第17話 2019/10/31 見る前に跳べとか

 本日は4時起き。とは言え、さすがにその時間から動くにも動けず、実際に動き始めたのは6時を過ぎてからだ。眠い。しかし体調は悪くない。天気も良いからな。今日は一日長いぞ。何をしよう。


 アニメ映画『ザブングルグラフィティ』の主題歌『GET IT !』の歌詞の中に、こういう一節がある。

「Only Run an'Run 見る前に Never born to love 走るのさ」

「走る」はザブングルという作品の一貫したテーマなのだが、「見る前に」が付くのは20世紀の詩人、ウィスタン・ヒュー・オーデンの詩のタイトル『見る前に跳べ(Leap Before You Look)』に由来する。そしてこの言葉は、英語のことわざ『Look Before You Leap』を改変したものである。意味としては当然「跳ぶ前に見ろ」であり、日本語のことわざで同じ意味を探すなら、『転ばぬ先の杖』『備えあれば憂いなし』などとなる。

 頭と尻の単語を入れ替えるだけで随分と趣が変わるものであるな。転ばぬ先の杖と言われると、いかにもノンビリとした、田舎の風景の中で歩く老人をイメージしてしまう。一方、見る前に跳べと言われると、非常にサスペンスチックである。

 ちなみにマルクス主義でおなじみのカール・マルクスが、物と貨幣の交換を「命懸けの跳躍(salto mortale)」と言い表しているのだけれど、ちょっと近いものを感じる。もっとも、命懸けの跳躍は直訳であり、一般的には「とんぼ返り」という意味であるらしいが。

 閑話休題。跳ぶ前に見るべきか、見る前に跳ぶべきか、それは結局置かれた状況によるのだろうけれど、まず商売においてはほとんどの場合、跳ぶ前に見た方が良い。可能な限りじっくり見た方が良いように思う。

 コンビニエンスストア大手のセブンイレブンでは、昨日30日から北海道と四国の店舗で、販売期限まで残り3~5時間となった弁当やおにぎり、サンドイッチなどを値引きする試みを開始した。年末まで実験し、来年春には全国展開を目指すらしい。と言っても値引き額は5%、しかもnanacoポイント付与で対応するという。つまりその場の支払金額は変わらず、ポイントがもらえるだけだ。

 いまは試験的に行っている期間中である。跳ぶ前に見ようとしているのだ。それはわかる。わかるのだが、あまりに浮世離れしていないか。5%って。しかもnanaco使ってない人には恩恵なしって。確かに経営に大きな影響を与えかねない試みなのかも知れないが、もうちょっと思い切った方が良かったように思う。

 て言うか、スーパーマーケットなどが販売期限切れ間近の商品をどうしているのか、参考にしたりしていないのか。跳ぶ前に見るのも大事だが、それよりもっと前に見ておくべきモノがあったんじゃないのか。これで食品ロスの抑制云々と口にするのは、さすがにどうかと思う。

 保守的な事を悪いと言うつもりはまったくないが、いまのセブンイレブンの経営を眺めていると、ほんの僅かの変化にビクビク怯えている気がしてならない。跳ぶ前に見る事は必要だ。しかし、見るべきところをちゃんと見たら、その後は思い切って跳ばねば意味がないだろう。そんなんだから商品を小さくして利益率を上げる事にばかり腐心してしまうのではないか。

 セブンイレブンはコンビニ業界のトップランナーである。しかしこんなところで足踏みを続けていれば、後続に抜かれる日も近い気がする。ザブングルグラフィティのキャッチコピーは「君は走るか? 俺たちゃ走る!」であったが、果たしてセブンイレブンには、この先もトップを走るつもりがあるのだろうか。じっくりと見たいところ。


 29日にタイの王室が発表したところによると、ワチラロンコン国王が寝室警備などの職員を4名解雇したらしい。不貞や暴力行為があった事を理由とし、軍における称号や勲章を剥奪したそうだ。

