるね!」
「おい」
「おかねは、ガラドスのおさいふにはいってるの」
「そ、それ、まさか! 『破滅の三蛇ガラドス』じゃないのか!?」
「んふふ。わかる~?」
「分からいでか! ていうか、ガキに『破滅の三蛇ガラドス』の財布を持たせるなよ! お前んとこの保護者たちは一体何考えてんだ!」
「って、リア婆ちゃんにつたえたらいい?」
「すみません、ごめんなさい。止めてください」
「じゃあ、かってくるね! あとでかえしてね!」
「奢ってくれるんじゃないのかよ。いや、ガキに奢ってもらうつもりねえけど。待て待て、一杯でいいからな? ほら、銅貨だ」
きっちり一杯分の銅貨をくれたので、オレは急いで屋台に向かった。
お店はすでに把握済み。さっき屋台で何が売っているのかチラチラ見てたんだ。オレ、探偵にもなれそう。むふふ。
タック先輩からは見えそうで見えない位置取りを確認したオレは、ビールを一杯頼んだ。
お店の人は「お父さんのお使いかい? 偉いねえ」って褒めてくれた。その横で「何言ってんだいアンタ。こんな幼児に昼間っからビール買いにこさせるなんざ」と隣の店のおばちゃんが怒ってたけど。
お店のおじさん、あたふたして「仕事終わりなんだろうさ」って言い訳してた。そうだよねー。だからおじさんもお店を開けてるわけだし。
で、持って帰るフリして、少し遠回り。
小さいオレがコップをちゃんと持てないのは当たり前。演技派のオレは「おっとっと」とよろける風でコップに口を付け――。
「こら!」
「ふわっ」
「何かコソコソしてると思ったら、そういうことか!」
「な、なななな、なんのこと?」
「それで隠してるつもりか? 知らないフリが下手くそすぎるだろ。ほら、コップをこっちに寄越せ」
って、ビール取り上げられちゃった。残念。
「ガキがビールなんざ十年早い」
「じゅうねんごならのんでいいの?」
「……お前、今三歳だっけ。だったらダメだ。この国の飲酒年齢は十八歳からだ」
「ぶー」
「もし仮にお前が飲んじまうと、一緒にいた俺が罰せられるんだぞ」
「え、そうなの?」
「おう。しかも保護者が反省文を書かされる」
「はんせいぶん!!」
「だから親は子供にげんこつどころじゃない説教をする。そりゃあ痛い。延々と怒られるしな」
「タックせんぱい、やっちゃったんだね?」
「……」
黙っちゃった。そっか、タック先輩は子供の時からダメだったんだね。
オレはダメな大人にはならない予定なので、味見するのは止めることにした。
それに何より怖いのは――。
「リア婆ちゃんがはんせいぶんかくの、きょうふ」
「……そうだな」
「ムイちゃん、わるいこはやめます」
「そうだな」
でも、ちょっとだけ想像しちゃう。
「おい、顔が悪くなってるぞ」
「おかおはわるくないもん!」
速攻で返したけど、一応、お顔をもみもみ。うむ。大丈夫。元に戻ってる。オレは悪い大人にはならないのだ。良い子でいきます。
それに、反省文はリア婆ちゃんじゃなくてルシが書くんじゃないかな。冷静に考えると、そう。
ルシなら笑って書いてくれるはず! ぐわっしゃっしゃ、って!
「お前また顔が」
「ムイちゃん、ムイちゃんなの!」
「……ムイちゃん、表情を可愛いのに戻そうな?」
「はーい!」
でもオレ、いっつも可愛いお顔してるよ!?
顔が悪いとか風評被害。言い方、気をつけてー!!
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