SS3 九重院(後編:九重久遠)

『あらすじ』

九重院を訪問

紫苑、そして咲夜の出身

少女が乱入

 ***


「お前誰だ! お姉ちゃん先生を泣かしたのか」


 俺達の対談の席に乱入して来たのは、制服姿の少女。

 中学生だろうか。

 ショートカットに、花形のワンポイントのあるヘアピン。

 おしゃれの方向性は会長や目の前の千春さんと同じで、素材をそのまま伸ばすタイプ。

 そして思い込みが激しいのか、俺の方をにらみつけて、敵対心をむき出しにしている。

  

久遠くおん違うわ。もう大丈夫よ」

  

 お姉ちゃん先生として慕われている千春さんは、俺の実母の九重咲夜がすでに故人であることを聞かされて、表情を暗くしていたが、1度顔を伏せるとすぐに平静を装った。

 大人としての対応。

 しかし乱入者は俺に対する鋭い視線を飛ばすのを止めようとしない。

 そんな空気を和ませるためか、それとも読まずしてか、行動を起こすのは会長。

  

「久遠じゃないの。元気していた~」

  

 会長は少女を抱きしめると、その頭をしっかり固定して頭を撫でまわす。

 少女がじたばたと暴れるが、会長のお胸様が揺れるだけで逃げ出すことはできない。

 最初は逆立っていた久遠と呼ばれる少女だが、徐々にほどけてフニャフニャになっていく。

 まるで猫、というか小さな会長様という印象が俺の頭をぎった。


「お姉ちゃん先生は用事があるから、お外に行こうか」


 慌ただしかった少女だが、会長の言葉には素直に従い自分の足で歩きだす。


「ほら、後輩君も行くわよ」


 咲夜についてまだ聞きたいことがあるが、今は千春さんが落ち着くまでそっとしておくか。


 俺も異論を唱えることなく、彼女の指示に従って外に出る。

 また戻って来るつもりなので、荷物はそのままにして置いておく。


 さてと、答えてくれるかは分からないが、とりあえず先に確認すべきことがある。

  

「会長は事情をご存知だったから、俺をここに連れて来たのですか?」

「……いいえ。うちの総長からの指示よ」


 総長というと、第5公社のトップ。

 俺が知る第5の正規メンバーは、生徒会2年生の3人だけ。

 魔法公社の内部監査という組織の性質上、他の面々は明かされていないどころか、規模すら知らされていない。  


 どうして第5のリーダーが九重咲夜と俺のことを知っているのか。

 もちろんサブライセンスの登録をした際に、身辺調査はされているはず。

 俺が把握している限りで、咲夜と俺の血縁関係を知っているのは、育ての親のローズ、そしてDNA鑑定を指示した叔父の高宮時雨。

 高宮家の中でも当主の直系しか知らされていない秘密だし、ステイツの上司のフレイさんにだって報告していない。

 しかし時雨叔父さんによると、両親達には他にも交流が深い魔法使いが複数人いたそうだ。

 もしかしたら総長は当時からの関係者なのかもしれない。

  

「第5の総長とは、どういった人物なのですか?」

「うーん……脳筋のクソジジイかな。後輩君も近いうちに直接会えると思うわ」

  

 いつものことだが、相変わらず答えになっていない。

 脳筋のご老体と言われると、東高の校長が真っ先に頭に浮かんでしまった。

 会長があからさまな悪口を言うのは珍しいことなので、一筋縄ではいかない人物なことは確かだ。


 そのうちというのが、どれくらい先なのかは分からない。

 後4カ月もすれば、年に1度のライセンス試験がある。

 そうすれば総長と顔を合わせることになるはず。

 それとも彼女の言う『近いうち』とは、もっと手前のことだろうか。 


「紫苑お姉ちゃん。この男は誰なの? 恋人ってことはないよね」

「何を言っているの。お姉ちゃんだって、女子高生なんだから男の子を連れてきたら、彼氏に決まっているでしょ」


「堂々と嘘を吐くな」


 会長の頭部に軽いチョップを振り降ろす。


「いてっ。後輩君、もう少し引っ張ってくれてもいいんじゃないの。まったく付き合い悪いなぁ。それに私の彼氏役をできるなんて光栄でしょ」


 どうして俺がそんな茶番に付き合わなければならない。

 そして光栄とは決して思わない。 


「イチャイチャするなぁ! あんたみたいな男が紫苑お姉ちゃんの彼氏だなんて。私は認めないからー!」  


 あのやり取りでどうしてそんな誤解できるのか分からないが、制服姿の少女は走っていなくなってしまった。

 2度も『あんた』呼ばわりされたが、今回ばかりは俺は何も悪くないぞ。

  

 ***

  

 学園では恐れられている絶対強者が、無邪気に子供達と遊んでいる。

 沙耶ちゃんにはなかなか懐かれなかった彼女だが、ここではしっかりと馴染んでいる。 


 俺に対してお姉さんることのある会長様だが、実際の振る舞いは大きくかけ離れている。

 しかし子供達の相手をしている姿を見てしまうと、彼女自身は冗談ではなく、あながち本気だったのかもしれない。

 小さい子供の相手など、俺にはできない芸当。


 そして今回のトラブルメーカーは会長様ではない。


「おい。私と勝負しろ!」

  

 たしか久遠だったか。

 先ほど消えていった制服姿の少女がスポーツウェアに着替えて戻ってきた。


 勝負と言われても、足の速さとかか。

 運動系ならば、年の違いも、性別の違いも大きな差になる。


「後輩君。久遠は今年の4月に中学の魔法科に編入してから、3カ月でもうトップの成績よ。来年には東高に受験する予定」


 この業界では、実力と年齢は必ずしも比例しない。

 天才と呼ばれる連中の多くは、誰に教わる訳でもなく、突如として才能に目覚める。

 魔法使いを志して1年に満たなくても、甘く見るつもりはない。


 久遠という少女からは、それほど大きな魔力は感じられない。

 会長のように隠しているのか。

 それとも俺のように特殊な能力なのか。

  

