第475話 2021/1/31 搾取

 本日は11時半起き。ほぼ昼だ。いやあ寝た寝た。もの凄い寝た。途中で一回も起きなかったんじゃないだろうか。よっぽど疲れてたんだろう。おまけに気温が高いもんだから、布団蹴飛ばしていた。3月並みの気温だという。明日はもっと上がるらしいが。まあ暖かいのは歓迎である


 ニュアンスはわかるんだが、説明しろと言われると難しい言葉はただでさえ多い。定義にブレのある言葉はなおさらである。「搾取」もその一つだろう。

 いつものようにコトバンクを開き、搾取を調べてみると、デジタル大辞泉においてはこのように説明されている。

 ◇ ◇ ◇

[名](スル)

1 乳などをしぼりとること。

2 階級社会で、生産手段の所有者が生産手段を持たない直接生産者を必要労働時間以上に働かせ、そこから発生する剰余労働の生産物を無償で取得すること。

 ◇ ◇ ◇

 1はわかる。文字通りそのまんまであるな。問題は2だ。まず階級社会って何だ。階級によって区切られた社会である事はわかるが、階級社会でなければ搾取は存在しないのだろうか。て言うか例えば二国間貿易の場合、両者に力関係の不平等があったとしても、それを「階級社会」という言葉で表すのは適切なのだろうか。現代の搾取は二国間やそれ以上の多国間で発生しているものが多いはずだ。そこに階級が意味を持つのだろうか。

「生産手段の所有者が生産手段を持たない直接生産者を必要労働時間以上に働かせ」ともあるが、生産手段を持つ直接生産者との取引では搾取は生じないのか。労働時間を法的に、社会常識的に守れば搾取は生じないのか。そんな事はあるまい。

「そこから発生する剰余労働の生産物を無償で取得する」のが搾取なら、金さえ払えば搾取ではないのか。これも違うように思う。

 大辞泉だけではなく、ざっと見た限り辞書辞典の類いにおける「搾取」の説明は総じて古い。実態に応じていない、適切とは言えない説明が堂々と載っている。面白いな。何故この単語は現在の使われ方にアップデートされないのだろう。何か虫けらの知らない問題があるのだろうか。

 かろうじて、と言うのはアレかも知れないが、Wikipediaの「(前略)他人に帰属すべき権利や利得を不正に侵害したり取得することや、優越的立場を乱用し他人を使役して不当な利益を得ることを表すためにも日常的に用いられる。一般的には、人を自分本位に、または非倫理的に利用することを言う」という説明が、現代における「搾取」の実態に一番近いのではないか。ただこれも本当に現実社会で行われている搾取を適切に説明できているかと言うと、微妙なところはある。

 虫けらを始めとして多くの人々がカクヨムにおいて日々大量の文章を投下している訳だが、その文章に対して広告を表示させ、収入を得ているカクヨムは果たして我々を搾取しているのだろうか。これ結構難しい問題である。明確な解答はない。

 投稿者側に一銭の金も渡さずにKADOKAWAの社長が広告収入を独り占めし、莫大な利益を得ている、とでも言うのなら間違いなく搾取なのだが、カクヨムリワードについて説明するまでもなくそんな事実はないし、そもそもカクヨムの広告収入がそこまでの利益を生んでいるとも考えづらい。普通に考えてこれを搾取と言い出したら社会が成立しないだろう。

 ただこの「普通に考えて」というのがクセモノである。明確な基準がないのだ。片端に「これはさすがに搾取だ」という例があり、その対極に「これを搾取と呼ぶのはおかしい」という例は挙がるのだが、真ん中辺はグラデーションになっていてハッキリしない。給料がいくらなら、労働時間が何時間なら搾取という線がないのである。

 しかも昨今では「搾取」の定義がどんどん広がっており、ついこの間まで搾取ではなかったはずの事が搾取と呼ばれ非難される事態も起きている。もしかしたら辞書辞典の類いが搾取の定義づけをしたがらないのは、そんな背景もあるのかも知れない。

 さてタイの企業がココナッツミルクを製造して海外に輸出していたのだが、昨年の7月くらいから欧米の小売業者が次々にタイのココナッツミルクの取扱いをやめているらしい。搾取が行われているというのがその理由なのだが、誰に対する搾取かと言えば、サルである。

 ご存じの方も多いのではないかと思うが、タイでは昔からサルを飼い慣らし、ココナッツの実を取らせるのを観光地などで見せている。これにアメリカの動物権利擁護団体「PETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)」が噛み付いたのだ。タイのココナッツミルクの製造企業は同じ事をやっているに違いない、と。

「サルは強制的にココナツ収穫に駆り出され、古いタイヤに鎖で縛り付けられ、自分の体よりわずかに大きい檻(おり)の中での生活を強いられていることなどが判明した」

「タイ国内のココナツ栽培産業ではサルの労働力の搾取が広範になされ、慣行の改善に踏み切った企業もあるが、調査の対象になった際、サルを隠す企業もある」(以上CNN)

 とPETAは主張している。ただし、この「事実」を確認できたと主張しているのは、いまのところPETA以外にはいない。いかなるメディアも公的機関も確認ができていないのだ。

 ちなみに6年ほど前にサルの「自撮り写真」はサルに著作権があるとして、写真家が訴えられた裁判があったが、このとき写真家を訴えたのがPETAである。この裁判では当然PETAは敗訴している。そういう集団である事は頭に入れておく必要はあるだろう。

 まあ「普通に考えて」大量のココナッツの実を収穫する際に、全部サルにやらせるのと人間が収穫するのと、どちらの方が時間的にコスト的に企業側に有利かを考えれば、おのずと答は出て来るのかも知れない。搾取を問題にするのなら、人間からの搾取を問題にした方が簡単だったのではないだろうか。だがそれではPETAの存在意義に関わるしな。

 動物の福祉(アニマルウェルフェア)という考え方には大きく同意する部分も多々あるのだが、自分たちの組織を宣伝するためにそれを利用するというのは、これこそ動物からの搾取なのではないかという気がしないでもない。こういう組織に大きな発言権を与えている欧米は、まあ自由主義にかかるコストの一部であるとも言えるのだろうが、もうちょっと何とかならんかとも思うところ。


 本日はこんなところで。ネタがない。イギリスが香港市民の本格的な受け入れを開始したが、中国側の出方も香港市民の動きもわからないので、しばらくは様子を見る必要があるだろう。他の話題としてはそれくらいか。アストラゼネカ製の新型コロナのワクチンについてEU内部が混乱しているようだが、何が何やらよくわからないしな。まあ、今日はこれでいいや。

 昨日は調子が悪い調子が悪いと言いながら、何だかんだで最終的に3800文字ほど書けた。自分の言葉は当てにならんものだ。さて今日も何とか頑張るか。

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