第585話 2021/5/21 面子とか

 本日は5時半起き。雨天。夜中はザンザン大降りだったが、今日は風が吹くという事なので雨戸を閉めておく。おかげで朝から夜の気分。ネットスーパーへの注文で食パンを忘れた事に朝になって気付く。まああと3日分あるからいいや。3日後に注文しよう。と言いつつまた忘れたりするのだけどな。その辺はお約束の域である。


 面目、体面、体裁、世間体、これらはすべて別の意味を持つ言葉だが、意味合い的にオーバーラップする部分を持つ。それをまとめて言い表す単語が「面子めんつ」である。これは中国で使われていたものを、意味も読み方もそのまま輸入した言葉であるらしい。こちら側の責任で相手の面目、体面、体裁、世間体を悪化させる事を「面子を潰す」と言ったりする。

 まあ「厚顔無恥は社会人の必須スキル」とも言われるように、社会人になったら個人の面子など気にはしていられない。どれだけ自分の面子が潰されようと、いつもニコニコ平然としていなければならない場合も多々あるのだ。

 しかしその一方で、会社なり団体なり、自分の所属している集団の面子は堅持しなくてはならない事も珍しくない。組織の駒として、全体の面子を守るために個人の面子を放棄するのが社会人というものなのだろう。

 どちらかと言えば、保守的な集団ほど面子にこだわる傾向を持つように思う。ヤクザなどその典型例ではあるが、そこまで行かなくても役所単位の縦割り行政なども省庁間の面子のぶつかり合いによって生じていると言える。

 合理的に考えれば横の連携を取った方が簡単なはずなのだが、彼らは勝手に引いた縄張りの線の内から出て来ようとはしない。「何でこっちが出て行ってやらねばならんのだ」という発想があるのだろう。政府は省庁の垣根を越えた人事異動を活発に行って横の連携を取れるような工夫はしているのだが、あまり上手く行っているような印象はない。

 かつて大日本帝国軍では陸軍と海軍が互いの面子をぶつけ合い、陸軍の海上輸送隊とか海軍の陸戦隊とかが存在する非効率の極みと言っていい運用を行っていた。当時は空軍がなかったから、陸軍と海軍の双方が共に航空部隊を運用する始末。現在の自衛隊ではこの反省に立ち、統合幕僚監部が陸海空の自衛隊を一体的に運用している。しかし、それでも垣根が完全に消えたわけではない。

 もっともこれは日本に限った話ではない。アメリカ軍など空軍が存在しているにも関わらず、海軍も海兵隊も陸軍も航空戦力を持ち、何なら州軍までもが戦闘機を保有している。いかに国土が広いとは言え、どんだけ飛行機が好きなのだという気もするのだが、やはりある程度の面子のぶつかり合いはあるのではないか。

 とは言えある意味これらはまだマシな方で、一番厄介なのはやはり、国家の面子であろう。昔は相手国の面子を潰す事が開戦理由となったほどだ。もちろんこの21世紀の現代においては、さすがにそれだけで戦争をおっぱじめる国はない。さしもの中国北朝鮮でも、面子を潰された途端に隣国の首都にミサイルをぶち込んだりはしないのだ。「火の海にするぞ」くらいはのたまうのだろうが。

 ただ、開戦理由にはならなくとも、停戦条件にはなる。すでに起こっている戦いをやめさせようとするのなら、当事国の面子を立てる必要があるのだ。面子すら立てようともせず、諸外国や国連が頭ごなしに「戦争をやめろ」と言ったところで、戦争の当事国にはそれを聞かねばならん理由などない。戦争をやめて欲しけりゃ筋を通せと言い返されるだけだ。国家間の戦争もヤクザの抗争も本質的には大差ないと言える。

 現地時間の21日午前2時(日本時間の同日8時)にイスラエル、そしてパレスチナの「ハマス」「イスラム聖戦」の両武装組織はエジプトが提案した無条件停戦に合意し、11日ぶりに戦闘が停止した。現在パレスチナにはミサイルの爆撃音は響いていない模様。ただし、この先の展開はまだ読めない。停戦合意が発効した後で「相手が合意を破った」と主張して攻撃を再開する事など、この世では珍しくはないからだ。

