7-5
奥多摩の児童養護施設は閉鎖され、十六年前とはすっかり姿を変えていた。
保子が運転するガーデンSAKIの軽トラックのエンジン音だけが、辺りに響く。
「この辺でいいです」
そう言うと弥生は、勇太郎を連れて車を降りた。
「ここで待ってるから」
保子の言葉に笑顔で頷いた二人は、弥生の記憶だけを頼りに雑木林を進んでいった。
人の気配はないが、木がびっしり詰まっている訳ではない。弥生は勇太郎を連れ、しばらく歩き回った。
「あっちが施設だから……多分この辺だよ」
「本当ですか」
それから、四時間が経った。
弥生と勇太郎は何も食べず、ただ待っていた。
「やっぱり、来ないんじゃ……」
勇太郎が懸念を示したその時、声が聞こえた。
「しーちゃん?」
弥生は振り返った。
「ミオリン……」
「ミオリちゃん」
「勇太郎くんも……」
あまりにも、不遇をかこったのかもしれない。
そんな中でも、五十年美しく生き続けた女の子が、そこにはいたのだ。
弥生は気がつくと、その少女を抱き寄せていた。
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