第476話 2021/2/1 脊髄反射とか

 本日は3時半起き。天気はどうやら悪い模様。それでもまあ何とか、動けなくはない。とりあえず無事に一日過ぎてくれると有り難いのだが。


 熱い物に触れると手を引っ込める、目の前に何かが飛び出すと目を閉じる、これらは脊髄反射である。末端神経からの刺激が脳に至る前に脊髄で完了する反射を脊髄反射と言い、ここからネットでは、碌に考えもせずに反応してしまう事を揶揄して脊髄反射と呼んでいる。

 いい歳をした大人が脊髄反射的な行動を取るのはあまり褒められた話ではないが、結果として脊髄反射的な行動を取ってしまう事は少なくない。いちいち何でもかんでも全部しっかり考えて行動していたら、日が暮れてしまうからな。大事な事以外は適当に処理するのも生活の知恵である。それが脊髄反射的に見えても仕方ない。

 ただ大事な事は人によって違うとは言え、客観的に見て「さすがにこれは脊髄反射しちゃダメだろ」という事も世の中にはある。代表的な例を挙げるなら、人間の命がかかっているような場合だ。たとえ自分に直接的に関係しなくても、可能な限り時間を掛けて、可能な限り情報を集めて、慎重に判断した方が良い場合があるという事を忘れるべきではない。

 今日1日未明、ミャンマーではアウン・サン・スー・チー国家顧問やウィン・ミン大統領らが軍によって連行された。政権与党である国民民主連盟(NLD)の幹部らも逮捕・連行されている模様。国軍系の放送局ミャワディ・テレビは、ミャンマー全土に1年間の非常事態宣言が発令され、国軍のミン・アウン・フライン総司令官が全権を掌握したと報じているのだそうな。普通に考えればクーデターが起きたと考えるべきだろう。

 このクーデターの発端は、昨年の11月の総選挙にある。この総選挙で与党NLDは地滑り的な大勝利をした、とミャンマーの選挙管理委員会は発表したのだが、これにより大きく議席を減らした最大野党・連邦団結発展党(USDP)の後ろ盾である国軍は選挙に不正があったと反発していた。

 そもそもかつてミャンマーは何十年も軍事政権が続き、民主化を求める声は国民の中に高く、アウン・サン・スー・チー氏はその希望の象徴であった。今回の総選挙の大勝で、彼女の大統領就任が現実味を帯びてきたと思われた矢先の今回のクーデターである。今日1日からは国会が召集される予定であったのだが、軍としては何としてもこれを阻止したかったのだろう。

 このクーデターの報を受けて、欧米を中心とした世界各国は非難を強めている。日本でも加藤官房長官が、

「ミャンマーにおいては、昨年11月に実施された総選挙の有効性に疑義を呈する国軍と、政府および選挙管理委員会との間で緊張感が高まる状況にあったと承知している。わが国は民主的プロセスにのっとり、当事者が対話を通じて平和裏に問題を解決することが重要と考えており、これまでも関係者に対してその旨を働きかけてきた」(NHK)

 と一応反応は示した。今後はミャンマーに対する支援の凍結など具体的な行動が求められるだろう。

 ただこのクーデター騒ぎについてネット上の反応をのぞき見してみると、何とも脊髄反射的としか言えない言動を多々見かけた。クーデターをイコール「悪い事」と信じているのかも知れないが、「アメリカは軍事行動を起こすべきだ」みたいな意見も散見される。

 確かに今回のクーデターは、おそらくミャンマー国民の支持は得られていないだろう。要するに軍が自分たちの権益を守りたいがためだけのクーデターと考えても大きな間違いではあるまい。選挙に不正があったのかどうかは外から見ているだけではわからないが、仮にそれが事実だったとしても軍隊を動かすのはやり過ぎである。スー・チー国家顧問や大統領の一刻も早い解放を国際社会が望むのは当たり前だ。

