第22話 ウィンドウショッピングとお買い物
お姫様はウィンドウショッピングを楽しみにしてたみたいで、気になるお店を見付けるとさっさと入っていってしまう。その間、白モフちゃんとハスちゃんは護衛騎士の一人に預けられた。
ちなみにリードごと預けることになった。オレの腰ベルトにリードを繋いでいたんだけど、何度も転びそうになってハラハラしてたみたい。
とっても控え目に申し出られて、オレも素直に頷いた。
「かいぬしとして、じくじたるおもいだけど。ムイちゃん、まだまだみじゅくだから、おねがいします」
きちんと頭を下げた。護衛騎士さんも慌てて頭を下げる。下げてから、首を傾げていた。
「じくじ……忸怩!?」
それからオレを見て、目を丸くしていた。
天才三歳児だと思ったんだね。ふふー。
オレは前世の記憶を持つ男なのだ。チートだよ、チート。
……まあ、ハスちゃんに振り回されてるからそこまでチートじゃないんだけど。
オレはしょんぼりしつつ、お姫様と一緒にお店に入った。
女の子が好きそうな雑貨屋さんでは、いちいち「あれは何かしら」「これは?」とお姫様が聞いてくる。
髪飾りやペンダントだったらオレも分かるんだけど、見たことないものも多い。
結局お店の人に教えてもらった。
「角に飾る装身具なんですよ。最近流行ってるんです」
「まあ、角に……」
「敏感な場所ですから大事に守りたいものです。そのため、魔石を使って守護を込めるんですよ。角に飾ることで悪しきものから守ろうという意味があります。ただお値段も相応のものになりますね」
「魔石でしたら、そうでしょうね」
魔石は宝石みたいに綺麗なんだけど、そこに魔法を込められるかどうかの違いがあるらしい。この雑貨屋さんは庶民向けが多いから、鎖も銀製で魔石も小っちゃいのを一つだけしか付けてないんだって。それでも、他の売れ筋商品よりお値段が高いんだ。
「お嬢様でしたら、上地区の宝飾店でお買い求めされるとよろしいのではないでしょうか」
「あら、わたし、こちらの商品が気に入ってよ」
「まあ、そうですか」
お店の人は喜んだ。お姫様は更に、これとこれがいい、と商品を選んで購入する。
全部、角を飾るものばかりだ。
オレも気になって吟味してしまった。
お小遣いがあるから、リア婆ちゃんに買って帰ろうかな。
でもチープかもしれない。ゴージャスなリア婆ちゃんに、ちゃちな装身具。
うーん。
オレがうんうん唸っていると、お姫様が支払いを済ませて横に立った。にこにこと笑って、オレにアドバイスをくれる。
「ムイちゃん、気に入ったのなら頼みなさいな。もしかしてお小遣いが足りないのかしら? だったら――」
「ううん」
オレは首を横に振った。プレゼントのお金はもらっちゃいけないし、借金して買うものでもないんだ。
ただ、オレはリア婆ちゃんの喜ぶ姿が見たくて。
つまり、プレゼントした時にちょっとでも「ちゃちだね」なんて言われたり、そんな目で見られたりしたらと思うと……。
「ムイちゃんも、おとこです。わらわれたっていいの。これ、かいます!」
「まあ」
「あと、これも!」
「二つも購入するのね。本当に大丈夫?」
「だいじょうぶ!」
格好良い蛇革の財布の中身はすっからかんになっちゃうけど!
買い食いもできなくなるけど!
オレは満足だ。
お店の人は笑顔で商品を一つずつ丁寧に梱包してくれた。色違いで、一つは真っ赤な石。これはリア婆ちゃん用。
もう一つはピンク色。
オレはそれをお姫様に渡した。
「まあ! わたしに?」
「そうなの。きょうのデートのおれいなの」
「まあ、まあ!」
お姫様は感極まった様子でオレに抱き着いた。オレが「わっ、わっ」となっているのに、誰も助けてくれない。
チラッと見えたセバスちゃんは顔を背けて、肩が震えて、笑ってる?
侍女のメアリさんは怒ってるだろうなと思ったら、こっちもそっぽを向いて?
お店の人は微笑ましそうに笑ってるし、オレ、ちょっと恥ずかしくなってきた。
その後、ご機嫌になったお姫様に手を引かれ、オレたちは大通り沿いにあるカフェへ入った。
ここでちょっと困ったのが席である。オシャレなカフェって何故か椅子が高いんだよね。オレは最悪、セバスちゃんに抱き上げてもらうという手があるけど、お姫様はそうはいかない。
結局、低いソファがある個室の部屋でお茶をした。優雅にオープンテラスカフェ、やりたかったのにねー。
でもまあ、お姫様は大満足。前から来てみたかったんだって。お城で働く侍女さんたちが噂していたらしい。
美味しいデザートを堪能して、オレたちは店を出た。
その時、馬の嘶きが聞こえた。
そっちを見ると、広場に入ってきた辻馬車の馬が騒いでいるって気付いた。同時に突然スピードが上がった。
オレは外に繋いでいたハスちゃんに気を取られ、あわあわした。でもこのままじゃ、ハスちゃんもオレたちも全員がぶつかってしまう。
護衛騎士たちはお姫様を守ってるけど、全員吹っ飛ばされたらお終いだからね。
オレは勇気を振り絞って前に出た。
そして、うーんと唸る。
オレはあっという間にレッサーパンダ姿に戻った。
ちなみにお洋服はパラリと落ちたよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます