第10話 ロリ×鈍感

「もはや何も驚くことはなくなったぞ」


「あ、起きた?」

「颯ちゃんは昔から朝が弱かったからね。」

「そう?こいつはは昔からグズだったと思うけど?」

「有栖、そんなこと言ってはいけませんよ?」


目をこすりながら降りてくるとキッチンにはいつもより人が増えていた。

俺を含め5人か、俺の家は随分と大家族だったんだなぁ、なんて言ってる場合じゃない。


「どうして君たちは出会ってから一日で人の家に集まるの?」


とは言っても、智里と柊が作ってくれたご飯超うまい、毎日朝起きるとご飯が作られてる幸せ、どっちか結婚してくれねえかな……。

いぶかしげに質問をすると柊がこちらに向き直りながら答えた。


「私は黒爺に聞いたからだよ。昨日聞きにいったら教えてもらえたの。」


エプロンをひらひらさせながらこちらを向く姿は可愛らしく、俺は思わず目をそらしそうになった。

うむ、JKの、エプロン姿、良くない、不健全。


「何鼻の下伸ばしてんのよ!」


有栖が素ねを思いきり蹴り上げる。鈍痛が体全身を突き抜け、俺は床をのたうち回る。


「ぬおおおおおぉぉぉ……シャレにならんぞ!」


思わず、RPGのラスボスがやられるときのセリフのようになる。

「ぐわああああぁぁぁ」とか良いよね、なんかあのチープな感じが好き。


「でも作ってくれるなら毎日家に来てくれた方が助かる!」

「私は良いけど、智里は良いの?」

「ウチは問題ないっていうかこれだけ人数増えたら毎日作るの大変だから助かるよ!」


お料理女子たちが会話に花を咲かせている中、テーブルではラフレシアが花を咲かせていた。


「アリスはお料理は出来るのかしら?」

「少なくともアンタよりはまともな料理作れる自信はあるわよ?」

「ではボルシチで勝負しましょう。」

「なんでよ!ここは日本なんだから和食でしょ!」


こいつらは自分の得意な土俵でしか戦えんのか。

有栖はもともとこういう性格だからわかるがイリーナが有栖と仲が悪いのは意外であった。昔から何かとよく話していたから仲が良いのかと勘違いしていたが喧嘩していただけか。


「うるさいからお前ら食器洗いな。」

「え」


俺はそのまま準備をして洗い物をする彼女たちに鍵を渡して学校へと智里、柊と共に向かった。学校へ行く途中誰かからの視線や違和感を感じたが俺の勘違いだろう。

とは言っても気になるものは気になる。何かがおかしいはずなのだがいまいちその原因がつかめない。


「うーん……なんだろうか……。」


左手を組んで右手で頬を支える姿はさながらあの古畑任三郎である。

俺はもしかしたら名探偵かもしれない。


「どしたの、そんな不細工な顔で悩んで。」


あ、これ俺が被害者だったのか。

今の言葉を東尋坊の前で言われてたら間違いなく俺は投身自殺してるぞ。

火曜サスペンス始まっちまうけどいいのか?お?


「なんでもねえよ、それよりも今日なんかあったっけか?課題とか出てないか心配だ。」

「課題は出てないよ、でも今日も転校生が来るらしいよ?毎日毎日新キャラが出てるからアンタのソシャゲだったらガチャで破産寸前だよ。」

「おい、なんでお前は俺のソシャゲ事情を知っているんだ。」


別にいいじゃねえか、初心者応援セットくらい買ったって。


「転校生ねぇ……また知り合いじゃねえだろうな……。」


今のところは2日連続で知り合いが転校してきた、この調子で行くと俺は幼馴染全員と同じクラスになっちまうよ。そんなことになったらガチャコンプリート大変だわ、今月もつかしら?

俺と智里が今日の転校生について話していると柊が恐る恐る手を上げながら答えた。


「それ……私だね。」


「「あ」」


違和感の正体であった。

本日初めてこの学校に来る人間と俺たちはなんで親しげに登校をしているのだろうか。



「そんなわけでみんな仲良くね。」

「よろしくお願いします。」


この後、相変わらずのように翔梧や男子達が沸き上がったが、このくだりもいい加減飽きてきたので割愛することにする。

どうやら日常生活で柊はあまり目立ちたくはないので俺とは初対面、という形をとりたいらしい。俺は快諾をしてしまったがどう考えても初対面の人間がクラスの男子の家にいることは大問題だ。やはり彼女は少し抜けている。


「学校のどんな感じかわかる?私が案内してあげるよ!」

「いやここは私が!」


放課後にもなりてんやわんやしていたが何故やたら皆は転校生に学校について教えたりしたがるのだろうか。


「教室なんてものは通っているうちに勝手に覚えるものだし本人に任せればいいのと思うけどなぁ。」

「そんなんだからソウタは男の友達が出来ないんだよ?」


後ろからイリーナが俺の頬を突っつきながら子供を諭すかのように言った。


「そういうもんかね?」

「そういうものなんです。」

「さいですか……。」


今日の放課後は一人であった。いや、放課後というよりは帰り道だ。

いつもはみんなと帰っていたが、今日はみんな女の子の友達と一緒に寄り道をしながら帰るのだそうだ。

真っすぐ家に帰りたい俺からするとよくわからないものだが……あれだな。

RPGのダンジョンでボス戦に行くまでくまなくダンジョンを捜索したい気持ちに似たものだろう。


荷物をまとめ、足早に帰っている時であった。

横断歩道で信号が変わるのを待っていると、隣に一人の小学生らしき子供がいた、何やら外国人の人に話しかけられている、道でも迷ったのだろうか?

別に耳を澄ましているわけではないのだが自然と会話の一部が流れてきたがこの女の子は流暢に英語を話していた。


「今どきの小学生は英語も堪能なのか……。」


感心から出た言葉である。

この言葉に悪意はなかった。

女の子に話しかけてるつもりもなかった。

大体、俺みたいなやつが話しかけたら防犯ブザーを0.3秒で引っこ抜かれかねない。

しかし、予想外の返答が彼女から放たれた。


「女子小学生ちゃうわ!」


関西弁だ。

しかもこの子曰く自身は小学生ではないようだ。


「え?」

「だ・か・ら!花梨は!小学生じゃないっちゅーねん!」


一人称が自分の名前に対し、体型が小学生、訛りは関西という訳の分からない状況に俺は飲まれていた。

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