「久遠が頑張っているのは、お姉ちゃんだってちゃんと分かっているわ。だけど私のお供の後輩君とでは、勝負にならないからしなさい」


 彼氏の次はお供か。

 大っぴらに護衛を名乗っていないので、似たようなものか。


 会長は俺の手の内の多くを知っている。

 そんな彼女が勝負にならないと言うならば、その見立ては正しいのだろう。

 どちらにせよ、わざわざ相手するつもりはない。


「紫苑お姉ちゃんは黙っていて。私が自分で確かめるから。さぁ、試合をしましょ。精密射撃でもクレー射撃でもどっちでもいいわ」


 会って自己紹介すらまともにしていないのに試合を申し込むなんて、どっかの誰かさんと同じだな。

 しかし俺には彼女の提示した試合条件のどちらも受けることができない。


 東高では、ランキング戦をはじめとして対人の戦闘訓練を頻繁に行っているが、余所ではあまり馴染みがない。

 ニホンだけでなく、ほとんどの国で公共の場での魔法の使用は法律で制限されている。

 そして私的な場だとしても、人に向かって攻撃魔法を放つことは禁止されている。

 もちろんライセンス持ちの魔法使いが正当な理由で使用するならば問題ない。

 例外が適応されるのは、東西の魔法高校、高宮や草薙のような魔法結社などの魔法公社の関連機関。


 そのため魔法科と言っても、攻撃魔法の訓練は的に向かって撃つだけ。 

 残念ながら俺が的を狙うならば、リボルバーやライフルを使うことになる。

 魔法銃は別として、火薬式の銃器は完全に銃刀法に抵触する。

 俺が持つ遠距離攻撃魔法は、霊峰で見せたファイアボールだけなことは、会長だって分かっている。

 だから俺は余計なことを口にせず彼女に任せる。 


「まったく。久遠は言い出したら他人の忠告を聞かないのだから。一体全体誰に似たのかしら」


 どう考えても会長だろ。


「後輩君、悪いけど相手してくれるかな。久遠、もし競うならば10カウントダウン制の一本勝負よ。東高に入学したら、それ以外での勝負は認められないわ」


 一応軌道修正できてはいるが、勝負する流れには変わりない。

 普段から暴力に訴える傾向のある彼女に、調停を任せたのが間違いだった。


 会長の提案に対して、久遠は物怖じせずにやる気を見せている。

 俺が何を口にしたところで、矛を収めることはなさそうだ。


「私が立会人をするから存分に暴れなさい」

「紫苑お姉ちゃんは私が守る!」


  一応俺は護衛なのだがな。


 ストレッチをしながら体をほぐす久遠に対して、俺はジャケットを脱ぐことすらしない。

 傍からは舐めているように見えるかもしれないが、これが普段の戦闘装束しょうぞく

 とは言え、隠し持っている武器を使うつもりはない。  


 ちなみに精霊との戦いで暴走した“魔法狩り”はとりあえず収まったが、未だに黒い魔法式が右腕に浮かび上がったまま。

 精霊殺しの短剣を刺した傷は治っているが、毎日包帯やテーピングを巻いている。

 さらに長袖を着て魔法式を隠している。

  

 第5の副長が見届け人になるならば私闘が許されるのかは、俺には分からないが、あまり野暮なことは口にしない。

 どちらにせよ俺の方から攻撃するつもりはないので、大事には至らないだろう。


「いつでもいいぞ」


 軽く腕を上げた俺は待ちの姿勢を宣言した。


「中学生だからって、舐めるな!」


 俺が選んだ左右対称の構えは攻撃に転じ難いが、防御に特化している。

 戦いに消極的な姿勢だが、俺の能力との相性は悪くなく、実戦でも好んでよく使う。

 それを舐めていると断じた久遠の観察眼は甘い。

 せめてカウンター戦法の警戒くらいできていなければ話にならない。


 魔法使いの中には、どんな相手に対しても自分の得意で挑むタイプと、豊富な魔法を準備して相手によって攻略法を変えるタイプがいる。

 後者はもちろんながら、前者だとしても敵の手札を想像することは戦いを有利に運ぶのに必要だし、戦わないという選択も考慮する材料になる。


 しかし気が早いのも会長に似たのか、久遠もせっかく与えられた時間を有効に使うことなく、いきなり勝負を仕掛ける。


 久遠が詠唱に入る。

 声が出ていなくても、波長が切り替わったことで分かる。

 頭の中で呪文を用意する暗詠唱は、東高でも会得者は数えるほどしかいない。

 しかしここまでせっかく隠せていた久遠の魔力が膨れ上がり漏れている。

 発動ギリギリまで魔力の操作を隠すことができていない。

  

 まぁ、俺からしてみればたとえ魔力に変化がなくても、相手の挙動の変化で攻撃のタイミングを読むことができる。

 これができないとコンマ数秒の駆け引きで勝つことができない。


 直感を頼りにバックステップする。

 余程の魔法でなければ吸収できるが、あえて回避を選択した。

 わざわざ手の内をさらす必要はない。


 直前まで俺がいた足元から土の杭が飛び出る。

 続けざまに空から大気の水を凍らせた氷柱つららが降ってくる。

 氷柱は杭のすぐ傍に落ちる。


 別属性の二重詠唱。

 しかも両方中級クラス。

 想定以上の強力な魔法だったが、当たらなければ意味がない。


 下に注意を引きつけて、2手目は上というのは良く使われる常套手段。

 しかしタイミングが早すぎるし、俺のステップに対して氷柱の軌道を修正できていない。

 試合前の口振りでは、彼女は的に向かっての訓練しかしたことがなく、対人戦は初めてのようだ。

 この辺りが限界だろうか。


 それでも久遠はまだ諦めない。

 じっくりと受けに回るつもりの俺に対して、久遠は魔法が1度通じなかっただけで思い切った行動に出る。


 暗詠唱による奇襲に失敗した彼女は、直進して距離を詰めて来る。

 その速度は彼女の体格のスペックを優に超えている。

 魔力で身体能力がブーストされている。


 型も何もないただの右フックぶんまわし

 わざと回避せずに、肩で受け止めて足のバネを使って衝撃を地面へと受け流す。

 打撃技で触れた程度では、身体強化を分解できない。

  

 彼女にはまだやり残したことがあるかもしれないので、まだ勝負を決めに行かず、待ちの姿勢を維持する。

 しかし久遠は一歩引いただけ。

 新たに前へと進むことも、後ろに引くこともせずに中途半端な間合いで止まってしまった。


 左手で右の手首をおおっている。

 どうやら先程のパンチで手首の間接を痛めたようだ。

 慣れないことはするものではない。

  

「やり返してみなさいよ!」


 手を出せない彼女は口撃こうげきを繰り出すが、そんな安い挑発は通用しない。

 言葉の裏では、しっかりと力の差と認めていることが汲み取れる。


 俺は会長の方をチラリと見たが、彼女は勝負を取り上げようとしない。

 むしろおきゅうをすえろとばかりに、俺に向けていた首を久遠へと振った。


 寸止めで十分。

 今度は俺の方から、一歩分の間合いを詰める。

 右手の指で作った刀を、久遠の首元すれすれの空間へと置く。


 彼女は反撃することも、引くことも、驚くことすらできない。

 物理的に接触しなくても、殺意で斬ることは可能。

 一閃から遅れて、戦意を失った彼女は地面へと膝をつく。


「勝負ありね」


 会長は判定ジャッジを下すと、ぐったりとした久遠を抱え上げた。

  

 ***


 九重院の建物は2つ。

 千春さんと面会した病院を改装した建物とは別に、平屋の方は施設の子供達の居住区だった。


 会長は久遠を休ませるために、彼女の自室へと運び込んだ。


 人に向かって初めて魔法を放つのは、精神に負担を強いるもの。

 そこに俺の最後の攻撃が決め手となって、緊張の糸が断ち切られた。

 意識はあるようだが、試合前までの騒がしさは失われ、完全に意気消沈している。


「大丈夫よ。後輩君が気にする必要ないわ。この娘の自分勝手には困ったものね」


 自身のことを棚に上げているが、会長も同じようなものだと少しでも自覚してもらいたいものだ。

 まぁ、彼女の場合は、自覚しながらもそんな自身の行動を楽しんでいるようにも見える。


 俺としては、千春さんから九重咲夜について聞きに行きたい。

 しかしペースを握る会長がそのまま久遠の部屋に居座ることを所望したので従うしかない。


 彼女なりに久遠のことを気づかっているようだが、俺としてみれば、交流のない女の子の部屋に長居するのはあまり紳士的ではないので、後ろめたさがある。


 連れて来た会長本人は俺のことを背もたれにして、部屋にあった漫画を読んでいる。

 久遠1人の個室なので、3人でいるには手狭だが、動かなければあまり気にならない。


 何もしない怠惰な時間。

 普段の俺ならば我慢できないのだが、ここ最近は忙しかったのであまり苦にならない。

 背中から彼女の体重と共に、温もりがじんわりと伝わって来る。

 呼吸は静かで、鼓動はとても穏やか。

 数日前に本気でぶつかり合ったことがまるで嘘のようだ。

 

