第298話 2020/8/7 統治とか

 本日も6時半起き。これが明日まで続いてくれれば良いのだが、そう上手くは行かないかも知れない。明日の状態が読めない体というのも厄介な。

 

 人間は常に矛盾が内在した生物である。たとえば自由と隷属は相反するものであるかのように見えるが、実際は表裏一体で同じ場所に存在する。本当に自由が何より大事なら、人間社会の外に出て一人で生活すれば良いはずなのに、それを求める者はほとんどいない。みな誰か統治者の存在する国家というシステムに隷属したがる。それでいながら「より自由を与えてくれる、より良い統治者」という矛盾した存在を求めるのだ。

 人間は社会を渇望し、常に支配者を求める。平等の理想に燃えていたはずの共産主義者が事実上の専制君主を生み出している現実から見ても、それは間違いないのだろう。良い支配者の統治を受ければ、自分たちは幸せになれると人は思う。それはある面において事実であるものの、責任転嫁の側面もある。

「天は自ら助くる者を助く」ではないが、最終的には自分が動かなければ自身の利益は確定されない。だがそれは大変だし面倒臭い。支配者にすべての責任を押しつけてしまえば話は簡単なのだ。言い換えれば、支配者の側に回りたいと思う者は、すべての責任を押しつけられる覚悟を求められる。「私だって一生懸命やってるんだ」と言い訳をするようなタイプは、支配者側には向いていないのだろう。

 さて硝酸アンモニウムの大爆発によって大きな被害が生じたレバノンの首都ベイルートであるが、6日フランスのマクロン大統領が現地入りした。フランスはレバノンの旧宗主国であるそうだが、それにしてもフットワーク軽いな。ちなみにこの時点において、レバノンの政治家は誰も現地に入っていなかったという報道もある。少なくとも首相や閣僚は来ていなかったようだ。それもあってかマクロン大統領の周囲には物凄い人だかりができ、みな口々にレバノン政府に対する不満を叫んだらしい。

 ある者は政府を「テロリスト」だと言い、ある者は「革命」を口にしたという。またある若者は大統領に対し、「ここ(レバノン)へ来て統治してください!」(AFP)と叫んだのだそうだ。これ、相当なものだろう。当たり前だがレバノンにだって保守思想や民族主義はあるはずだ。国民意識だってあるだろう。それがいかに旧宗主国とは言え、外国の元首に統治を願うなんて尋常ではない。市民のレバノン政府に対する不満は危険なレベルに達しているのではないか。

 ただ、だからといって、じゃあフランスがレバノンを支配すれば丸く収まるのかと言えば、まったくそんな事はない。単に不満の矛先がレバノン政府からフランス政府に移るだけである。フランス人も神ではない。完璧な統治などできるはずはないのだ。「いまのレバノン政府よりはマシ」と当初は思っても、時間が経てば「何でフランス人に偉そうにされなければならないのか」という声が必ず出て来る。やがてそれは民族主義に火を着け、独立闘争へと発展するだろう。そんな見えている地雷を踏むほどフランスも馬鹿ではないはずだ。

 フランスは当面、レバノンに対する国際的な救援活動を主導し、調整役を買って出るそうだ。支配はしないが影響力を行使できる立場は確保する。そして責任はレバノン政府に取らせ、賞賛は自分たちが受けるのだ。こういうところは本当に上手いなと思わせられるところ。


 アメリカの銃規制が進まない最大の元凶にして、「銃を持っていれば」ネタの宝庫と言えば全米ライフル協会(NRA)であるが、ニューヨーク州は6日、金融詐欺などの不正行為に及んだ容疑でNRAの解体を目的とした訴訟を起こした。

 まず予備知識として理解しておくべきは、アメリカは事実上共和党と民主党の二大政党制であり、ニューヨーク州のクオモ知事は民主党員、そしてNRAは共和党の大口スポンサーの一つという事である。単純にNRAが悪い事をしているから裁判を起こした、という話ではない。

 NRAはトランプ大統領とも関係が深く、そして今年の秋には大統領選挙がある。当然NRAはトランプ大統領を支援する。この時期に裁判を起こした事と、それが無関係であるはずもない。おそらく裁判に勝てるかどうかは、それほど大きな意味はないのではないか。要は大統領選挙の期間中、NRAの動きを止められれば良いのだ。

 とは言え、もしNRAが解体されるなどという事になれば、それはアメリカの歴史に残るであろう大事件だ。まあトランプ政権が何としても阻止するとは思うが、万に一つの展開に期待したいところ。


 短めだが、本日はこんなところで。昨日は『魔獣奉賛士』も『懐ソン英雄伝』も700文字ちょっと書けた。だったらどちらか一方に集中すれば1500文字書けたのかと言えば、そう簡単な話でもない。人間の脳みそというのは面倒臭いな。

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