〈感謝✨300PV〉祈り

私がこどもだった頃。


実家には仏間があって、おばあちゃんは朝に夕に、仏さまにお参りしていた。

黙って手を合わせる、真摯な横顔。


私は不思議に思って尋ねた。

「いつも、何をお願いしてるの?」


おばあちゃんは、ニコニコ答えた。

「朝は、家族が無事に1日過ごせますように。夕方は、お陰さまで無事に過ごせましたって、ご先祖さまにお参りしてるんだよ」


幼心に、あぁ、守られてるんだなぁって、思った。



吉本ばななさんの小説で、祈りの研究についてのくだりがあった。

どこか外国で、末期ガンだったか、病気の人を、祈られる人達とそうでない人達に分けて、予後を比べたらしい。

「祈られている」と知ることで影響が出ないよう、対象者には、無関係な第三者から祈られていることを知らせない。

にも関わらず、祈られる人達の方が、予後が良かったらしい。


私は、この研究結果って、本当なんじゃないかと思う。

私たちは、時として自分の無力さを噛み締めることになるけれど。

それでも、想いが届くことがあるんじゃないかって。

祈りが、全てを、変えられるわけではないけれど。

それでも。


ロクでもないことが起こる、この世界で。

それでも、どこかに手加減がある。間一髪がある。振り返れば、痛みを伴う過去も、自分の中で受けとめられていく。

誰かの眼差しを、感じることがある。

知らず、祈る自分がいる。



実家はいろいろありながらも、3人のこどもは無事巣立ち、今は弟夫婦のこどもがすくすくと育っている。

おばあちゃんのお祈りのおかげかもしれない。

見守っていてくれる、誰かがいる。


おばあちゃんは、もう93歳。

足腰は曲がり、杖をつくようになった今も、朝に夕に、お参りを欠かさない。


今日もみんな、元気です。

ありがとう。

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