 これまで俺が生きて来た道では、1度敵対すれば互いの命がなくなるまで削り合うのが当然のことだった。

 もちろん仕留め損なったり見逃したりした相手もいるが、このように日常に溶け込んで来ているのは初めてのことだ。

  

 喧嘩した後の関係修復の方法というものは未だによく分からないままだが、会長と俺は仲直りしたのだろう。


 生徒会2年生の3人は仲違いと仲直りを繰り返しているようだが、俺にもそんな信頼関係を築くことができるのだろうか。


 護衛として彼女との関係が良好であることは重要なことだが、俺個人としても波風を立てたくない。

 今の状態は不快じゃないので、文句を口にせず素直に彼女に付き合っている。

  

 ただただ時間が前に進む中、20分ほどで久遠が元気を取り戻した。

 今のところ大人しくはしているが、未だに俺に対する敵意を隠そうとしない。


「あ、あんた」

「ふよう。高宮芙蓉だ」


 珍しく俺の方から割り込んだ。

 それに対して久遠は少しだけ赤面した。

 相対あいたいしておきながらも、名前すら知らなかったことをようやく自覚したようだ。

 失礼だけでなく、自身が敗北したことも重なって一気に恥ずかしくなってしまったか


「……芙蓉は東高ではトップの方なの?」

「そんなことはない」


 とりあえず否定しておく。


 久遠は手も足も出なかったからそのような評価をしたのだろう。

 いつもならば頼んでもいないのに勝手に喋る会長様だが、この場は俺に任せるつもりなのか、それとも本気で漫画に夢中なのか何も答えようとしない。


 俺の現在の校内ランキングは最下位。

 新人戦以降はランキング戦に参加していないので、不戦敗の黒星が積まれ続けた結果。

 俺は実技の授業にもほとんど出席していないので、自身の立ち位置を客観的に示せる指標が思い浮かばない。


「少なくとも生徒会メンバーならば、君相手に誰1人として苦戦しない」


 事実を盛ってはいないが、かなり厳しめに偏った情報を伝えることにした。

 これくらいで諦めるならば、プロの魔法使いなど到底務まらない。

  

 彼女はしっかり学んでいるようだし、とても優秀だと評価したい。

 土と水の2属性を扱えて、身体強化や暗詠唱は実践向きの技能。

 まだ不十分だが非戦闘時の魔力の隠し方も上手い。

 ニホンの中学での魔法教育課程の中で得られる限界ギリギリの技術を吸収していると言っても過言ではない。


 しかし勤勉だけでは生き残れないのがこの世界。

 逆境を跳ね除ける力がなければ、いずれ現実とのギャップに押し潰される。


 久遠は俺の言葉を聞いて落ち込んでいる様子だが、その瞳は未だに曇っていない。

 だから俺なりのアドバイスを残すことにした。


「今できることは想像力を含ませることだ。実戦は出たとこ勝負ではない。ありとあらゆる場面を想定して対処法を用意しておく。その上で新たに必要なカードが何かを吟味する。経験は東高に入ればいくらでも積める」


 俺が言ったことは1つの答えだが、全てではない。

 しかし今の彼女にとって必要なことなのは確か。


 久遠に魔法使いとしての成績表を付けるならば、高得点かもしれないが、点数ほどの実力はない。


 これまでにも多種多様な魔法を会得したのにいざ現場に出てみたら何もできない魔法使いを何度も見てきた。

 1つの術にしたって、使えると極めるでは意味合いが違う。

 多才な者ほど陥りやすい罠。


 しかも多すぎる手札は咄嗟とっさの判断を鈍らせる。

 できることが2つから4つくらいの方が、意外と長く現役でいられる。


 たとえば天才肌の凛花先輩なんかだと、実戦で使う土魔法はゴーレム創成だけで、他の魔法は控えている。

 同業者のリズだって3属性を有していても、多くの場面において、レイピアで対処できるような得意な形へと持ち込む。

 彼女らは戦いが始まる前に、必要な手札の選別を終えている。


 実戦を重ねる環境がなくても、用意するだけならば今からできる。

 会長が珍しく黙っているのは、自身が力任せの戦い方なのを自覚しているからなのだろう。


 俺の意見について、久遠がどこまで受け入れるのかは分からない。

 残念ながら彼女の適正について判断するには材料が少ない。

 魔法の習得の才能があることは確かだが、実戦でのことは実戦でしか分からない。


 大半の魔法使いは、経験が乏しいままプロのライセンスを得ることになる。

 だからこそ早い段階で現実を突きつける東高の厳しい環境は、実はとても良心的なシステム。


 戦いの具体的な講評はまだだが、ノックに続いて個室のドアが開かれる。

 現れたのはこの施設を切り盛りしている千春さん。

  

「2人ともここにいたのね。紫苑ちゃんは泊まっていくの?」

「明日は日曜だし泊まる。泊まるよ~! 後輩君も一緒にね」

  

 俺に選択権がないことはいつものことだが、千春さんらに迷惑ではないだろうか。


 もちろん会長の護衛である俺が、彼女を置いて1人帰るのはあまり好ましくない。

  

「空き部屋ならいくつかあるので心配しないで。そうね。佐参君が使っていた部屋ならそのまま使えるわ」

「お世話になります。よろしくお願いします」


 ここで遠慮して帰るのは野暮というもの。


 ***

  

「とりあえずストックできる物は買ったかな」

「ところで会長、メインの献立はどうしますか」


 会長と俺は九重院から歩いて15分ほどのスーパーマーケットに訪れていた。


『夕飯のお買い物に行ってくるね』

『紫苑お姉ちゃん、私も一緒に手伝うよ』


『後輩君と行ってくるからいいよ。久遠はもう少し休んでいなさい』


 無料ただで泊まる訳にもいかないと思った俺は、会長と共に施設の手伝いを申し出た。


 当初は掃除や洗濯などの家事を考えていたが、千春さんによる日々の管理がしっかりと行き届いており、あまりすることがなかった。

 結局やれることは夕食の準備くらい。


 東高に入ってからは寮の食堂があるので、機会が減ったが料理をするは嫌いじゃない。

 それは会長も似たようなところ。

 彼女の手料理は何度か食べたことあるが、かなりの腕前。

  

