第18話 記憶×鈍感×幼馴染
それにしても従弟かぁ……。
俺の家はいわゆる核家族だ。年に数回ほど実家のほうへ訪れに行くが一度も従弟にあったことはない。昔はお年玉をもらいに行っていたが最近は自宅でゆっくりする方が俺も好きなので両親だけが顔を出しに行く、なんてことも少なくない。
「と、考えている俺の記憶もあべこべだったりしてな。」
ふざけて口に出した言葉だが、正解なのでは?と思うほどしっくり来ている自分に嫌気がさすほどだ。
自分の記憶を信頼することもできず、ただ右往左往するだけ。いつになったら治るなんて目途も立たずに今まで生きてきた。なんなら母親の発言から察するに俺の記憶はもう戻らないのかもしれない。
「明日から過去を振り返るときは慎重にならなきゃな……。」
バレたくない、この一心だ。
いずれにしても、
そんな顔は、見たくないな。
*
「あれ?自分で起きてくるなんて珍しい。」
階段を降りると智里がいた。
いつもは誰かが俺の部屋に来て毎日のしかかったりして起こしていたのだが今日は珍しく俺は自分から起きた。
理由は別にこれといってはないはずなのだが、いかんせん意識してしまう。
「たまたま今日は目覚めが良かったからな。あんまりゲームもしてなかったからさ。」
「へぇ、アンタがねぇ……なんかおかしい。」
エスパーかコイツは。
ならばあくタイプやゴーストタイプで対抗するしかねえな。とは言っても俺の影の薄さはピカイチだったからな、実質存在がゴーストだ。
友達に「あれ?お前いつからいた?」なんて遊び始めてから3時間後に言われた時は軽く泣いた。
「別に何でもねえよ。おかしいと言えばいつものやつらはどうしたんだ?やけに今日は静かだけど。」
「みんなは競技大会の練習よ、もうあと3日だし朝練もし始めたらしいわよ。」
えぇ……あいつらに勝てる奴らなんていねえから心配するなって。競技大会終わってから俺に対してバレーをやろうと持ち掛けられるのが滅茶苦茶怖い。
実質バレー部6人でやってるようなもんだろ?
「智里は練習に行かないのか?」
「ウチは朝ゆっくりしたいし。それに朝弱いんだよねぇ、毎朝起きるのがつらくてさ。」
「そうだったのか……悪いな、朝から頼んじまって。明日からは無理には来なくても————。」
申し訳なさそうに彼女の顔を見ると落ちていたクッションを拾い上げながら顔を真っ赤にし、思い切り俺の顔面にクッションを投げつけた。
「察しろ馬鹿!」
えぇ……何を?
そのまま皿を流しに置くと学校へ向かっていってしまった。真っ赤の原因は怒りのようだ。とは言ってもいまいち彼女の怒りの理由は分からないままであった。
今考えてみれば「なるほど」、と理解できる内容であった。
智里は料理が好きなのか。
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