第6話 彼女との出会い
○オドバシアキバ・4階テレビ&デッキ売り場
4階に下りたところで、上がってきた客にぶつかりそうになった安藤、4階を走り回る。
カメラ、安藤と追う林原を上から見下ろす。テレビコーナーを曲がろうとした周子と走る安藤がぶつかる。
周子「キャッ!」
鳥飼周子(以下“周子”)のバッグが床に落ちる。
倒れ掛かる周子をとっさに腕を握って引き上げる安藤。周子、勢いづいて安藤にもたれかかる格好になる。
安藤「すっ、すみません」
安藤、周子の胴をぎごちなく支えてから、落としたバッグを拾って周子に渡す。安藤を見て、赤面する周子。彼女と目が合い、呆ける安藤。
周子「あ、ありがとう」
追ってきた林原、状況を理解して呆けた安藤の胸に社員票を付け直してから肩を叩き、離れる。
周子「あのう……」
安藤「あっ、はい。何でしょう?」
周子「地デジのテレビを買いたいのですが……相談に乗ってくださる?」
安藤「あっ、ハイ。喜んで」
会話の弾む安藤と周子(アドリブ)
カメラが引き、カメラ前に営業マンCと林原が入ってくる。
営業マンC「なんだよ、なんだよ? ココはオイラたちの縄張りだぜ?」
営業マンCの肩を持つ林原、小声でささやく。
林原「すみません。歩合は貴方持ちでかまいませんから、先輩に女性相手の営業をさせてください」
営業マンC「ふーん、童貞クンに彼女を持たせるキャンペーン中ってことか……。ココのゲームとエロゲコーナーの客は男ばかりだからなぁ……。あいわかった。そのかわり、歩合の件をよろしく頼むよ」
営業マンC、林原の肩をたたき、離れる。
総務省マスコットキャラ『地デジカ』の等身大立て看板ナメ、再び安藤と周子。楽しそうに談笑する。
周子「そうなの? CMでやっていたコレって録画予約できないの?」
安藤「そうです。このメーカーは、デッキのシリーズのうち、一番コストの安いタイプの商品をCMに出していますから誤解が多いのです。むしろ、このご予算であれば、コチラをオススメします」
周子「わかったわ、これにしましょう」
安藤「ありがとうございます」
周子「アフターサポートはあるのかしら?」
安藤「もちろんございます。この商品ですと三ヶ月分の保障と、ポイント差し引きで一年保障が……」
画面チェンジして、レジのアフターサポート関連書類に個人情報を書き込む周子と対面する安藤、その後ろに琴橋、伊藤、林原がいる。
周子「じゃあ、これで」
安藤「確認させていただきます」
サポート書類を安藤に渡す周子。安藤、記入された内容をチェックする。
安藤「はい、未記入部分はありません。では、明日の午前中にこの住所にお届けいたします」
周子「お願いしますわ」
立ち去る周子。安藤と後ろの三人組が頭を下げる。
安藤たち「ありがとうございましたー」
立ち去る周子の後姿カット。
レジの中で喜ぶ安藤たち。書類を覗き見る琴橋。
伊藤「やったな」
林原「彼女のお店の電話と携帯番号までゲットですね」
安藤「おまえら、ナニを言っているんだ。個人情報保護法を知らないのか? (書類を指して)コレの私用は犯罪だぞ」
伊藤「またまた真面目ぶっちゃってからに」
カメラ、レジ後ろの棚に移動した琴橋に焦点、奥にアドリブ会話をしている安藤、伊藤、林原という構図。
琴橋、おもむろに携帯を取り出して、
番号を打ち込んでから、電話する。
周子「ただいま、出かけております。発信音の後にメッセージをどうぞ」
鼻をつまんで安藤の声色を真似る琴橋。
琴橋「本日は商品のお買い上げ、ありがとう
ございます。担当の安藤でございます。現在、メーカー様から各顧客に対しての一斉商品アンケートの期間中でございまして、つきましては来週水曜日に鳥飼様のお店にお伺いし……」
安藤「わーーっ!」
琴橋の電話の内容を知った安藤、琴橋
から携帯電話をとりあげようとするが、琴橋は携帯をすばやく懐に仕舞う。
安藤「ナニ勝手にアポイントを取り付けているんだ!」
琴橋「イヤイヤ、オマエのためだって。来週の水曜日に設定したから、今夜からおまえは“ナンパーマン”になってヤッてやってやりまくって経験を積め」
伊藤「そうだぞ、いざ本命とベッドインするときに彼女をリードできなかったらどーすんだ? リハーサルを別の女でやっておかないと」
琴橋と伊藤「アナタのためだから」
安藤「はぁ?」
琴橋と伊藤に迫られてたじろぐ安藤。
琴橋と伊藤「アナタのためだから」
安藤「な、ナニを言っているんだ……」
役所の声で場内放送が入る。
役所「(怒ったように) 伊藤さん、安藤さん、至急、外線十二番をお願いします。至急です!」
伊藤、スピーカーのある天井を見て。
伊藤「しまった! レジヘルプの事をすっかり忘れていた! 安藤、行くぞ!」
安藤「早退したかったのに!」
安藤と伊藤、走り出す。
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