 九重院の敷地を出てからすぐ、俺は会長に腕を掴まれたが、強引に連れて行かれることはなかった。

 最近になって学習したことなのだが、こちらが先に足を進めれば彼女の方がついてくる。


 会長の扱いには大分慣れてきたが、今は別の問題があった。

 俺達のじゃれ合いを目の前に、久遠が静かににらんでいた。


 試合後に久遠の中で1度は落ち着いていた俺への敵意が再燃していた。

 彼女は会長と一緒に買い物に行きたかったようだが、その枠を俺が盗るような格好になってしまった。


 しかし俺の中で優先すべきは久遠よりも会長。

 それは任務という観点ももちろんだが、機嫌を損ねた時の俺への実害が大きいのも会長の方。


 そして俺達は最寄りでたくさんの商品が揃っているスーパーマーケットへと行った。

 住宅街の食を支える貴重な1店舗で、大抵のものは手に入るようだ。


 会長の提案もあって、保存のきく食材や、ティッシュなどの日用品を多めにカゴの中へと入れた。

 九重院で一泊お世話になるので、このくらいの気遣いは必要だと同意している。


 そしていよいよ本日の献立を決めなければならない。

 ここまで来る間に何度もその話題が出たのだが、会長がカレーだの、ハンバーグだの、唐揚げだのと、ころころと希望を変えている。

 しかし彼女の琴線に触れる答えはまだ出ていない。


「そう言えば、林間合宿の夜に後輩君が作ってくれた山菜の天ぷらはとても美味しかったわね。もう1度食べたいわ」

「あれは霊峰に良い食材が揃っていたからです。言っちゃ悪いですけど、ここに並んでいる品であの味は無理です」


 後半はできるだけ小声で口にした。

 しかしこれが失言だとは思わなかった。


「そうね。じゃあ山菜以外に必要な物を買ったら、ぱっと霊峰に行きましょ」


 突拍子もないことは彼女の常套手段だったはずなのに、想定外のルートへと誘導してしまった。

 九重院で夕飯を作るはずが、どうして霊峰まで採集に行くはめになる。


 山での食材確保は得意だが、問題は距離。

 とんでもない移動手段が出て来ることは目に見えている。

 非常事態でもないのに、揺れまくるリルの背中に乗るのだけは勘弁してほしい。


 質問を受けつけない暴走モードに入った会長様は、残りの買い物をさっさと済ませてセルフレジに通した。

 彼女は順番を気にせずに商品を袋に突っ込むので、俺が入れ直すはめになった。


 3個あるパンパンの袋の分担は、もちろん俺が3で、会長が0。

 文句を言っても無駄なことは、これまでの経験で分かっている。

 それに絶対強者の彼女から当たり前のように、甘えられるのは悪い気がしない。


 いつもならば会長が大量の魔力を譲渡してくれるのだが、今回は遠慮している。

 テトラドの会で魔法狩りを暴走させた原因が未だに不明なままなので、身体強化は最低限に絞ってある。

  

「それじゃあ、跳ぶわよ」

「ちょっ、」


 俺が疑問を口にする前に、景色が変わった。

 スーパーマーケットを出て路地を曲がった先にいたはずなのに、人気ひとけのない公園に移動している。


 記憶と照合してみるが、九重院周辺とは異なる見覚えのない街並み。

 おそらく転移魔法。


「どこまで転移したのですか? 霊峰とは違うようですが……」

「今の私の能力だと30秒以上の溜めで、10kmキロの移動が限界よ」


 さらりと能力を自己申告した彼女だが、それを鵜呑うのみにするつもりはない。

 テトラドの会での戦いで、初めて披露した転移魔法だが、自由自在に移動できる便利なスキルではないことは確か。

 転移直後に隙ができるし、移動距離やインターバルにも制約があるようだ。

 以前の戦闘ではせいぜい数メートルしか跳べていなかった。

 少なくとも彼女が口にしたスペックは、最低基準として頭の片隅に入れておいても良いだろう。


 以前寝ている間に砂漠へと拉致されたことがある。

 転移魔法を使われたと思っていたが、彼女の説明が本当ならばニホン海を越えることは困難。

 しかし俺がそのことを追求したところで、1度宣言したスペックを訂正するとは考えられない。


 これまでに会長や凛花先輩、リルを相手に確認済みのことだが、俺の魔法式では指輪の騎士の能力は分解できないようだ。

 しかし前回俺が魔法狩りを暴走させたとき、会長はほとんど無抵抗だった。

 魔力を吸われていて集中する余裕がなかったのか、それともあの状態では能力すらも分解されて発動に至らなかったのか。


 さて、転移のインターバルの間は暇ではない。

 G〇〇gleマップのストリートビュー機能で次の転移先を決める。

 できる限り目撃者が少ない方が好ましい。

 そして転移の瞬間は彼女の身体に触れている必要があるそうで、常に腕を組んだ姿勢を維持している。


 そして話題も30秒おきに跳んだ。


『後輩君、後輩君。ボケとツッコミのない世界なんてつまらないと思わない?』

『結局、私が激辛シュークリームを食べることになったのよ』

『後輩君。緑の恐竜と赤い雪男だとどっちが好き?』

『女子高生探偵の紫苑よ!』

  

 移り気の激しい会長様は、転移の度にころころと話題を変えるので、内容がまったく頭に入ってこない。


 大体10回ほどの転移で、2か月前に訪れた霊峰のベースキャンプへと辿り着いた。

 約100kmの距離を数分で移動したのだが、ただ立っていただけなのにどっと疲れた気がする。


 俺達が天幕を張ったこの場所は、山の中でも比較的平らな地面が広がり、木々が切り取られてある。

 そしてキャンプ施設として、火起こしと調理をするための最低限の設備がある。

 あのときは1年生全員と引率の上級生がいて賑わっていたが、今は閑散としている。


 とりあえず俺が買い物袋を屋根のある場所に運んでいる間に、会長が行動を起こした。 


「2人ともおいでー!」  


 会長の号令によって、森がざわつく。

 彼女は2人と口にしたが、実際は2体とか2匹と言うべき。

 強靭なあごと筋肉質な巨体を持つ怪獣が現れる。


 彼女のペットのベヒA娘エーことベヒB助ビーすけ


 以前、吸血鬼のダニエラがおこなった魔界への扉を開く儀式によって、迷い込んでしまった魔獣。


「山菜集めのついでに散歩に連れて行ってあげようかなと思って。それにこの子達がいれば、余計な魔獣は近寄って来ないわ。後輩君にはベヒB助を付けてあげるね」


 2体のベヒモスはこの霊峰の頂点にある。

 肉食獣である彼らだが、食物連鎖に従って全てを食い散らかすことはない。

 地球上の生物における栄養学は、魔界産のこいつらには適用されない。

 魔力の満ちたこの地では、エネルギーの補充に困らない。

 一方で彼らは霊峰の外に出ると、あまり長く生命活動を維持することができない。

 稀に人里に下りることのできる例外もいるが、すぐに魔法使いが派遣されることになる。

  

 何はともあれ夕食の支度があるので、さっさと山菜を摘んで早く九重院へ戻らなければならない。


 ***


 霊峰での滞在時間はものの30分ほどで、再び会長の転移能力で帰還した。

 食材の入った袋が1個増えたのだが、もちろん俺の担当。


 タラの芽を筆頭に、ふきのとう、セリ、ワラビ、タケノコ、ヨモギなんかを採取できた。

 魔力が豊富な霊峰だからなのか、自生している植物の季節感がぐちゃぐちゃだな。

 ちなみにマンドラゴラを見つけたが、下処理が大変なので今回は諦めた。

  

