第613話 2021/6/18 桃太郎とか

 本日は12時半起き。外は雨。どうにも悪い循環に入っているような気がする。来週の月曜日には病院に行かねばならんのだが、起きられるだろうか。うーむ。


 最近、ところどころで「かわよ」を見かける。流行っているのか。これが何なのか知っている人は多かろう。もともとは「かわいい」を「かわE」と書いたのが始まりである。やがてEをひっくり返して「かわヨ」と書く者が現れた。最初はそれにみんなしてツッコんでいたのだ。だがいつしかそれも当たり前となり、誰もツッコまなくなった。そして気がついたら、可愛い事を「かわよ」と書くようになっていたのだ。

 言葉の進化の縮図を見た気がする。こうやって言葉は時代と共に変化して行くのだろう。

 時代と共に変化して行くのは言葉だけではない。言葉を使って紡がれた物語も、時代を追うごとに変化して行く。典型的なのは『桃太郎』かも知れない。

 いまの岡山県の辺りに侵攻してきた外国勢力を大和朝廷が攻撃し平定した事を元として生まれたのが桃太郎の物語であるとされる。『トリビアの泉』で紹介され話題となったが、そもそも桃太郎は大きな桃の中から生まれた訳ではない。川上から流れてきた不思議な桃の実を爺さん婆さんの夫婦が食べて若返り、結果生まれたのが桃太郎だったのだ。この事から桃太郎は中国の伝説に影響を受けている事がわかる。

 中国には「桃源郷」の伝説があり、女神西王母も桃園を持っていた。ちなみに『西遊記』では孫悟空がこの西王母の桃園「蟠桃園」の管理人を任されるが、桃の実を食い尽くしてしまうというエピソードがある。

 事ほど左様に中国では桃の実は数々の神話や伝説と結びついた聖なる果実である。桃太郎の物語はその下流にあるのだ。

 さて桃太郎が育つと、やがて鬼退治に出かける訳だが、この鬼に対する表現も時代によって変化する。かつての鬼は都で盗みはもちろん、放火や殺戮を繰り返す悪逆非道の存在であった。この辺、酒呑童子伝説と同じ源流があるのではないかという気がする。

 この鬼の巣くう鬼ヶ島に乗り込み、皆殺しにするのが当初の桃太郎の物語である。バイオレンスではあるが、同様の傾向は『北斗の拳』にも見られるように、決して枠をはみ出た異常な物語ではない。正義が悪を殲滅するのは発想としてシンプルかつ説得力がある。ゾロアスター教以来連綿と続く二極対立の物語の枠組みの内側にあると言ってよい。

 ところが昨今の桃太郎ではこの鬼の悪事があまり語られないようだ。「悪い鬼」という言葉は出て来るのだが、何がどう悪いのかを説明しない。物語の最後に桃太郎が持ち帰る宝物について「盗んできた」という言及しかないので、泥棒くらいしかしていないような印象を持つ。なるほど、まあ泥棒も悪い事には違いないが、それで種族全体が皆殺しにされるのは、さすがにやり過ぎ感がある。だからなのかいまの桃太郎は鬼を退治せず、鬼を許して宝物だけ持ち帰るらしい。……それってほとんど居直り強盗ではないか。

 やはり物語の完成度を考えると、極悪な殺戮者である鬼を正義の桃太郎と犬猿キジが退治する方がしっくり来る。ただそんな物語を、事の善悪が理解できない年代の子供に聞かせるのはどうよという判断は理解できなくもない。できなくもないのだが、かつてのウルトラマンも仮面ライダーもそんな物語だったろう。それで何か不都合があっただろうか。個人的には子供を無菌室的な情報の中で育てる事に疑問を持つところである。

 話は変わって、今週インドのガンジス川の川岸の茂みで、船に乗っていた男性が奇妙な木の箱を見つけた。拾って中身を見てみると、何と生きている女の赤ちゃんが入っていた。AFPの報道によれば、箱の中には赤い布が敷かれ、ヒンズー教の神々が描かれた絵の他、赤ちゃんが生まれた日時と赤ちゃんの名前「ガンガ」が書かれた占星術のチャートも入っていたと言うから、事故でうっかり流されてしまったとは考えにくい。

 日本でも昔、産まれた子供を育てられない事情があるが、殺すには忍びないというときに川に流したりしたらしい。『どろろ』の冒頭にもそんな描写があるし、その拾われた子が立派に成長し、という伝説も多い。もしかしたらこの女の子もそんな何らかの事情があったのだろうか。

 昔話的に考えるなら、この女の子は「箱姫」とでも名付けるべきなのだろう。実の親が付けたのかも知れないガンガという名前をこの子に名乗らせて良いものかどうかはちょっと微妙な気がする。まあ箱姫よりは現代的だが、ガンジス川に流されたからガンガというのも安直に過ぎないか。とりあえずこの女の子は元気であるようなのが救いである。いつか「かわよ」と言ってくれる人の元にたどり着ければいいのだが。


 昨日17日に埼玉県のさいたま市大宮区で発生したネットカフェの立てこもり事件であるが、これを書いている18日16時現在、まだ解決していない。人質の女性店員はとりあえず返事をしているようなので無事とは思われるが、まだ事件の全容が把握できていない。自暴自棄になった人間の行動を理解しようとするのは無駄だとは思うものの、ネカフェで立てこもったって何の意味があるのだ。人間とは不可思議な存在である。


 短いが本日はこんなところで。昨日は2000文字弱書けた。まあまあ頑張った方だろう。今日も何とか少しずつでも頑張りたいところ。

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