バイト

 7歳の息子リュウが言った。


 「僕、バイトしたらお小遣いもらうことにする!」


 リュウは毎月500円お小遣いをもらってるのだが、それを「バイトしたら月に500円もらえることにする」らしい。

 お小遣いを要求され、「3桁の計算できたらね」と無理難題を出したらクリアされ、不本意ながら与えたお小遣い。労働とセットにしようと「お手伝い」を提案しても、お互い忘れて定着せずにいた。これは願ったりな提案。


 「じゃあ、食後に自分の食器は台所に持っていってね」


 いつも、これを頼もうと思いながら忘れちゃうんだよな~(^_^;)


 その日、息子は食器の片付けは勿論、落ちてたゴミを拾ったり私の肩叩きをしたり、頼んでもいない「バイト」をやりまくっていた。

 満足そうに呟く息子。


 「これで100円は稼いだ!」


 いや、毎日やるんですよ? (´-ω-`)



 翌日。そんな約束も忘れた頃。

 帰宅してバタバタ、夕飯の支度をする私。その傍らでグズり続ける三歳の娘。

 疲労も重なり、つい口調がきつくなる母……( ノД`)

 息子がタメ息。


 「お母さんがそんな風に言うから、ユヅちゃん機嫌悪いんだよ。僕に任せて!」


 おもむろに折り紙で、何やら制作?(゜゜;)


 「ユヅちゃん、あげる!」


 ピタリと泣き止むユヅ。

 四角に折られたピンクの折り紙。ポケモンシールが貼られたそれは、兄から妹へのお手紙だった。


 「ユヅちゃんへ。だいすきだよ。おとうさん、おかあさん、おにいちゃんより」


 リュウが読み上げると、涙目だったユヅがにっこり笑う。見せてもらうと、家族の似顔絵まで書かれていた。みんな、笑顔だ。


 なんだか、じんときた。

 リュウは、お兄ちゃんになったよな……。


 ユヅが生まれた頃は、赤ちゃん返りが激しかったリュウ。全然言うこと聞かなくて、ずっと泣き喚いていた。突然全裸になったり、傘をさしてご飯を食べたり、奇行に走っていた。

 だから今も、リュウがお兄ちゃんとしてユヅに接しているのを見ると、しみじみ嬉しい。ユヅの存在を受け入れて、優しいお兄ちゃんになってくれて、すごいなぁと思う。


 感動を噛みしめる私に、リュウが笑顔でささやいた。


 「これも、お小遣いのためだからね」


 バイトだったのかよ……!!( ̄□ ̄;)



 その日の夕飯後、食器をさげるお手伝いは、お互い忘れてました……(´;ω;`)

 忘れん坊の親子ですが、こどものお手伝いって、どうやったら定着するんでしょうね……。


 

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