 また帰りの転移で、寄り道もした。

 その地の名産が並ぶ“道の駅”にも行って、足りない食材や、長期保存ができる漬物なんかを追加購入した。


 周囲は道路と田んぼに囲まれて何もないのに、車の運転もできない高校生2人は不自然。

 自動二輪でのツーリングならばあり得るかもしれないが、大量の荷物を手にしていればあまりにも無計画過ぎる。

 好奇の視線は多少感じたが、疑念を抱かれるほどではなかった。

 俺の考えすぎのようだった。


 戻ってから一休みしたいところだが、急いで仕込みを始めなければ、夕飯に間に合わない。


「紫苑お姉ちゃん、遅かったね。何していたの?」

「久遠には、まだ早いことよ」


 そう口にした会長は実際には何もないのに、意味深な視線を俺に送る。

 彼女が余計なことを言うせいで、久遠から俺への対抗心がさらに上昇する。

 会長は分かっていてあおっているな。


 できれば久遠の誤解を解きたいのだが、会長が俺の手を引いてキッチンへと足を進めようとする。

 今は夕食の準備を急ぎたいので、久遠のことは後回しにするのには同意だ。

 しかしそう簡単ではなかった。 


「料理なら私も手伝うよ」

「じゃあ後輩君のアシスタントをお願いね。彼が今晩の料理長よ。私は買ってきたものを整理しておくわ」


 まさかのこの状況で会長があっさり引いて、俺は久遠を押し付けられてしまった。

 たしかに調理と買ってきた日用品の整理をするために、会長と俺が別行動で済ませた方が効率が良い。

 そして人数分の料理を短時間で作るならば、確かに施設の勝手を知るアシスタントは欲しい。

 しかし久遠と2人で上手くできるのだろうか。


 久遠の先導でキッチンに入った俺は、買ってきた荷物を広げるのを彼女に任せる。

 その間に備え付けの調理器具や、調味料、余っている食材を確認する。


 ちびっ子達の多いここで、献立の主役が天ぷらなのは悪くないが、会長が希望した山菜ばかりでは受けが良くないだろう。

 スーパーで仕入れた鶏肉、魚介類と野菜を天ぷらにする。

 本当はかき揚げなんかも作りたいところだが、あまり時間はないな。

 育ち盛りには炭水化物も必要なので、うどんなんかも茹でたい。

  

 最初に山菜の灰汁抜あくぬきから手をつける。

 時間短縮のために重曹と共に熱を加えるが、子供向けに長め処理したものと、会長や千春さん向けにほんのりとした苦みを残したものを分けて用意する。

 他にも薩摩芋なんかも灰汁抜きをする。


「とりあえず野菜を切ってくれるか?」


 久遠がどの程度の腕前なのか分からないので、少しだけ様子を見ることにする。


 林間合宿ではクラスメイトのリズに野菜のカッティングを任せて、惨事さんじになったのはまだ若い記憶だ。

 しかし今回は俺の取り越し苦労に過ぎなかった。


 彼女は南瓜や茄子、椎茸の下処理をどんどん進めていく。

 素材の味をしっかり楽しめるように厚めだが、子供達が食べやすいサイズにできている。


 はっきり言って久遠の手際は会長よりも上。

 魔法だけでなく、何かと器用な娘だな。


 久遠に任せても大丈夫だと判断した俺は、自分の仕事を進める。


 手早くエビの殻を剥き、小ぶりなたらを捌く。

 下処理を終えた具材は、衣で誤魔化さないように薄力粉をさっとだけ付けて油鍋へと投下する。

 揚げあがった天ぷらを、キッチンペーパーが敷いてある皿へと載せていく。

 1度手本を見せたら、天ぷらの担当は久遠へとパスして、俺はうどんを茹で始める。


 最後に余った野菜はまとめて盛り付けてサラダにする。


「後輩君、久遠。調子はどう? 味見しに来たよ」


 そんなことをのたまって厨房に現れたのは、もちろん会長様。

 別に彼女が味見をする必要は全くないのだが、俺は余計な事を口にしない。

 衣をまとったタラの芽に軽く塩を振って差し出す。


 サクッという音は一瞬だけで、あっという間に消えていく。


「美味しい! さすが私の後輩君ね」

「お粗末様です」


「でも久遠も結構やるでしょ」

「そうですね。とても良い腕をしていますよ。つまみ食いばかりする会長とは違いますね」


「……私もそう思うわ」


 軽い皮肉のつもりだったのに、素直に返されてしまった。

 理由は分からないが、なんだか嬉しそうというか、誇らしげだ。


 つまみ食いは置いておいて、彼女らの料理技術は久遠が上とはいえ、実際のところ僅差に過ぎない。  


「お皿出したりしておくね」


 そう言って会長は久遠と俺のサポートに回る。

 料理自体は次々に大皿へと盛ってあるが、実際の人数をはじめとした施設の勝手が分からないので助かる。


 ***


 九重院の食堂。

 夕食の場にはこの平屋の住人全員が集まっていた。


 会長が外で遊んでいた子供達が全員ではなかった。

 自室で勉強していたり、休日ということもあってアルバイトに出かけていたりしていた。

 久遠と同じ中学生に加え、俺らと同じ高校生も3人いた。

 そしてみんなからお姉ちゃん先生と呼ばれる千春さん以外の大人が合流することはなかった。


 自画自賛になってしまうが、会長と買いだしをし、久遠と料理した夕食の評判はとても良かった。


 特に山菜の天ぷらは、口の中で衣が裂けると、苦みと渋みといった森の味が一気に解き放った。

 俺達が美味しそうに食べる姿を見て、ちびっ子達も大人向けの山菜に挑戦していた。

 少しだけ口に含んでみて、大半が眉間にしわを寄せていた。

 この味を楽しむには、まだ早かったようだ。


 和気あいあいとした夕飯だったが、意外なことに会長に絡まれることはなかった。


 珍しいことに、俺は小学生くらいの男の子2人に懐かれていた。

 久遠との手合わせを観戦したことがきっかけで、格闘技を教えて欲しいと何度もせがまれていた。

 かなり強引だったが、明日帰る前に軽く面倒を見る約束をさせられてしまった。


 無邪気にはしゃぐ子供達だが、意外な所で察しの良さを見せた。

 俺が他人に触れられるのを嫌うことを、ちょっとした素振りだけですぐに読み取って、気をつけていたのだ。


 この施設の特性上、みんながそれぞれのトラウマを抱えながらも、上手く共同生活を成立させていることがうかがえる。

  

 そして夕飯の後片付けを会長と久遠の2人に任せた俺は、千春さんへと昼間の話の続きをしたいと打診した。

 平屋を1度出て、最初に対談した元病室の居間へと戻って来た。


「咲夜さんのことを聞かせてくれるかな」 


 千春さんはそう切り出したが、俺が知ることなど大してない。


「俺の父が高宮春雨、母が高宮咲夜、旧姓九重咲夜らしいですが、実際に会ったことはありません。育ての親からは2人はすでに死んだと聞かされておりました。叔父である高宮時雨は、母がこちらの出身だと知らなかったようです」