 タイの国王といえばつい先日、事実上の側室として「配偶者」の称号を与えられていた女性から称号を剥奪し、王宮から追放したばかりである。

 CNNの報道によれば、これら一連の粛正についてタイ国内の専門家は、「国王が王室や、さらには国全体を中央集権的に支配しようとする意思の表れ」と話しているとのこと。

 不敬罪が現役バリバリのタイ国内に居てこんな事を言うなんて、正直なところ大丈夫なのかと心配になるが、タイから遠く離れた日本でのんびり暮らす虫けらが好き勝手な事を言わせてもらえるなら、単に手に入った力が嬉しくて、使いたくて仕方ないのではないか。非常にシンプルな、単純な、もっと言えば短絡的で幼稚な発想に基づく行動だと思う。

 軍政から国王による中央集権的支配への移行、などという難しい事は考えていない気がする。単に「この国の物はすべて俺の物」という意識なのだろう。アフリカや北朝鮮を見て、この21世紀の現代に、血統だけを根拠に専制君主が成立すると思ってしまったのかも知れない。日本に生まれて良かったと、つくづく思う次第。


 ウクライナのゾロテをGoogleマップで調べてみると、クリミア半島の東にある。クリミアはいまロシアに武力で強奪され、影響下にあるのだが、そこではウクライナ軍と、ロシアに支援された分離独立派が戦闘を続けている。そのゾロテから29日、ウクライナ軍と分離独立派の双方が撤退を開始した模様。

 5月に就任したウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアとの首脳会談を望んでおり、軍の撤退はその前提条件であったようだ。無論、これに対してウクライナ国内では反発がある。ロシアへの譲歩は事実上の降伏だと主張する声があるのだ。まあ、それは一面においては事実である。

 でもこれ、難しいな。ロシアの武力による領土強奪は、ウクライナとして認めたくないのは当たり前だ。だが、だったらどうすれば良い。ロシア相手に全面戦争をするのか。いかに落ち目とはいえ、ロシアはいまだに巨大な軍事国家である。ウクライナがどう頑張っても、最初から相手になどならない。

 EUやアメリカが加勢してくれるか。口喧嘩なら味方してくれるだろう。だが大規模な軍事衝突が起きたときに協力してくれるかと言えば、期待などまったくできないのである。ならば、たとえ己が身を切ってでも、和平を確実にするしかないのではないか。

 勇ましい事は誰でも言える。どっかの馬鹿議員ではないが、「戦争して取り返せ」と言うのは簡単だ。しかし現実として勝ち目がないのなら、それを避けるしかあるまい。ソ連を追い返したアフガニスタンのように、あるいはアメリカに勝ったベトナムのように、ゲリラ戦で勝利しろという者も居るかも知れないが、仮にそれができたところで、ウクライナは疲弊しきってしまう。国民に強いる犠牲も莫大だ。普通に考えて無理がありすぎる。

 個人的には、ゼレンスキー大統領は評価していない。信用できるタイプの人間ではない気がしている。芯を感じないのだ。だが、今回ばかりは仕方ないのではないだろうか。誰かがこの嫌われ役をやるしかない。そこに自ら進んで手を上げた事については、国民も褒めてやって良いのではと考える次第。


 チリのピニェラ大統領は30日、11月にチリで行われる予定だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議と、同じく12月に行われる予定だった国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)の開催を断念すると発表した。反政府デモや暴動の激化がその理由らしい。

 まあ、現状でチリの軍や警察に、外国の要人の安全を守る余裕などないだろうからな。現実的な判断と言えるのではないか。ただそれは12月まで反政府デモが終息しないという判断だとも言えるし、大統領に辞任するつもりはまったくないという事でもある。デモ側の疲弊するのを待つ作戦なのかも知れない。ちょっと姑息な気がしないでもないところ。


 午前4時過ぎにネットスーパーで買物をしたのだが、野菜類をすっかり忘れていた。近所のスーパーで買ってくるかな。外に出るのが嫌でネットスーパーを利用したのに、台無しである。まあ、行って帰って15分くらいだ。諦めるか。

『キリン解剖記』が面白すぎたせいか、何を読んでも面白くない。これは困った。ちょっとインターバルを入れた方が良いかも知れない。とは言え、代わりに何をしたものだろう。Amazonプライムで映画か海外ドラマでも観ようかね。見たい物が思いつかない訳でもないしな。

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