パンジーと、あなたへ

 あれは、3ヶ月前のこと。

 ウィルス性感染症に倒れ、やっと起き上がれるようになった朝。ベランダでパンジーに水やりしようとした私は、驚愕した。


 萎れた花、枯れた茎。

 食いちぎられた葉っぱ。

 蠢く黒いモジャモジャ……!


 めっちゃ毛虫ついてる!!( ; ゜Д゜)


 二階のベランダなのに、根性入った毛虫が入り込んだ様子。

 こんな話、あいるさんのエッセイで読んだな……。

 あいるさん家は優しい夫の山下君が毛虫退治してくれたけど、我が家の連れはハエも殺せぬジェントルマン。自分でやるしかない、けど……。


 ほぼ一週間寝たきりで、咳き込み、ふらつき、ちょっと動けば疲労困憊。こんな状態で奴らと戦えるのか?

 1ヶ月も放置すれば、モジャモジャ☆パラダイスも終焉を迎え、「兵どもが夢の跡」状態になるのではあるまいか。

 

 逡巡する私の心に、在りし日のパンジーが甦った。


 鮮やかな黄色。息子が「笑ってるみたい」と表した花。

 朝が憂鬱であればあるほど、パンジーのあたたかな黄色が沁みた。しゃがみこんで見つめる私を励ますように、パンジーは笑った。


 ……また、あなたに会いたい。


 私は咳き込みながら毛虫と対峙した。

 水を入れた紙コップに毛虫を入れて溺れさせ、そのままベランダの排水溝に流す作戦を決行!

 が、思いがけず毛虫は水に浮き、紙コップをよじのぼってくる( ; ゜Д゜)

 悶えつつ悲鳴をあげつつ、ベランダを右往左往する私。それでも、なんとか十数匹の毛虫を退治することができた。


 パンジーは僅かに残った葉にも、毛虫の卵がびっしり。泣く泣く枯れた茎ごと切ったら、残った根も枯れてしまった。

 殺風景になった植木鉢。それでも、私は水やりを続けた。あまりに小さくて、毛虫も見過ごした小さな小さな芽が残っていたからだ。


 あれから3ヶ月。

 少しずつ大きくなり、葉っぱを増やしたパンジーが、ついに花を咲かせた。

 鮮やかな黄色。パンジーは以前と変わらぬ笑顔を見せてくれた。


 ……ありがとう。


 生き延びてくれたパンジーに、心の中でお礼を言った。


        🌼🌼🌼


 先日、あるカクヨム作家さんがエッセイで最後のご挨拶をされた。闘病生活の中でも、いつも明るく優しい方だった。


 「皆さんは、思う存分生きてください」

 「最後の一秒まで、生き抜くつもりです」


 彼女のメッセージが、沁みた。


 私たちには「今」しか無いんだなって改めて思う。

 未来の心配を先取りするんじゃなくて。

 過去の苦痛に囚われるんじゃなくて。

 目の前の「今」を、大切に生きる。

 彼女のメッセージを読みながら、そう思った。 


 彼女がお別れを告げた翌日、パンジーが復活した。

 あたたかな黄色い花に、会ったこともない彼女の笑顔を重ねた。


 彼女の「今」を想う。

 優しい音楽、あたたかな物語、素敵な雑貨。

 モフモフの猫のお腹、愛する人の微笑。

 どうか、安らかで穏やかな「今」を。

 そんな日々が、ずっとずっと続きますように。


 カクヨムには、彼女のアカウントが残されている。「無言読み」でカクヨムに居てくれるという彼女。

 なんだか、カクヨムの天使みたいだと思った。姿は見えなくても、今もカクヨムの世界で飛び回っているのかも。そのうち「ただいまー!」って、ひょっこり戻ってきてくれるかもって、そんな風にすら思う。

 彼女の作品はこれからも、読む人の心にあたたかな灯をともすのだろう。

 勝手ながら、私のオススメ作品のご紹介を。

 お茶目で、あたたかくて、沁み入るような。わずか140字の中に広がる、素敵な彼女の世界。


🌱140文字の涙🌱

  あいる 様

https://kakuyomu.jp/works/16816700425948791588


 あいるさん、ありがとう。今までも、これからも。

 片隅より、感謝を込めて。

 

 

 

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