 しかし、だからといって欧米に軍事行動を期待するのは、非常に危険な考えと言える。もちろんネットで「アメリカ軍は攻撃しろ」と書いたところで実際に攻撃が行われる訳ではない。無責任な言葉遊びに過ぎないのかも知れない。だがそれでも、そんな声が無視できないほど大きくなれば、アメリカの意思決定に何らかの影響を与える可能性が絶対にないと言い切れるほど世の中は単純ではない。そしてもしアメリカ軍がミャンマー軍を攻撃するような事態になれば、罪のないミャンマーの一般市民が大勢死亡する事になる。「悪即斬」はフィクションの世界でなら通じるが、現実に持ってくるのはリスクが高すぎるのだ。

 いままず国際社会がすべき事は、ミャンマーに対する援助・支援の停止や、ミャンマー国軍が海外に保有している資産の凍結などである。中国や北朝鮮などが裏から手を回そうとするだろうが、それを厳しく監視しなくてはならない。間違っても最初に取るべき行動が軍事力の行使ではないし、そうであってはならないのである。たとえ冗談でも、あまりに脊髄反射的に過ぎる言動は慎むべきだ。

 超大国アメリカが「戦争ならいつでもできるぞ」という姿勢を見せるのは大切である。「戦争なんてやる気は毛頭ない」という考えを見透かされるより遙かに有益と言えるだろう。だが、本当に戦争をしてしまったら元も子もないのだ。人間の死は回収できないコストである。迂闊に手を出して良いものでは決してない。

 ミャンマーに軍事行動を取って、イラクやアフガニスタンのようにならない保証はない。撤退までまた何十年もかかるかも知れない。その道をアメリカ人に取れと言えるほど、アメリカは悪い事をしているのだろうか。イラクやアフガニスタンからの現時点における米軍撤退には、虫けらは疑問を持つ。一度軍を出してしまえば、撤退のタイミングが非常に難しい。単純に「悪いヤツらをやっつけて終わり」にはどうしたってならないのだ。絶対にズルズルと後を引く。それが戦争である。

 とにかく日本を始めとする国際社会は、何とかして軍に拘束されている人々を解放に導き、ミャンマーの一層の民主化を進めなくてはなるまい。できるだけ慎重に、可能な限り軍事力を行使せずに。簡単な話ではないのだが、それしか取るべき道はないだろう。スー・チー氏が中国寄りの人物であるという事は、この際置いておいて。


 反体制活動家のナワリヌイ氏が拘束された事を切っ掛けにして、ロシアでは全国に反政府デモが拡大しているが、昨日31日に行われた大規模デモでは、全土でおよそ5000人が逮捕されたとBBCが報じている。

 隣国の国民として気になるのは、これでプーチン政権が終了するのかであるが、さすがにそう上手くは行かないのではないか。時代は転換点を迎えているのかも知れないものの、そうすんなり権力の交替は起きないだろう。まだ一波乱二波乱あると思うところ。


 日米豪印の4カ国が、主に中国への包囲網として協力する枠組み「クアッド」にイギリスが参加する意向であると、イギリスの新聞デーリー・テレグラフなどが報じているらしい。イギリスはTPPにも参加を表明しているし、日本もこれを積極的に支援している模様。いわゆる「ファイブ・アイズ」に日本が参加するのではという報道があったときも、イギリスは比較的好意的だったしな、日本とイギリスの間に何らかの繋がりがあると見て良いのではないか。それがボリス・ジョンソン首相の意向によるものなのか、それとも別のところから来ているのかは知らないが。

 いまイギリスは香港を巡って中国と対立している。それと無関係な動きではないのだろう。


 先般の週刊紙報道――深夜の銀座のクラブでうんたらかんたら、である――で、公明党の遠山清彦氏が1日議員辞職を願い出た。また自民党の松本純、大塚高司、田野瀬太道の3氏が、同様の問題で離党の意向を固めたと報じられた。自民党の3人は辞めないのか。いささかみっともないな、という印象を持つところ。て言うか、あの問題って3人も関わってたのかよ。そっちの方でビックリだわ。


 本日はこんなところで。昨日も3400文字ほど書けた。調子が良い、と言うよりは内容的に書きやすい部分であるため。人間同士がゴチャゴチャ言い合っているシーンは簡単だ。ロボットを格闘させるよりはよほど。でもあまり長く続けると読んでてダレるからな。なるべく短めにまとめたい。

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