第3話 邪魔が入った、また会おう!

○オドバシアキバ通用門・午前0時

   通用門から外に出る赤い顔の安藤。頭をかきむしりながら、怒鳴りだす。

安藤「クソッ! クソッ! クソッ!」


○JR架線の下の道・午前0時

   走り出す安藤、酔いにまかせて怒鳴りながら走る。

安藤「童貞でナニが悪い!」

   広告トラックが併走してくる。安藤が振り返ると“童貞を卒業しよう!”と出会い系サイトの広告が一面にアップ。

   安藤たじろぐが併走は止まらない。

安藤「ついてくんなよぉおお!」

オセロ「あなたが止まればいいんですよぉー」

   安藤、声のある方向を向くと、鈴の音と共に白い宗教服を着た一団が闇の中から現れる。肩提げバッグからチラシを取り出したオセロが進み出る。

オセロ「おやぁ、誰かと思えばオドバシの店員さんじゃありませんか?」

安藤「そういう、お前は……」

   安藤の回想、フラッシュバック。


○安藤の回想(オドバシアキバ店内・午前十時)

   朝の事件光景。T名人に叱られて謝る客の集団、

T名人「(戻ってきた林原たちを指して)店員さんたちにも謝れ!」

客たち一斉に「(林原たちに向き直り)はい! ごめんなさい」

   オセロと目があう安藤。オセロは安藤の胸のラベルを凝視する。

フラッシュバック。

○JR架線の下の道・午前0時

安藤「そうか、おまえ、あのベレー帽の手下か?」

   笑いながら手を振るオセロ。

オセロ「いえいえ、私は彼らについて行っただけですよ。いかがですかぁ」

オセロがチラシを安藤に手渡そうとする。受け取らずにたじろぐ安藤。彼の背後に信者Aがまわりこむ。信者Aの持つ旗には白地に『Free Sex』赤文字、文字下には二重丸に一本線を引いたマーク。旗の下に安藤が立つ構図。

安藤「ならば、マエダ教だな?」

オセロ「そうですが、何か? それよりも朗報です。貴方に童貞を捨てるチャンスを与えにきました。おい」

オセロが後方を手招きするとミンクのコートを着た顔にキラキラ光るデコレーション化粧をした女(信者B)がコートの前を広げる。カメラ、安藤の後頭部ごしに信者Bのボディラインが映りこむ(彼女の大事な部分は安藤の頭で見えない)

安藤「い、色じかけで入信させるつもりか?」

   信者Bの前にオセロが出て、Bはコートを閉じる。

オセロ「いえいえ、これは、パーティへのお誘いです。コイツを使って童貞を捨てた後で入るか、入らないかを決めてもらってもかまわないのですよーーっ」

   オセロと対峙する安藤、憤慨して、

安藤「女性を“コイツ”呼ばわりするな! それにSexには愛情は不可欠だろ? そんなパーティには心がないだろ? 人にとって大事なモノを奪うのがお前らの教えなのかよ、ふざけるな!」

   笑い出すオセロ。

オセロ「ハハハ……。もっとも大切なものを全力で踏みにじる、 それがマエダ先生の教えてくれた真実の愛です!」

安藤「帰る! どいてくれ」

オセロ「そうはいきません! 貴方は再教育が必要のようだ。やれっ!」

ここからスローモーション。

安藤の後ろで電撃音がして、咄嗟に安藤は左によける。

信者Aの持ったスタンガンが空をきる。安藤、Aの腕を掴んでぶん投げる。スローモーション終わる。

地べたを転がるA。それを見たオセロはスタンガンを二本出して両手に持ち笑う。

オセロ「ふふふ、いいセンスだよ、安藤君。どうやら、私を本気にさせてしまったようだ」

安藤「おまえは?」

オセロ「私の名は“オセロ”。童貞を卒業する短い間に覚えてくれれば幸いです」

   オセロ、安藤に飛び掛るが、避けられて蹴りをくらう。オセロ、後ずさりしてスタンガンを構えなおす。

   真剣に両手を構え直す安藤。

安藤「“オドバシの店員たる者、中立であれ”というのが社長の教えだ。お前らの教義に下るわけにはいかない!」

   にらみ合う両名。

オセロ「……。成る程、一通りの修羅場は潜り抜けたようですね。ならば、おい」

スタンガンを両手に持った信者B、前に進み出る。コートが風に揺られて白い胸が見えそうになっている。安藤、後ずさる。笑うB。

マエダ教信者B「うふふ。痛いのは最初だけよ。後で天国に連れて行ってあげるぅ」

安藤「ひっ、卑怯だぞ!」

オセロ「甘いですね、安藤君。戦いに状況など選べやしないのです。さあ、パーティ会場に行きましょう」

   そこに突然、天井から大声がかかる。

? 「そこまでだ!」

天井から何かが降って信者Bを吹き飛ばしたかと思うと、オセロに何かが襲い掛かる。彼はジタバタとスタンガンを繰り出そうとするが、相手が見えず、腕を切られ、すばやく後ろに二回跳ねる。

オセロ「ステルス迷彩か! 邪魔が入った、また会おう。みんな退けぇ!」

マエダ教信者たち、あたふたと逃げていく。

ポツンと立つ安藤。鼻をクンクンさせる。

? 「おい、安藤」

安藤「うひゃあ」

   何もないところから、声がかかり、びくつく安藤。

? 「ああ、悪い、悪い、透明人間モードになっていたのだったな」

何かのスイッチ音と共にテンガロンハットの男が現れる。自分より身長の高い男の顔に見覚えがある安藤。

杉山「よう」

安藤「おまえは……、杉山!」

画面暗転。

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