第14話 白モフの飼い主?
白モフの飼い主は翌日に見付かった。
というか、リスト兄ちゃんに「お仕事してくださーい」って言いに来た人が「あれ?」って気付いたんだそうだ。
それはそうと、リスト兄ちゃん、お仕事しないで何してるの。
やけにリア婆ちゃんの周囲をウロウロしていると思ったらサボってたのね。
本当に偉い宰相様なんだろうか。
ラウも部下さんが来て引きずって連れて帰ってた。
「ムイ、また来るからな!」
「こなくてもいいの!」
「そんなぁ~」
なんだか脳筋はオレの獣人姿が気に入ったみたい。おかしいな。オレが可愛いのはレッサーパンダの時なんだけど。
……嫌な予感がするので、オレはあの人には近付かないのだ。
リスト兄ちゃんも、そうしなさいと言った。
ま、それはどうでもいい。白モフの飼い主が見付かって良かった。
何か兄弟二人が「え」「まさか」とか言い合っていたけど。
オレはハスちゃんに躾をしている最中だったので、どうでもいいのだー。
「いい? ちゃんと、ムイちゃんのめいれいにしたがうんだよ」
「わぉん!」
「もうちょっとこえはちいさく!」
「わぉん!」
「おおきい、おおきいよ! しろもふちゃんをさんこうに!」
「ぉん」
「ほらー、これだよ」
という、やりとりを、メイドさんたちはキャーキャー騒いで見ていた。
白モフの賢さに驚いているのかな。うむ。
……まさかハスちゃんの、どこまでいってもダメな感じにキャーと言ってるわけではないよね?
ううう。
ペットがダメだと飼い主までダメに思われちゃう。
ハッ!
そうか、そうだったんだ。
「ルシ、ムイちゃん、つかいまのおべんきょうがんばるから!!」
「……どうしたんだい、急に」
「だって、ムイちゃんがダメダメだと、リア婆ちゃんがダメにおもわれちゃうの」
ルシはチロッと舌を出してから(これはとっても珍しい)、ふふふと笑った。
「大丈夫。ムイちゃんはダメじゃないからね」
「……そうかなあ。ムイちゃん、ハスちゃんをしつけるの、できてないよ」
「一朝一夕には無理だ。ムイちゃんだって三年かけて、獣人姿になった。でもそれはとても早いことだった。ただの魔物が獣人に進化するのは、本当に難しいことなんだよ」
慰めてもらって安堵したものの、オレはとあることに気付いた。
ハスちゃんはたぶん、犬のままだね。うん。無理だ。
そもそも、普通は進化しないものね。よっぽどのことだから珍しいんだった。
魔力もないらしいしね。
オレがハスちゃんを無言で撫でていると、お屋敷の玄関から騒ぎ声が聞こえてきた。
なんだろう。ハスちゃんは早くもそっちに意識が向いて尻尾ふりふり。
オレも気になるのでリア婆ちゃんを見た。
「見てきてごらん。そうだ、使い魔の仕事だ。誰が来たか、教えておくれ」
「……!!!! いってきます!!」
部屋を出て行こうとして、ハスちゃんはダメって押し返した。でもオレより大きな体なので覆い被さって、そのまま踏んづけて廊下を走っていってしまう。
「あ、だめ!」
白モフまで一緒になって、もう階段のところ。
オレはルシと顔を見合わせてから、急いで後を追った。
玄関ホールにはたくさんの人がいて、真ん中にドレスを来た小さい女の子が立っていた。頭には小さな角。ねじれてない。
髪の毛をくるんくるんにしてて、リスト兄ちゃんみたいに半分ぐらいを結っている。
可愛いなあ。
オレが手摺りの隙間から覗いていると、白モフが階段を駆け下りて行ってしまった。
一直線に走って、女の子にドーンと……。
「あ、ころんじゃった」
「わぉん!」
「ハスちゃんはいっちゃだめ」
これでハスちゃんまでドーンとぶつかったら、女の子が大変なことになっちゃうからね。
ちなみに、白モフは女の子にぶつかった後、ペロペロするのかと思ったらツーンとしてる。
え、さっきのはなんだったの?
感動の再会シーンじゃなかったのかな。
まさかのツンデレ!?
オレはドキドキしながら見てたんだけど、白モフがこっちへ戻ってきてしまった。
「ぉん」
「まって。いま、こっちにきたらムイちゃんがめいれいしたみたいじゃない」
「ぉん」
「かしこく、おすわりしないで!」
オレはサーッと青くなったんだけど、白モフは全く気にしていない。まるで褒めてって言ってるみたいに尻尾をフリフリ……ハスちゃんまで尻尾フリフリ……。
困っていたら、女の子の周囲の人がやって来た。
女の子はお付きの女性が助けてる。怪我はしてないようだけど、オレはドキドキだよ。
「もしや、君がリボリエンヌ様を見付けてくれた子供かな?」
デキる秘書みたいな細身の男の人が、屈んで話しかけてきた。幼児の目線に合わせて喋るとか、この人マジでデキる人だ!!
竜人族とは思えないようなスマートさ。
あ、だってね、竜人族って強そうな人が多いんだ。リア婆ちゃんほどじゃないんだけど、男の人も女の人も結構ムキッとしてる。
それなのに、筋肉なんてついてなさそうな「そよっ」とした感じだから、なんだかなんだか――
「ムイちゃん、ひしょさん、すきー!」
抱きついてしまった。
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