第一話 「旅立ちの朝」

寝息を立てる少年に、窓から一筋の光が差し込む。

その光はほんのりと温かく、その温かさが朝になったと体全体に知らせてくれる。

そして少年、リアム・アーカイラは目を覚ました。






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朝起きると決まって洗面台に行き、歯を磨き顔を洗う。そして服を着て身だしなみを整える。それが俺の日課だ。


そして毎朝日課を終えたあたりで…


ーカッカッカッ…


扉の奥から木の軋む音と同時に人が走ってくる音が聞こえ、ガチャという音とともに扉が開く。


「リアム!!剣の練習するわよ!」


そう声高らかに喋る少女はローズ。孤児院で出会い爺さんとともに剣術を磨いてきた、いわば剣仲間だろう。

苗字がないのは物心つくまえから孤児院にいたからだ。

流石に名前がないのは可哀想だということでこの孤児院で子供達を育てているシスターがローズと名ずけた。

名ずける理由になったのがローズが薔薇のように凛としていて落ち着いていたからだそうだ。

シスターのおっしゃる通り、本当に凛としている。凛としすぎている。

なんだこの馬鹿力は。男の俺が引っ張り合いに負けるとは。情けないったらあらゃしない。


そんなこんなで毎朝ローズに引っ張られ、男としてのプライドをズタズタに引き裂かれた後に剣の練習が始まる。



「じゃあ、よろしくお願いします!!」


剣の戦いでは礼に始まり礼に終わる。当たり前のことだが礼儀を怠ってはいけない。

爺さんがめちゃくちゃ言ってた。


「よろしく…お願いします…」


キンッ!キンッ!と剣がぶつかり合い、お互いが睨み合う。

そこからは一瞬の攻防だった。攻め方を間違えれば反撃をくらい、受け方を間違えれば一方的に攻めを続けられてしまう。一進一退の攻防が二人の間で続く。


ー今日は負けられない…


そう思ったリアムに一瞬の隙ができ、それをローズは見逃さなかった。


その隙をローズが突き、リアムの剣が空中を舞う。勝利を確信したローズは首元への斬撃を放とうとするが 否、舞っているのはローズの剣だった。


「う、うそでしょ…」


そう言い虚空を見るローズの首元に鋭い刃が突きつけられた。

敗因は定かだ。力強さでスピードを出しているローズに対し、速さとローズには多少劣る力とずば抜けた技術力がリアムを勝利に導いた。

ローズにはまだ技術面が足りなかった。


「なにがいけなかったの!リアム、途中隙ができたわよね!なぜあの状況から私の剣を…それに最初はリアムの方が…」


弱かったと言いたいのだろう。

実際にはリアムの方が弱かった。だが弱いかったからこそリアムは知っていることがある。

力だけでは勝つことができない。技術力も必要になる。

アーカイラ家の剣術練習で身をもって知ったことだった。


「正直ローズが優勢だった。力のない俺だとあのまま続けば負けていた。だからあえて隙を作り、そこにお前を飛び込ませた。ただそれだけの事だ」


「.......そう…なのね…本当に…強くなったわね。私、リアムを追い抜くことができるかしら…」


「できるよ、俺は決して才能があるわけじゃない。むしろない人間だ。でも努力してここまできたから」


そう言ったリアムは一度姿勢をただし真面目な顔で話を始める。


「それはそうとローズに言わないといけないことがある。」


するとローズの頬が赤くなりはじめる。


「な、なによ。言わなきゃいけないことって…!!」


少し照れながら言うローズにリアムは言い放つ。


『俺、今日で孤児院「ここ」出るから』


ローズは呆然と立ち尽くしたまま、虚空を見始めた。

するとふたたびリアムは…


「俺、今日で孤児院を出るから」


「……」


「俺、今日で孤じぃ…」


「聞こえてるわよ!!何回繰り返すの!!馬鹿リアム!!」


そう言い放たれたと同時にリアムの足元から綺麗な足が見え…


ーヤバイ…


そう思った時には既に遅く、リアムの一物は悲鳴をあげていた。











リアムは本当の敗北を知った。



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