第4話 俺を捕まえたお前も童貞
○深夜営業の居酒屋・店内・午前一時
杉山「カンパーイ!」
カチンと合うジョッキのグラス。カメラが引くとふてくされた安藤と笑顔の杉山。
杉山「いやー。それにしても俺を捕まえたお前も童貞だったか。いやー。めでたいっ!」
安藤「ああ、そうかい。ボクも万引き常習犯に同情されるなんて、おしまいだ」
杉山「そう、ふてくされんなょ。それに俺はムショから出て、万引きからは足を洗ってんだ。今は双葉大学のとある教授の助手をやっていてな、先週まで筑波にいたんだ」
安藤「それでステルス迷彩か」
杉山「そうそう。なんでも教授……、俺の雇い主なんだが、俺の保釈金を積んでくれてな。“あなたみたいな男を探していた”ってんで、いろいろと彼女の仕事を手伝っていたんだ。さあ、食え食え、今夜は俺のオゴリだ!」
(しばらく雑談、アドリブで)
赤ら顔の杉山、シャウトする。
杉山「シャバでの仕事、サイコー!」
安藤「はぁ、どうだか。おおかた泥棒の手伝いでもしていたんだろ?」
安藤、前の客が置いていた新聞をひっ
つかんで、社会面を出し記事を差し出す。
カメラ、杉山の視点。新聞の記事に『謎の幽霊宝石強盗、営業中に大胆不敵、これで6件目』の文字と被害にあった店舗の写真が踊る。
顔が青ざめる杉山。
杉山「ヒック、なっ、何を証拠に」
安藤「杉山さん、助けてもらった礼は言う。だから、このことは、ボクは警察には言わないよ。言ったとしてもステルス迷彩のことを知らない警察は、ボクを頭の病院に入れるかもしれないしさ」
杉山「……」
杉山と安藤、交互に映る。
安藤「保釈金つんでも、雇う価値のある人材だからシャバに出られたんだろ。このままだとアンタ、雇い主に消されるぞ」
杉山「か、彼女は絶対にそんなこと……しない! か、帰る!」
杉山、テンガロンハットをかぶり伝票を取ってレジに向かう。会計をすまして店のエレベーターに入る。安藤も続けて入るがエレベーターの中には誰もいない。
安藤、鼻をクンクンさせて杉山の存在を感知する。
エレベーター一階へと降りていく。扉の方向を向いて、誰もいないエレベーターの中でつぶやく安藤。
安藤「杉山さん、ボクは万引き犯の貴方と今まで戦ってきた。これはライバルとしての忠告だ。今すぐ、そのステルス装備を捨てて足を洗ってくれ!」
○深夜営業の居酒屋・出口・午前一時
エレベーターが開き、安藤は大またで外に出る。そのまま振り返らず横断歩道を渡っていく。
杉山、出現して安藤の背中を見ながらつぶやく。
杉山「ライバルか……」
○最上階、安藤の部屋・午前二時
ベッドの上でもがき苦しむ安藤。
安藤「うぁー。一瞬でも『ボクってかっこいい』とか思ったけど、童貞であることに変わりがなかったんだーぁ」
布団に頭まで入り眠りに落ちる。
安藤「まぁ、どうせ、だぁーれも、覚えてないかー」
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