第12話 赤羽花梨の場合
「俺はまだ刑務所になど入りたくない!」
急いで花梨を抱っこし、そのまま全力疾走で逃げようとする。
よくよく考えてみれば逃げた方が犯罪者っぽいと思うのだが。
しかし、時すでに遅く、足がすでに動いていたため俺は全速力で逃げる。
「ちょ!自分で歩けるからおろしーや!」
「ソウタ、待ちなさい!」
そのまま俺たちはフードコートを飛び出し、ショッピングセンターへと逃げ込む。
エレベーターは……チッ今使用中か……。
仕方がないのでエスカレーターを駆け上がる。
「誰かその高校生を止めて!」
イリーナの叫び声に合わせるかの如くエスカレーターの頂上付近にいた人がこちらを振り返る。
一瞬であった、瞬きをした時
「え?」
足の裏がすぐ顔の目の前にあった。
位置エネルギー付きのドロップキックである。
仮面ライダーのほうが向いてるよ君……。
*
「有栖お前かよ……。」
運の悪いことに敵が現れた途端、敵対していた同士は協力をするのである。
「アンタスカートの中覗いてないでしょうね!」
今顔を赤らめてる状況じゃないだろ。俺の顔の方が真っ赤なんだぞ。
大体、スカート覗いている暇があったらあのドロップキックをよけている。
「で?その女の子は誰?ソウタ?」
笑顔だが明らかに目が笑っていない、嘘をつこうものなら海に沈められる。
とは言ってもなんて言おうものか、これが花梨と言って素直に信じる奴らではないからなぁ……。
ショッピングセンターのベンチの上に正座させられながら急いで打開策を考える。
「すみません膝が痛いのでベンチに座ってもよろしいでしょうか?」
「駄目よ」「駄目」
返答スピードが尋常ではない、これが噂に聞く「激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム(神)」か、なんだよ(神)って。口で『かっこかみ』っていうのか?ダサすぎだろ……。
「花梨はお兄ちゃんと歩いてただけやで?そこの兄ちゃんは無実や。」
「残念だけど彼に妹はいないのよ?あなたも嘘をついちゃメッ!なんだからね?」
思わず口から笑いが吹き出してしまう、いい年した高校生が同級生にメッ!は流石に恥ずかしい。
「何わろとんねん、どつくぞ。」
「誠に申し訳ありませんでした。」
一部のマニアにはご褒美なのだろうが俺にそんな趣味はないのでシンプルに怖い。
説教が続くこと10分ほど経った後、またしても聞き覚えのある声が遠くから聞こえた。
「———でね?颯太がさー。」
この声は……!本格的にやばい、絶対にヤバイ。こんなことがばれたら俺は無事家にたどり着くことすらままならないだろう。
幼馴染で怒らせると一番ヤベー奴の声だよ。どのくらいかというと「名前を言ってはいけないアノ人」ぐらいやばい。
「少しトイレに行かしていただきたいなーと思いましてですね?お二方何卒どうかお願いしたくてですね……。」
「イリーナ、携帯用トイレってどこに売ってるの?」
いやそれはやばいだろ。ここショッピングモールよ?確かにあっちから見れば女児誘拐犯のドクズ野郎かもしれないけど人権あるよ?トイレの選択権くらい用意してくれ。
「何やってんのアンタら?」
「You die」のように赤文字でホラーゲームのゲームオーバー画面が脳裏に浮かんだ。
\(^o^)/オワタ。しかし今この言葉は死語らしい、伝わらないの辛えなぁ。
「颯ちゃんに花梨ちゃん?それにみんな揃ってどうしたの?」
まさかの智里と柊が一緒に下校していたようだ。
*
「だったら最初からそう言ってくれればよかったのに、てっきりソウタがロリが好きな人かと思ったから。」
おいイリーナその言い方は悪意マシマシだぞ。女児って言え、なんだロリって。
「大体、言ったところでお前ら信じないじゃん。」
「だって兄妹って言ってたから。」
周りの人に違和感なくするには兄妹という設定が一番怪しまずに済むからであったが、知り合いともなれば話は変わってくる。まして俺に兄弟がいないことを知っている人間ともなれば、だ。
「じゃあ本当にあの花梨で間違いないってこと?」
「そうだ、関西弁を喋っているが正真正銘、赤羽花梨だ。」
「よろしゅうな!」
お前はどこかの艦艇擬人化ゲームのキャラクターかよ。
とは言っても彼女はどうやら方言を直す直すっても癖は抜けなそうなので触れないことにしておく。
しかし、今日はあまりにも疲れた、一歩間違えば少年院行きの状況で鬼ごっこ、仮面ライダーからのドロップキック、その上に説教。これ放課後の話よ?
「これから4人はどうするんだ?」
「考えてなかったよ、友達先帰らせちゃったし…。」
「私はアンタたちが遊びたいなら行ってもいいけど?」
「私達も買い物終わってるんで暇ですよ。」
「花梨はもともと颯太と行動してたしなぁ……。」
ほら、既に有栖ちゃん遊びたくてうずうずしてきちゃってるじゃない。まさに花梨と対極の位置にいる子供である。
有栖の方をちらっと見ると睨みつけ威嚇をしてくる、野犬かお前は。
「そうだな、まぁ迷惑かけたしアイスくらいならおごるぞ?」
再びアイスを買いに先ほどまでいたフードコートへ戻る一行であった。
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