第6話:作品のイメージを具体化し、粗筋と導入部分を考える

 ヒロインと主人公の人物像を考える過程で、作品のイメージがなんとなく湧いてきたと思います。前回まで書きつらねてきたことを踏まえ、そのイメージを具体化していきます。


 舞台背景や世界観は現代日本としますので省略します。


 まずヒロインと主人公の人物像をおさらいしましょう。


――ヒロインは自分がブスだと自覚していて、モテないと思って自信を失い、恋愛も諦めている。しかし仕事には一生懸命で、たまにドキッとするようなギャップを見せてくれる。仕事柄歩くことが多く、体に余計な贅肉は少ない。肌に艶があって健康的。体型は安産型で彼女はマイナスポイントだと思っているが、実はエロさを醸し出している。主人公と関わりあううちに彼に惹かれていき、一途な面を見せる。主人公は彼女が傍にいるとリラックスできる。


――主人公は少々危険な香りがするオラオラ系の霊能者。性格は少しガサツで少々デリカシーに欠けるが、正義感は強く、面倒見がいい。一本芯が通った性格をしている。最初はヒロインのことをなんとも思っていないが、なぜか彼女の近くにいると気が楽になる。次第に彼女の良さ(エロさ含む)に気付いていく。


 みたいな感じですね。


 イベントのヒントになる部分もありました。


――ヒロインは自分の容姿にコンプレックスを抱いていて、恋愛からは逃げ腰になっている。そこを突いて、カッコいい主人公からアタックを受ける。そうするとアタフタして彼女の可愛いところが見れるかもしれない。


 なんかここまで書いてみると恋愛小説の構想練ってるみたいですね。でもいいんです。べつに恋愛要素があったっていいじゃないですか。それで人間関係が上手く表現できれば。


 ということは置いといて、その他の部分を考えていきましょう。


――主人公は事件を解決して誰かを助けなければなりません。助けるのはやはりヒロインがいいでしょう。


――事件は『不思議な事件』です。これにミステリー要素を絡めて解いていく。ただし、編集さんの要望である怪異などの不思議要素を事件に絡めようとすると、ミステリーとは真っ向から喧嘩することになります。ノックスの十戒に正面から喧嘩売ってます。


――ノックスの十戒に喧嘩売ってミステリーっぽく見せなければなりません。


――主人公は特殊能力者にします。それは犯人が『不思議な事件』を起こすからです。特殊能力者VS特殊能力者ならば不公平感はありません。


 みたいな文章を以前に書きました。


 また、募集要項の編集部員の要望から、


――とある職場を舞台にした不思議な事件が起こる。


――職場の人間関係が事件の動機になる。または、事件に巻き込まれる人たちの人間関係に焦点を当てる。


――事件には『怪異』や『ホラー』などの不思議な要素が出てくる。


――『ミステリー』要素を盛り込みながら事件を解決する。


 というストーリーの大筋みたいなものをイメージしました。


 以上を踏まえてストーリーのイメージを粗筋として文章にし、具体化してみましょう。ストーリーの前半部分だけその一例を挙げます。


『中学一年の秋、ふとしたことから霊界に迷い込んでしまった斉藤二郎。彼は霊界『幽世(かくりよ)』をさまよううちに霊的な力と強烈な雄フェロモンを身につける。幽世で師匠となる陰陽術師の霊と出会い、彼の下で修行をして霊力が増したことで、自力で現実『現世(うつしよ)』に戻れた。このとき主人公は二十二歳になっていた。


 二郎は中学も卒業していない。だから現世に戻っても定職には就けず、霊能力を使ったインチキ手品(マジック)の営業で細々と食つないでいた。


 大手芸能事務所で働く和泉由沙は、上司にTV受けしそうなマジシャンを探してこいと命じられた。なかなか見つからず諦めかけていた時に、寂れた遊園地のマジックショーに出演していた斉藤二郎という男と出会う。野性的で引き締まった顔立ちは申し分なし。少し危険な香りがする彼は十分にTV受けしそうだった。


 由沙にスカウトされたことがきっかけで二郎は芸能界に関わるようになる。


 あるときマジシャンとしてTV番組に出演していた二郎は、トークの中で霊視ができるという事が話題になり、一年前に行方不明になったアイドルの霊視をせがまれる。二郎は面倒なことは御免だと上手く逃げたが、由沙がこの話に食いつき、TV企画として売り込み、実現することになった。


 二郎が行方不明のアイドルの少女を霊視してみると、その少女が死亡していることが分かった。二郎は遺体がある場所も霊視で突き止める』


 こんな感じで事件が起こるまでの具体的な粗筋ができました。これ以上はネタバレが過ぎるので公開は控えます。なんか、現代ファンタジーというよりもライトホラーのほうがしっくりくるかも。


 まぁ、それは置いておくとして、この粗筋からプロットを組み、いよいよ執筆に取り掛かるわけですが、一つ注意事項があります。それはこの粗筋のどこからプロットを組み始めるのかということです。


 つまり、物語の導入。小説において最も重要な部分です。


 馬鹿正直に幽世かくりよに迷い込んだところから、小説本文を書く必要なんてないですよね。読者を惹きつけるインパクトがある部分から物語をはじめるべきです。


 上の粗筋を例にとると、作品の導入部はアイドルの遺体が発見されたところが無難でしょうか。


 それ以前の粗筋は、作品の背景として活用すればストーリーに深みが出るかもしれません。


 ということで今回はココまで。次回はプロットについてですが、ネタバレはしたくないので一般的なお話になると思います。

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