第4話 文化の日

 十一月になった。そろそろ冬支度をしてもいい時期だろうか。

 そう思っていた頃、一年生の女子生徒に告白された。

 確か「新入生、№3」とか噂されていた子だった気がする。

 女の子、って感じの女の子だ。天然パーマと噂のくりくりの髪の毛にうるうるした瞳。

 フツーの高二男子ならコロッと行ってしまうだろう。

 しかし自分はフツーの高二男子ではない。

 丁重にお断りをした。


 涙を浮かべて彼女は立ち去った。

 よくある【友人が付き添って待っている】ではなかった。

 フツーの高二男子、ではない自分への想い。きっと誰にも言えなかったのだろう。


    ○


 文化の日も近いので放課後、図書室に来た。

 月に一度位来るのだが、秋の図書室は人が多い気がする。

 春に新入生の評価でそわそわして夏は猛暑がやってくる。気候も落ち着いた今の時期に余裕が出来るのだろうか。


 何とか大賞を受賞した小説でもチェックしようか。

 近代小説コーナーに来た。本棚の本が何冊か借りられていて、倒れている本や逆さになっている本がある。

 さっき朝日未華子が図書室に入ってきたのが見えたので、わざとそのままにしておいた。

 朝日未華子が近代小説コーナーをチェックして通り過ぎた後、こっそりと戻ってみた。

 本棚の倒れた本達は、姿勢が綺麗に直っていた。


 瀬戸友里はそもそも図書室に来るタイプではない。


    ○


 三連休前の金曜日は、テンションがマックスになる。

 すぐに帰るのも勿体もったいない気がして学校近くのカフェに寄る事にした。


 さすがにみんな考える事は一緒のようでカフェはほぼ満席だった。

 カウンターの一番端が空いていたので自分はそこに座った。

 学校近くという事でここのカフェにはうちの生徒がよく来ている。

 今日はタイミングが良い、瀬戸友里と朝日未華子も来ていた。


 自分のすぐ後ろのテーブルに朝日未華子グループがいる。

 通路を挟み、その反対側に瀬戸友里グループがいた。

 中々良いポジションだ。

 耳をすませば朝日未華子グループの声が聞こえるし、カウンター横にある雑誌ラックに向かう時に瀬戸友里グループの声が聞こえる。


 瀬戸友里グループはぺちゃくちゃと会話が尽きない様子だ。教室でもあれだけ喋っているのに全然足りないのだろう。

 彼女達が注文している品はラテやパフェなど、インスタ映えする飲食物が多かった。


 朝日未華子は注文の品を運んできた店員に「ありがとうございます」と言っていた。

 朝日未華子は、紅茶とマカロンを注文していた。

「今日の夕食は煮込みハンバーグだから控えめにしておく」

 そう言っていた。



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