 ローズかあさんは2人を殺したと手紙に残したが、そのことにはあえて触れなかった。


「咲夜さんが高宮の家に隠していたのはこちら側の事情よ。改めてこの九重院について説明しましょう。ここでの話は内密にお願いね」


 俺は首を小さく縦に振って頷いた。


「九重院はもともと小さな普通の病院。だけど医院長だった私の祖父が、どこからか虐待を受けていた子供を強引に保護したことが、活動の転換になった。その子の両親に居場所を知られないために政財界に手を回して、新たな戸籍を用意した。たしかここまでは話したわね」


 とりあえずはここまでの筋は通っている。

 しかしどうして、孤児院とは少し違うこのような保護施設へと変貌したのか、話が跳んでいる。


「祖父が裏で手を回したとき、その時点では対価を求められずに借りという形で収めてもらった。そして数年後、その返済として、素性の分からない女の子を預かることになった。その人物こそが咲夜さん。その後も祖父は支援を受けていた人物らから、それぞれの事情で過去を捨てる必要のある子供達を任されるようになった。現医院長の父も医者ではあったけど、機密を守るために、そして九重院の運営に専念するために病院を閉鎖することにした」


 つまり九重院は元病院でありながらも、ニホン高官御用達ごようたしの未成年保護機関。

 そして高宮咲夜はこの施設の2番目の子供であり、今の形の九重院のシステムとしては最初に連れて来られた人物。


 この九重院の機密レベルはとても高く、ステイツの諜報機関ですら九重紫苑の情報から辿り着くことができなかった。


 もしかしたら上司のフレイさんは知りつつも、俺には黙っていたという可能性は残っている。

 彼女は任務遂行に必要のない情報はわざわざ口にしない。

 さらにニホンへと長期派遣する俺をステイツから離反させないために、咲夜に繋がる情報を伏せていたとしてもおかしくない。


 俺にとって絶対的な味方であったはずのローズと別れて以来、誰かを無条件に信じることなどできない。

 付き合いの長いフレイさんですら、上司として優秀なことは認めているが、全てを委ねるつもりはない。


 考えたいことは多くあるが、千春さんの話はまだ続く。


「私が5歳の頃には、咲夜さんは今の紫苑ちゃんと同じように東高に入学して寮生活だったけど、たまにここにも顔を出していたわ。周りのみんなを笑顔にするとても不思議な人だった」


 そう口にして彼女は古いアルバムを開く。

 そこにはあったのは若い頃の母の姿。

 高宮の家で時雨叔父さんが見せてくれた写真は高校生のときのものだったが、千春さんが広げたアルバムにはそれ以前のものもあった。


「魔法使いとしてプロデビューした後も何度も遊びに来ていたけど、高宮家に嫁いでからは大分減って疎遠になっていた。結婚式にも九重院からは誰も出席できなかったけど、春雨さんとは1度だけ会ったことがあるわ。あなたには咲夜さんの面影もあるけど、どちらかというと父親似ね」


 母の姓が会長と同じ九重だったことや、時雨叔父が彼女の素性を知らなかったことには、とりあえず納得するしかない。

 2人を九重院へと連れてきた人物についてはいずれ突き止めるにして、咲夜にはもうひとつの謎がある。


 写真にある彼女の髪や瞳の色は黒だが、骨格は西洋人であり、その顔はローズにとても似ている。

 さらには咲夜はローズの弟子という触れ込みで、東高に入学したそうだが、その経緯が全く見えてこない。


「母はニホン人なのですか?」

「私にも分からない。この施設に来る子供達の過去は全て伏せられている。特に咲夜さんは自分のことをあまり語らない方だった。院長の父なら何か知っているかもしれないけど、なかなか帰らないのでいつ話せるのか約束はできない」


「ならば、母には東高入学以前から魔法の師匠がいたそうですが、その人物についてはご存知ですか?」

「ローズさんのことかしら。咲夜さんはとても慕っていたわね。私はてっきり彼女が咲夜さんのことを養女として迎えるのだと思っていた。だけどそうはならず、咲夜さんが東高に入学した頃から顔を見なくなった」

  

 少なくともローズはこの施設に出入りしていた。

 俺を連れて旅をしていた時期に知人と思われる人物に会った記憶はない。


 今でこそ足取りの分からないローズだが、当時は衆人の目に止まっていたようだ。

 結局、この対談でローズについての目ぼしい情報は得られなかった。


 ***


「後輩君。今、ちょっといいかな」


 千春さんとの話を終えて、佐参が使っていたという部屋をあてがわれた俺は、就寝前の自由な時間を過ごしていた。


 そんな中、ノック直後に返事を待たず、会長様がこの部屋唯一の出入り口を開けた。

 まだ許可をしていないのに、中に入ってくるのは相変わらずのことなので今更文句は言わない。

 備えつけの勉強机の椅子に座っていた俺に対して、彼女は遠慮もなくベッドへと腰かける。


 会長の服装は、夜に男子寮の部屋に遊びに来るときの露出の少ない衣類とは違って、本日は薄手のパジャマ。

 柄のない白色で、襟元と手首には花や蝶を模したフリルが付いている。


 いくら実家のようなものだとしても、共同生活をしているここでいかがなものだろうか。

 さらにパジャマの手足の丈が足りなくサイズが合っていない。

 胸元も締め付けられ膨らみが強調されており、少し苦しそうだ。

 東高に入学する以前に購入した物なのか、それとも久遠のものを借りているのだろうか


「後輩君は、久遠についてどう思う?」

「……魔法使いとして、という意味ですか?」


 もちろんそんな話ではないことは分かっている。

 しかしデリケートな部分に触れることを避けたため、面白味のない答えを返すことになってしまった。


「私のせいなの……」


 何が、とは聞かない。


「久遠は大抵のことなら何でもできる天才なのよ。別に無理してこっちの世界に入る必要はなかった」


 魔法を志す者には様々な理由があるが、誰もが憧れる社会の花形職なのは、世間一般の共通認識。

 プロになれるのは一握りだけだが、魔法公社のライセンス持ちになることができれば、相応の富と名声を得ることができる。

 しかし常に命の危険にさらされ、現役でいられる期間もあまり長くない。

 魔法高校の受験ができる年齢にもなれば、憧れだけでは届かない現実と向き合わなければならない。


 たとえば蓮司は東高に入学できるほどの適正がありながらも、一度は普通科の高校に進学している。

 同じ生徒会役員の由佳の場合は、中学の魔法科ではそれほど評価されなかったが、実戦重視の東高でようやく“装甲車”の二つ名で活躍できるようになった。

 2人共十分な見通しがあって、東高の門を叩いている。


 他には従妹の陽菜なんかだと、久遠と同じ学年だが、“神降ろし”以外に決め手になる能力を持たない。

 現在留学中の彼女は、この機会に何も得ることができなければ、魔法使いを諦めるという覚悟もしている。 


 昼に戦った久遠は暗詠唱による2属性の二重詠唱だけでなく、身体強化まで扱える。

 決して凡人ではない。

 しかし実戦での適正について、経験不足としか言えず、それ以上の結論は下せない。

 そもそも彼女からは、魔法使いを志すことに対する憧れや目的意識をあまり感じなかった。


  

