第712話 2021/9/25 変身願望とか

 本日は10時起き。快晴。いい気候だ。なのに台風がまたこちらに向かってきているという。勘弁してくれないかなあ。ある程度の雨とか風で済むのならいいが、いまのまま発達すると、ある程度では収まらない可能性がある。心臓に悪い。また屋根にブルーシート張るのは嫌だぞ。あんな経験は一生に一度で十分だと思う次第。


 ある朝グレゴール・ザムザは毒虫に変身していたが、これは襲いかかる不条理の隠喩である。ザムザが毒虫に憧れていた訳ではない。もっとも、「普通ならば美しい蝶に変身したいと思うはずだ」などと考えるのも間違っている。いかに美しい翅を持っていようと虫は虫だからな。人によっては醜悪に写るし、嫌悪の対象である。変身願望に普通もへったくれもない。

 人間は変身願望を持つものである。それを公言するか秘密とするかは人それぞれだが、「何者にもなりたくない人間」はあまりいないだろう。いまより成績優秀になりたいというのも一つの変身願望だし、もっと異性にモテたいというのもそうだ。学校に侵入してきたテロリストを倒したいと思うのも、異世界で無双したいと夢想するのもすべて変身願望である。たいていの人間は「ここではないどこか」の景色を見たいと思うし、「いまの自分ではない誰か」になってみたいと思うのだ。現状に100%完璧な満足感を抱いていれば別だが。

 小説で飯を食えるようになれればいいな、と虫けらが考えるのも当然、変身願望なのであるが、それでも年を取ったせいか、自分の本質を変化させたいと願う事はなくなった。若い頃には自分を全否定し、まったく違う自分になりたかった時代もあるのだが、これは成長したのか、それともただ諦めただけなのか。

 そんな若い高校1年生の頃、虫けらは柔道部に入部した事がある。言うまでもなく即退部する羽目になったのだが、随分と無茶をやったものである。とにかく自分に向いていないと思うことをやれば、自分が変えられるかも知れないと考えたのだろう、結果としてはただ向いていない事を再確認しただけだったが。「無理が通れば道理が引っ込む」とは言うものの、虫けらの中にある個人的な「道理」は、どんなに頑張って「無理」を通そうとしても引っ込まず、ただぶつかるだけだったのだ。何とも生き辛い事よ。

 とは言え、その柔道部にいた頃の経験や、その間に得た知識は、いま創作をする上で役に立っている。人生、どう転ぶかわからんものだ。

 さて、ラグビーの国際競技連盟「ワールドラグビー」は22日、選手の負傷を減らすために新たな指針を発表した。この中でフルコンタクトの練習、要するに試合に近い形のタックルなど体をぶつけ合う練習を、週に最大15分間、最大2日間にまで制限する事などを提案している。ただし、強制力は持たない。

 高校野球の球数制限などとも根っこは同じなのだろうが、負傷により競技人生が断たれる選手が多いと、いかに人気競技であってもレベルの高い選手がどんどん退場して行き、しかも新たに参加する選手が減ってしまう。結果、全体が低レベル化してしまう未来が見えているのだ。練習での故障者を減らす試行錯誤は必要であると思う。

 ただ、今回の提言にはオーストラリア代表チームのヘッドコーチが疑問を呈している。

「誰がその時間を計る? これらの数字をはじき出すまでに多くの作業を要したと思うが、うまくいくかは確信がない」

「35~40パーセントのけがはトレーニング中でのもので、60~65パーセントは試合中でのものだ」

「練習では選手のコンディションを高め、コンタクトによる負荷をかけることで、実際の試合で対処できるようにしたり、必要な技術を身に付けさせたりする」

「けがを減らすことが注視されているが、最も重要なのは選手たちがコンタクトに対処する技術や知識を得られるようにすることだ」(以上AFP)

 平たく言えば、タックルを受けたときにどう受け身を取るのかは、タックルを受けてみないと学べないという事であり、タックルによる負傷を減らすためにタックルを受けさせないのは本末転倒ではないか、という事だ。

 柔道や剣道には「約束稽古」という練習がある。あらかじめ繰り出す技を決めて、一方が技をかけ、受ける相手はそれに耐えるという練習である。大昔の柔道マンガでは木に柔道着を巻き付けて、それを相手に背負い投げの練習をするというシーンがよく出てきたが、アレを人間相手にやっているようなイメージで考えてもいい。

 ただしマジレスすると、木を相手に背負い投げの練習をしても、ほぼ練習にはならない。背負い投げは相手のバランスを崩した上で足腰のバネを使って跳ね上げるという技なのだが、木はバランスを崩してくれないからだ。腕の筋力は多少上がるかも知れないが、人間のバランスを崩す、という体感は得られない。柔道着を巻き付けるより、自転車のゴムチューブを巻いて引っ張った方がはるかに練習になるだろう。

 閑話休題。今回のワールドラグビーの提言を見ていると、柔道において試合形式の練習(「乱取り」と言う)で負傷する選手を減らすために約束稽古を減らすような、ちょっと極端な内容にも見えなくはない。故障者を減らす、選手寿命を延ばす対策は確かに重要なのだが、もう少し煮詰めても良かったのではないか。

 変身願望は誰にでもある。人間の集団にもあるだろう。ラグビーに「すぐケガをするスポーツ」だというイメージがあるのなら、それを払拭したいと思うワールドラグビーの考えも変身願望であり、理解も共感もできる。ただ、あまり拙速なのはよろしくないのではないかと考える次第。


 今月1日に立ち上がったばかりのデジタル庁で審議官が懲戒処分を受けた。58歳のこの審議官は事務方のナンバー2で、2020年に事業者から3回にわたってタクシーチケットなど計約12万円の接待を受けたとして、減給10分の1(1カ月)の懲戒処分が下された、と24日平井デジタル相が発表した。

 先日、立憲民主党の職員の不祥事をここでも取り上げたが、ほぼ同レベルだというのがよくわかる。立憲民主党は責任者の枝野党首にはおとがめなし、デジタル庁も平井大臣にはおとがめなしである。まったく「右を向いても左を見ても」の世界であるな。何とも嘆かわしい。


 2018年、アメリカの要請によりファーウェイの孟晩舟副会長がカナダで逮捕された。中国はこれに対し、カナダ人旅行者を逮捕した。アメリカ国内において詐欺罪で訴追された孟氏をアメリカに移送するかどうかで、カナダと中国に緊張関係が生まれたのだが、24日アメリカ司法省は、イランとの取り引きについて金融機関に誤解を招く説明をした事など、一部容疑を認めるのを条件に、起訴を猶予する司法取引で合意したと発表、孟氏は釈放されて中国へと出国した。この直後、中国で逮捕されていたカナダ人2名も釈放されている。

 トランプ氏は高笑いしているだろう。自分が大統領ならこんな屈辱的な結果にはならなかったと豪語するに違いない。実際にそうなったかどうかは定かではないが、アメリカ国内にはそれに同調する勢力も一定数いるはずだ。果たしてアメリカ国内の左派メディアが、いつまでバイデン大統領を擁護し続けられるか。カマラ・ハリス氏の大統領昇格もそう遠くないかも知れない。


 本日はこんなところで。明日はワクチン接種なので、ここは更新できるかどうか。早起きできればいいのだがなあ。あと副反応が出なければ、何とか。

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