第2話 遠足

 次は、制服の着こなしを見比べてみる。


 瀬戸友里のスカート丈はひざ上でミニにしている。現在十月、瀬戸友里だけではなく、他のギャルっぽい女子生徒も黒のストッキングを着用している。

 足のラインを強調しているのか、それとも寒いのか。

 友人との会話を聞いたところ、スカートの下にガードルを着用しているらしい。

 体育用のハーフパンツだとミニにしたスカートからはみ出るらしい。

 

 瀬戸友里は、普段からスカートをおさえている仕草しぐさをよく見る。

「なら短いスカート履かなきゃいいのに」

 そう友人に言われていた。

「お洒落しゃれは我慢よ」

 瀬戸友里は、そう言い返していた。

 なるほど、窮屈きゅうくつな精神が良いのか。一種のアートなのだろうか。


 朝日未華子のスカートはひざ丈で、ハイソックスを着用している。ハイソックスの影響か、足が長く見える。

 朝日未華子はスカートの下に体育用のハーフパンツを着用している。これも友人との会話を聞いて知った情報だ。

「冬は厚いレギンスで来ようかな、ほぼズボンのやつ」

 朝日未華子が友人と話していた。


 朝日未華子は実用派だな。最近のレギンスはデザイン性があるし、どんどん便利に塗り替えられていると聞く。

 不便なままにしないファッション界と窮屈が同居するファッション。この間がたまらないのだろうか。


「相馬、教科書貸して」隣のクラスの友人、詩織しおりが来た。もう休み時間になっていたのか。

 詩織は瀬戸友里とはジャンルの違う美少女で、男子生徒の目はこちらに釘付くぎづけだ。

 教科書を借りて詩織はすぐに去って行った。

「相馬~その権利譲ってくれ~」クラス一のお調子者が悲痛な表情で演技をしている。


    〇


 秋の学校行事、遠足がある。

 去年は肩出しやミュールはNGと決められていて、女子からブーイングが出ていた。

 今年のクラス担任は、若くてファッション好きの先生だ。

「今回の遠足の目的は親交なので、服装は自由にする」と言っていた。

 女子生徒が異様にそわそわしている。

 呼応するように男子生徒も期待という測定機能が発動している。


 瀬戸友里ひきいるギャルチームは早速盛り上がっている。

「何着てくー?」「おそろにしちゃう?」「ちょっとだりー笑」などとたのしそうだ。


 朝日未華子のチームは「未華子はお洒落だもんね」「そんな事ないよ」と静かに盛り上がっていた。



 遠足当日は快晴で秋風が少し肌寒くて、まさに秋の気候だった。

 瀬戸友里のファッションは予想通りだった。女子がよく着ている肩の所だけ少し開いているブラウスに、ミニスカート。長いカーディガンを羽織はおり足元はロングブーツを履いていた。

 男子生徒からは「おー!!」という期待通りの声が上がっていた。


 朝日未華子はシンプルな白黒コーディネイトだった。ジャストサイズの白いブラウスに風船みたいに膨らんだ黒いスカートを履いていた。雑誌に載っている人みたいだ。

 朝日未華子のファッションは確実に周りとは違う空気を放っていた。男子生徒は目を見張り、女子生徒からは「かわいー!」の連呼だった。

 意外な事にギャルチームからもお洒落だと称賛されていた。


 男と女でファッションの感覚も違うものなのだと実感した。



 昼食タイムは敷物しきものを敷き、グループで過ごす。

 ギャルチームはひざけを持参している、恐らくスカートが短いので寒いのだろう。

 ひざ掛けの上に弁当箱を乗せて落とさないように、立ち上がる時もスカートの中が見えないように動いているのが解る。


 朝日未華子は中々自由に過ごしていた。風船みたいに膨らんだスカートかと思ったらハーフパンツのような構造のズボンだったらしく、同じ姿勢は疲れると座り方を何度も変えていた。

 どんな姿勢で座っていてもシルエットが綺麗に決まっていた。


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