「東高入学前、九重院を出るまでの私は何をやっても駄目だった」


 会長の静かな独白が始まる。


 テトラドの会で佐参との昔話に出てきた会長は、今の彼女からは信じられない人物像だった。

 聞いたところによると、普段は不愛想なのに泣き虫、食べ物の好き嫌いが激しく料理もまったくできない。


「今でも1人では何もできないけどね。沙耶ちゃんの一件だって、後輩君がいなければ解決できなかった。ここで暮らしていた頃は、お姉ちゃん先生を困らせるだけでなく、佐参お兄さんや久遠に頼ってばかり。だから私が東高への入学を決めたときはみんなが驚いたわ。中でも久遠がね」


 東ニホン魔法高校は魔法公社運営のエリート校。

 俺の知る絶対強者ならば、入学試験でつまづくとは考えられない。

 膨大な魔力量を隠していたとしても、余裕で通過できただろう。

 しかし当時の彼女はまだ世界各国が注目するような、女帝ではなかった。


 久遠を小さな会長と思ったが、会長の方が後から彼女に似たのかもしれないな。


「あのは何をやっても、2歳お姉さんのはずの私よりもまさっていた。勉強も運動も家事だって。私が彼女に依存してしまったこともあって、久遠自身にそんな気が無くても自尊心を増長させる結果になってしまった」


 てっきり久遠は会長に懐いているから、買い出しや料理を手伝うと言い出したのだとばかり思っていた。

 しかし実際のところは、過保護の表れだったのか。

 2人のこれまでの関係性を知らない俺では、そのいびつさに気づけなかった。


「私が東高に入ったことは、何でもできる久遠にとっては初めての高い壁になった。それでも彼女の中では、私はまだ庇護ひごすべき対象だという矛盾も残っている。あの娘が魔法科に転向したのも、私への対抗心がある一方で不器用な私のことを助けたいという動機もあると思うの」


 たしかに矛盾しているな。

 しかしそれは会長側の見解でしかない。

 久遠がそこまで愚かだとは、俺は思わない。


「後輩君も気づいていると思うけど、私は努力をして今の力を手に入れた訳ではない。だから久遠に勝っていると思ったことは今でも1度もない。なのに私が何を言っても、あの娘は考えを変えようとしない」


 たしかに会長の力は修行の末に会得したものではなく、突然目覚めたもので間違いないだろう。

 しかしあれだけ膨大な魔力に振り回されないようにするには、とても苦労したはずだ。

 それでも個性の激しい騎士達の能力は掌握できていない。


 俺は才能や努力といった形のないものに、優劣をつけるのは同意できない。

 そもそも魔法とはたった1人の才能や努力で発展したものではない。

 人類という種としての共有財産である叡智えいち


 精霊魔法は精霊王が人類へともたらした借り物だし、固有魔法の多くが先人の知恵や道具を引き継ぎ、さらにその先を目指すもの。

 それらが有用であれば、どのような経緯で得たのかはどうでもいい。

 そういう意味では会長は甘いところもあっても世界屈指の実力者であり、一方久遠はまだスタートラインに立ててすらいない。


 2人の関係性について、会長側にも問題がありそうだ。

 久遠と比べてしまうと、自身を卑下するような考えが染み付いてしまっているように思える。

 一歩引いて見たら単純な問題なのかもしれないが、俺が口を挟むのはお門違い。

  

「私が傍にいられるうちは、このままでいいわ。でも、もし私に何かあれば……久遠のことをお願いできるかしら?」

「……それは以前、『もう長くない』と口にしていたことと関係があるのですか?」


 テトラドの会で沙耶ちゃんの処遇を巡って、対立したときに会長はそのようなことを口にしていた。

 あの時は逼迫ひっぱくしており、追求するタイミングを逸してしまったが、いつかは確認しなければならないと思っていた。


 さらに出会ったばかりの頃にも、俺は立場を顧みず彼女のことを守ると誓っている。

 あの時の会長も将来に何か不安を抱いているようだった。

  

 俺の言葉を聞いた彼女は、目を丸くしたけどすぐに平静を装う。


「乙女の独り言を盗み聞きするなんて悪趣味よ」


 せっかく意を決して質問したのに、あからさまに断られてしまった。

 彼女との会話で、俺の思い通りになったことなどほとんどない。


「それに今は久遠のことよ。私に何かがあれば彼女を任せてもいい?」

  

 俺がいる限りそんなことがあってたまるか。


 だけどその言葉は口にしない。

 絶対を保証できないことは分かっている。


 ステイツでは対魔法使いの切り札として重用されている俺だが、これまでの任務成功率は100%ではない。

 そして護衛対象である彼女にもしものことがあれば、おそらく俺だって無事では済まないだろう。


 この任務に着いたとき、自身の命と彼女を天秤に掛ける場面では、自重するようにとフレイさんから言われている。


 俺もそのことには合意しているし、今でも考えは変わらない。

 しかし少しでも勝ち目のある賭けならば、我が身をチップとして差し出す覚悟はあるつもり。


 会長の望む返事を軽々しく口にできない俺は、せめて茶化すことなく彼女の眼差しを正面から受け止める。


「……後輩君のそういうところ、好きよ」


 きっと会長だって、俺の態度が偽善であることは分かっているのだろう。

 それでも彼女の身に何かあったとき、この約束は俺を縛る呪いになる。

 久遠のことは簡単には見捨てられない。


 ***


「走ってばかりで飽きたよ。必殺技とか教えてー」

「教えてー」


 九重院の早朝。

 日課のトレーニングをしようとしたら、ちびっ子2人がついて来た。


 俺と同じことを真似したがったので、怪我をしないようにしっかりとした走るフォームを伝授した。

 そこからはダッシュとインターバルの繰り返し。

 休憩中もストレッチを行う。


 最初のうちは頑張っていた見習い達だが、すぐに焦れだした。

 まだ身体の出来上がっていない状態で無茶はさせられない。


 そんな彼らにとって、ランニングは間違いのなく必要な特訓。

 心肺機能を高め、強靭な下半身を作り出し、瞬発力と持久力の両方を鍛えることができる。


 たしかに彼らの求める武道の技をひとつでも教えれば、最短で強くなれる。

 しかし目的のない拳は所詮ただの暴力でしかない。

 本当の意味で武芸を扱うには、心と体の両方を鍛えることが求められている。


 残念ながら俺が教えられるのは殺しの技だけ。

 その神髄しんずいは己自身の感情を殺し、相手の命を奪うことにある。


 もちろん相手を殺さずに取り押さえる技も持っているが、その目的は効率的な暴力の行使でしかない。


 狂気に呑まれないためにも、社会を維持するための必要悪ひつようあくとしての矜持きょうじくらいはあるつもり。

 しかし平和なこの国に生きる彼らには教えるべきではない。

  

