第20話 不勉強×ロリ
春の競技大会も無事終わった頃であった。
そろそろ2年生になって初めての中間テストが迫ってきていた。
テスト前というのもあり、普段適当な時に行っている同好会?のようなものもこの時期は活動をしない。
「颯太ぁ……。」
後ろの方から幼い子供の声が聞こえた。しかし、声はいつになく弱弱しく、強めの関西弁すら聞こえないほどであった。
後ろを振り返るとそこには涙を目にためながら懇願する花梨の姿があった。
「お、お、お、落ち着け……な?何があったかゆっくり話してくれ。」
こんなところ他の人に見られたら俺外歩けねえよ。
ていうかお縄にかかって牢屋から外に出してもらえなそう。
「勉強教えてぇ……。」
成るほど、そういうことか。
この学校では赤点を取ると放課後に補修を受けさせるということもあり、普段の定期テストは部活動に参加している人間は必死になって赤点を回避しようとする。
「ん?でも花梨は部活何にも入ってなかったよな?」
「補修を喜んで受けたがる奴がいるんか?」
「全く持ってそのとおりです……。」
気づいたら立場が逆転してしまっていた。
別に俺は『良い順位を取って推薦をもらおう!』という意思もないので適当な成績さえ取れていればいい。
まぁ補習の手伝いさせられるよりはましか。
「で?どこでやるんだ?自宅かそこら辺のファミレスか。」
「えぇと……じゃあファミレスで。」
「お子様ランチを食べたいかr」
ドンッ!
脇腹を強烈な痛みが突き抜ける。
リバーブローが直撃した。
「ゴフッ!」
宙を舞った直後俺は地面に叩きつけられる。
体格を子供と侮るなかれ。
*
脇腹をさすりながら歩道を歩く。
あばら持っていかれたんじゃねえの?
今度からコイツのあだ名は幕の内一歩で決まりだな。
「なんか余計なこと考えた?「イエ、ナニモ」」
勘が鋭すぎる。
全く持って恐るべき子供達計画だ。
サイ〇リヤに到着をすると軽く軽食の類とドリンクバーを頼む。
マジで安いからサイ〇リヤ大好き、その代わりメニューに載っている間違え探しの難易度だけは許してないからな。なんであんなに難しいんだよ「印刷ミスなんじゃないのか?」ってやつまで正解だったりするからな。
「で?どこからわからないんだ?」
「まず分配法則から……。」
お前はどうやって編入試験を乗り越えたんだ。
数学の分配法則って中1レベルじゃねえか。
「はぁ……仕方ない、ゆっくり一つずつ教えていくから。」
こうして彼女の勉強は始まった。
数学のレベルを計ってみたところ、どうやら本当に中学1年生レベルだ。その代わりに社会科目が得意分野、特に地理と政治経済の成績はセンター試験であれば満点の可能性が十二分にある。
「花梨は卒業後、どうするんだ?」
「んー、花梨はそうなぁ……あんまり深く考えたことはないなぁ、今が楽しければそれでいいって感じやし、3年生になるまでは保留かな。颯太はどうなん?」
「俺もあんまり深く考えてはないけど、学者の道に進んでみるっていうのもありかなと思ってる。」
「そりゃまたどうして?」
「……わからん。」
俺は自分が学者になりたいということは分かっているのだ。現に小学校の卒業文集にもしっかりと将来の夢は学者と書いてある。
しかし、改めて考えてみると自分がどうしてその夢を目指していたのかが分からないのだ。
「あっははははは!なんやそれ!」
涙をぬぐいながら俺のことを指をさし、笑う花梨。
全く持ってなんやそれ、な状態なのだ。
届いたパフェを頬張りながら反論をする。
「うるへー」
あれ、これ反論になってないな。
自分でも昔の事にもっと触れてみる必要がる。
そして、彼女の事ももっと知る必要があるのだ。
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