 そもそもイスラエルは当初、停戦合意に懐疑的であった。停戦をするなら一方的な停戦にこだわっていたのだ。何故一方的停戦なのかと言えば、

1.自らがテロ組織と指定するハマスやイスラム聖戦と、対等に「合意した」とは言いたくない

2.諸外国からの圧力に屈したとは言いたくない

3.いつでも攻撃を再開できる態勢を維持したい

 といった理由からであった。だが結果的にはエジプトの和平案を受け入れた。和平案の内容はまだ不明だが、おそらくはイスラエルの面子を立てる内容となっているのではないか。

「面子なんかのために多くの人々を死に至らしめたのか、くだらない!」

 そんな声が聞こえてきそうである。だがいかにくだらなくとも、面子が実際に人を動かし、国を動かすのは現実なのだ。被害を可能な限り最少限度に押さえるために、現実的な対応を取るのは当然であろう。アメリカのバイデン大統領はこの停戦について、

「われわれは前に進む真の機会を得たと信じており、それに向けて努力することを約束する」(AFP)

 と述べ、仲介役を果たしたエジプトを賞賛した。これでエジプトの面子も立とうというものである。世界は面子で動いている。それがどれほど馬鹿げていてもだ。


 という訳でようやっと停戦にこぎ着けたパレスチナ情勢ではあるが、これを巡って国連安保理では暗闘が繰り広げられていた。イスラエルを非難したいEUと、それを防ぎたいアメリカ、そしてこの混乱に乗じて主導権を握りたい中国の間でだ。

 中国の国連代表部の報道官は言う。

「ガザにおける衝突は続き、日々市民の犠牲者は増えている。そんな状況に直面すれば、良心を持つ人なら誰であれ、敵対行動を止めるよう呼び掛けるだろう。米国には、イスラム教徒を気にかけていると証明するあらゆるチャンスがある」

「安保理メンバーの大半は、停戦と暴力の阻止に安保理が一定の役割を果たすことを希望している。中国は議長国として自らの責任を果たさなければならない」(以上ロイター)

 直接的な表現は避けているが、要するに、

「パレスチナ人を殺しているのはアメリカだ」

「中国は平和を愛する責任ある大国だ」

 と言いたい訳だ。

 無論、中国がそう言ったからといって、他の国々がそれを額面通りに受け止める訳ではない。しかし中国に現実にそう言わせている事自体が、とんでもない大問題である。アメリカの面子が潰されまくっている。

 あるシンクタンクの関係者はこう述べている。

「率直に言って、米国の姿勢は中国にとって天からの贈り物だ。米国はこれまで中国に対し、ミャンマー問題などについて国連の行動を支持するよう迫ってきた。ところが今、中東問題で安保理が声明を発表するのを阻止しつつある。これはバイデン氏が任命した米国の国連チームの評判を傷つけ、中国を責任ある大国に見せている」(ロイター)

 蟻の穴から堤は崩れるのだ、世界のためにもこんな連中を国連にのさばらせておいてはいけない。そのためにはアメリカにもっと強くなってもらわねばならない。しかしもうアメリカの独力ではそれも難しくなっているのが現状である。すなわち日本を始めとする同盟諸国の連帯が不可欠と言えよう。冷戦に逆戻りするのかという批判の声もあろうが、世界の力学の組み替えからは日本も逃れられないのだ。


 16日の朝、東海道新幹線が走行中に運転士が運転席を離れていたらしい。急な腹痛でトイレに行ったそうで、時間にして約3分、その間運転席には車掌がいたのだそうだ。しかし、この車掌は運転資格を持っていなかった。

 最悪の事態が起こったらどうするんだ、と運転士を責める声もあろうとは思うが、これはさすがに仕方なくないか。どっちかと言うと運転資格のない車掌を乗せている会社側の態勢が問題である。

 JR東海の内規では運転士が体調不良になった場合、指令所に指示を仰いで車掌に運転資格があれば交代させ、なければ停車すると定めているそうだが、運転士がトイレに行くために新幹線が停止したら、それはそれで問題になろう。だいたい離席は3分と報じられているものの、実際に3分だったかは当事者にしかわかるまい。列車を停めて5分も10分もトイレに籠もる事態になったら、JRは苦情対応に振り回されるぞ。いい加減、列車は人間が動かしているのだという前提条件から目を逸らすのはやめた方がいい。

 今回の事でJR東海は面子を潰されたと思っているのかも知れないが、これをチャンスと捉えられなければ、いずれ会社は腐って倒れると思うところ。


 本日はこんなところで。昨日は何とか1000文字書けた。久しぶりに書けた気がする。いや、気がするだけではなくて実際にその通りなのだ。やはり書きたいものがあるのなら、生きているうちに書いておくべきだよなあ、とつくづく思った次第。

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