 駄々をこねる少年らを無視して、俺は黙々と走り出す。

 先ほどまでは彼らに合わせていたが、本来の自身のペースに戻す。

 身体が温まってきたので、ダッシュとダッシュの間には、仮想敵シャドー相手にパンチやキックのコンビネーションを放つ。


 その姿を見るために少年達が追いかけて来るが、辿り着いた頃には俺は再発進する。


***


 朝食は千春さんと久遠、そして会長が用意していた。

 日曜の朝からしっかりとした和食が出てきた。

 白ご飯に焼き鮭、味噌汁と漬物が並んでいる。



 孤児院のようなことをしている九重院だが、子供達の生活水準は決して悪くない。

 建物の整備はしっかりとしており、食事の栄養も十分足りている。

 娯楽に関しては分からないが、勉学や運動にも不自由しないしないようだ。


 九重院の政治的特性上、資金に関しては十分だとうかがえる。

 今回直接会うことはできなかったが、千春さんの父の現院長が政界や財界との繋がりをしっかりと維持しているのだろう。

 さらには外で活躍している卒院生そついんせい達が恩返ししていることもあるそうだ。

 もしかしたら実際の資金に比べて、かなり質素な生活をしているのかもしれない。


 朝食は夕飯と違って、着席した者から順に食べ始めている。

 高宮の家に比べたら見劣るかもしれないが、暖かい味がした。


 母がここで育ったと考えてみると、少し不思議な気分だ。

 当時はもっと人が少なくて、手探りに運営していていたのだろう。

 院長が在宅のときに、もう一度訪ねなければならないな。


 朝食の後片付けには、率先して参加した。

 どういう風の吹き回しなのか、久遠からの希望で、彼女と一緒に洗いものをすることになった。

 昨日の試合後は少し馴染めていたつもりだが、彼女は会長と仲良くする俺をあまり快く思っていない。


 それでも器用な久遠は、会話がなくてもこちらの作業状況を把握して、無駄のない動きをしてくれる。

 無言は嫌いじゃないのだが、彼女との時間は少しだけ気まずい。

 勝手にしゃべり続けてくれる会長の扱いがどれだけ楽だったことか。


 洗いものがほとんど終わり、拭いた食器類を棚に納めていた頃、久遠の方から口を開いた。


「紫苑お姉ちゃんとは……いつから付き合っているの?」

「どう見えているのか知らないが、俺達は東高の先輩後輩でしかない」


 いったいどういう勘違いをしたらそうなるのだろうか。

 何度も否定しているのに、信じてもらえない。

 学校でもけっこう聞かれることがあるのだが、会長と俺は恋仲ではない。

 そもそも彼氏を上空へと投げ飛ばしたり、サンドバッグのように叩きまくったりする彼女がいてたまるか。

 DVと呼称するにしては過激すぎるだろ。

 俺じゃなかったら、何回も死んでいる。


「別に今更、隠さなくたっていいのに。彼氏じゃなければ、紫苑お姉ちゃんが連れて来る訳がないじゃん」

「だから彼氏じゃないっての」


 会長が俺をここに連れて来たのは、顔も名前も知らない第5公社の総長の指示だそうだ。


「じゃあ紫苑お姉ちゃんのことをもてあそんでいるの?」


  むしろ俺が彼女の遊び相手にさせられているようなものだがな。

 少し突き放すように言ったつもりなのに、追撃の手を緩めないのは会長の教えだろうか。


「紫苑お姉ちゃんは、私がいなければ何もできないの。1人では危なっかしいの」

「……分かっている」


「紫苑お姉ちゃんは、本当は凄いの」

「……それも分かっているよ」


 会長は久遠との関係性に矛盾があると口にしていた。

 久遠は会長に対して構いすぎな過保護でありながらも、東高に入学した彼女に対抗心を燃やして魔法科へと転向している。

 しかし久遠自身の言葉を聞いてみれば、その心根は決してゆがんでいない。


 彼女だって自身の矛盾に気づいている。

 根底にある感情は、会長に対する親愛なのだと、俺にだって伝わっている。

 むしろ好き過ぎて空回りしているだけ。

 たしかに今のままなら特段問題はないが、会長にもしものことがあれば、危ういかもしれない。


 東高に入学することになれば、魔法使いとして生きていく覚悟を固めなければならない、もしくは諦める覚悟。

 会長に依存しない彼女自身の物語が始まるのは、もう少し先かもしれない。


「あんたは紫苑お姉ちゃんの何なのよ」

「俺は紫苑のことを守る。ただ、それだけ」


 彼女が納得したかどうかは分からないが、それ以上の感情をわざわざ久遠に見せるつもりはない。


 俺自身だって会長との関係に迷いがある。

 むしろはっきりさせずに曖昧のままにしておきたい。

 いつかは終わるのだが、今は居心地が良すぎる。


「会長に憧れているなら、もう少し肩の力を抜きな。その方が可愛げがあるぞ」


 余計な一言だっただろうか。

 会長はただ強いだけではない。

 感情の振れ幅は大きいが、基本的には屈託のない明るさがあるからこそ、東高の暴君として君臨していても支持層が分厚い。


「もう! 今だけはあんたに任せてあげる。私が追いつくまでだからね」


 久遠は人差し指をビシッと伸ばして、宣戦布告してきた。

 少しだけ今の会長に似ていた気がする。


 こうして九重院への訪問は幕を閉じた。


“この宣言通り、翌年東高へと入学した九重久遠は一皮剥けていた。彼女は紫苑へと手が届く力を蓄え、さらに紫苑に匹敵するクレイジーさをそなえていた。そして高宮の破壊姫こと従妹の高宮陽菜と共に切磋琢磨せっさたくますることになる。この2人は蓮司ら生徒会メンバーを度々困らせることになる”


 ***

『おまけ』

芙蓉「大切な妹分を俺なんかと2人にして心配じゃないのですか」

紫苑「久遠は私と違って面食いだから大丈夫よ」


芙蓉「それって俺の顔がイマイチだと言っているようなものですよ」

紫苑「……」


***

『おまけ』“重要事項の年表”ネタバレなし

19世紀

・4柱の精霊王、人類に4元素魔法を授ける。

・A,Aとローズ、魔法黎明期を支える。


20世紀

・2回の世界大戦を経て、国家による魔法戦力の不保持協定。

・4つの魔法公社が台頭。


現代

・35年前:咲夜、九重院に引き取られる。

・25年前:咲夜、ローズの弟子として東高入学。

・24年前:春雨、東高入学。

・16年前:春雨と咲夜、結婚、懐妊、魔術儀式に失敗、高宮家を出奔、行方不明。

・15年前:ガウェイン、水の精霊王を顕現。ローズ、芙蓉の母さんになる。

・8年前:フォーティーン、ガウェインに救出され九重紫苑になる。

・5年前:芙蓉、ローズと別れる。

・4年前:芙蓉、ステイツのエージェントになる。

・1年前:紫苑、東高入学。芙蓉、魔法式の一部が自壊し、代わりにファイアボールを書き込む。生徒会3人、土の精霊王に挑む。

・今年:芙蓉、東高に入学し紫苑と出会う。

・1年後:久遠と陽菜、東高入学。


***

『あとがき』

九重久遠は、尖ったキャラの多い本作で初めての器用貧乏キャラです。

似た方向性だとダニエラや高宮飛鳥がおりますが、彼らは万能キャラと呼ぶべきでしょう。


さて、久遠が活躍するのはまだかなり先ですが、本作のキーパーソンであることには間違いありません。

再登場までの間に忘れられてしまわないか心配です。

勘の良い読者ならばその理由を察することができるかもしれません。

ヒントとしては、水属性、土属性そして身体強化。

何かと重なりますね。


 


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