第3話 行い

 遠足も中間テストも終わった。

 これまでに二人の外見を観察して思った事を簡潔にまとめる。


 瀬戸友里は自分を磨いているのが解る。

 恐らく毎日鏡の前で「どうやったら綺麗になれるだろう」と思いながらメイク技術を身につけているはずだ。

 スカート丈も短い。スカートが短いという事は足を多く見られるという事だ。

 つまりは手入れが必要だ。

 あのアイドルが言っていたような人物がこんなに近くにいた。


 朝日未華子は自らの核がすでに決まっているような印象を受けた。

 流行に左右されない髪型とファッションに迷いは見えなかった。

 けれども本人が何を考えているのかは、解りづらい。


    〇


 次は、行いを見てみよう。


 休み時間、教室の通路に何かが落ちている。プリントのようだ。

 朝日未華子は明らかに視線に入っているだろうが素通りをした。


 次に瀬戸友里がプリントを見つけた。

「さっき配ったプリントが落ちてるよ、誰―?」

 瀬戸友里がクラス内を見渡して言った。

 手を上げる者がいなかった。瀬戸友里は拾得しゅうとくしたプリントをクラス後部に設置している【落とし物入れ】に入れていた。


 外見と共に中身も美しいとはこの事か。



 次の日の休み時間、女子トイレから出てきた朝日未華子がハンカチをポケットにしまっていた。


 続いて出てきた瀬戸友里は両手をぶらぶらさせていた。

「ハンカチ貸そうか?」

 瀬戸友里は隣の友人に聞かれて、ハンカチを借りていた。


 自分にはあれが理解出来ない。手を洗った後にかず、水をらしたままにする行為だ。

 あれは当然トイレのドアノブが汚れるし、その後に触ったらとても嫌だ。

 ハンカチの貸し借りも不衛生な印象があって好きじゃない。


「何だよ相馬、瀬戸友里の事見つめちゃって~瀬戸と連れおトイレしたいのかよ」

 クラス一のお調子者が声をかけてきたので、微笑んでおいてその場を立ち去った。


「あいつ、妙な色気あるよな……」

 遠くでお調子者の声が聞こえた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る