9 親

『あらすじ』

テトラドの会へ潜入

地下施設で沙耶ちゃんを発見

佐参を味方に

 ***


 暗イ、寒イ、渇ク

 アルベキ贄が足リヌ

 昨晩のアレはナカナカに美味ダッタ

 だが空腹はマダ満タセヌ

 ソナタの祈リを捧ゲヨ

 ワレは何も授ケナイ

 タダ喰ラウノミ

 更ナル上物が近クにイル

 アノ娘に憑リツイタ


 ***


 テトラドの会潜入2日目。


 沙耶ちゃんという少女の捜索を最優先事項にしていた俺達だが、昨晩彼女に接触することに成功した。

 テトラドの会では、代弁者と呼ばれる信者に属性を開花させる存在の1人として扱われており、本部の地下施設に囚われていた。

 他の子供達も含めて連れ出そうとしたが、焦った俺達は拒絶されてしまい保護に失敗してしまった。


 長い夜はそれだけで終わらなかった。

 会長の昔馴染みの佐参と対峙した。

 精霊殺しの剣が有効な化け物を召喚した彼は、モグリの魔法使いとして俺達同様この施設に潜入していた。

 そんな佐参はテトラドの前身にあたる研究の被害者でもあった。

 彼の狙いは俺らとは異なり、宗教団体の背後にある資金提供者、そして代弁者を生産している科学者達。


 代弁者とは精霊と呼ばれる未知の存在を繋がれた子供達。

 それは彼ら彼女らの肉体と精神を蝕んでいるだろう。

 猶予がどの程度残っているのかは分からないが、消耗は着実に進んでいる。


 早期解決を目指す俺と、じっくり泳がせるために1年近く潜入した佐参の方針は相反していた。

 彼との私闘に勝利した俺は、こちらに合わせるよう強引な物言いを残した。

 佐参の返事は聞いていないが、どちらだとしても警戒を緩める訳にはいかない。

 俺は彼のことをまだ信用していないし、それはあちらも同じだろう。

 どちらにせよ俺達が争ったところで、会長が子供達の保護を最優先することは、昨晩の行動から想像することは容易だ。


 本日行うことは、警察への応援要請に必要な証拠集め。

 昨晩地下室で撮影した画像だけではまだ不十分だ。

 子供達が軟禁状態である証言が欲しいし、可能ならば沙耶ちゃん以外の子供達の身元も確認したい。

 さらに通報後は、テトラドの会の連中が自暴自棄にならないように子供達を守る必要もある。


 任務の本番はむしろ今日なのだが、昨晩は一晩中警戒していたので、睡眠を得られたのは明け方の短時間だけだった。

 体力の回復に不安が残るのに、追い打ちを掛けるように例の悪夢を見させられた。


 嫌なジンクスだ。

 あの夢を見た日は毎回激しい戦いになる。

 たとえばステイツで、宗教組織を隠れみのにして魔獣を密輸していた連中の倉庫を襲撃したときは、ベヒモスを相手にした。

 他にも華国のマフィアのチャンと決闘したり、第5公社の魔法使いを名乗る人物と共闘したりなんかもした。

 最近だと霊峰で吸血鬼のダニエラと戦ったときも夢のお告げがあった。

 一方でステイツ強硬派のアックス達による狙撃を防いだときはなかった。

 どちらも命懸けという点では同じだが、“魔法狩り”を使ったか否かという違いがある。


 現時点で佐参以外に敵の影は見えないし、あのレベルならば再戦したとしても結果は変わらない。

 彼の言う地下施設での研究に関わっている科学者や資金提供者の中に強敵に潜んでいるのだろうか。

 他に心当たりといえば、強引に連れて行こうとする会長に反発した沙耶ちゃんから、何か不穏なものを感じた。

 佐参の情報が正しければ、地下施設の子供達は精霊とのパスを繋がれているそうだ。

 精霊殺し以外の攻撃が通用しないならば、厄介かもしれない。


 そして気を引き締めて調査に取り組もうとした矢先に、ペースを握られることになってしまった。

 会長と合流したら、すぐに司祭姿の佐参に呼び止められた。


「沙耶の両親に引き合わせる。付いて来なさい」


 昨晩対峙したときの荒々しい態度とは違って、対外向けの丁寧な対応と言葉だ。

 胡散臭くもあるが、戦闘時にスイッチが入る連中は裏の業界に結構いる。

 俺だって殺す覚悟を決めたら、思考を切り替える。

 そうして狂気から己を守らなければ、日常に戻ってこられなくなってしまう。


 さて、本来ならば入信2日目の俺達は、昨日に引き続き集中講義を受けなければならないのだが、司祭の立場にある佐参の口利きで簡単に免除された。


 彼の案内で俺達が通されたのは小さな個室。

 中央には長机を挟むように2つの椅子が2組並べられてある。

 取り調べ室というほどの閉塞感はなく、大きめの窓がめられているがカーテンによって朝陽は程よく絞られている。

 まるで面談だな。


「すぐに連れて来るから、ここで待っていなさい」


 佐参は俺達を残して1度退出した。

 随分と協力的なのだが、一体どういう風の吹き回しだろうか。

 昨晩の戦いの後の交渉でも、彼は確かな敵意を残していた。

 対立状態は避けられないと考えていたのだが、会長が何かしたのだろうか。


 依頼主の須藤さんが沙耶ちゃんを引き取った夫婦に面会を求めた際は、不在という理由で門前払いを受けている。

 しかし佐参によると、2人はこの施設にいて、修行という名目で他人と会うことを禁じているそうだ。

 なぜそのような措置をしているのかは、いくつか想像できる。

 彼はそこまでは教えてくれなかったが、どの道もうじき会うことができる。


 佐参を待っている間、会長が先に席に座ると、俺を隣へと促した。

 そういえばこの施設に潜入してから、彼女と2人でゆっくりの時間は初めてだ。

 昨日に引き続き、まだ不機嫌なのだろうか。

 ピリピリした感触はないが、俺は他人の機微を読むのが苦手なのは自覚しているつもりだ。

 さらに彼女の機嫌はコロコロ変わるので、察するのが難しい。

 いっそのこと、いつものように暴力で訴えてくれた方が楽なものだ。

 何を話せばいいのか、言葉選びに悩んでいたら、彼女の方から切り出してきた。


「後輩君のおかげだね。私では佐参お兄さんを説得できそうになかったわ」


 一体何のことだろうか。

 会長が手を打ったと考えていた。

 むしろ俺は佐参との間にしこりを残す確執を作ってしまった。

 まったく展開を理解できずに苦心していたら、彼女にしては珍しく説明が入ってきた。


「佐参お兄さんは、その身体に憑りついている精霊に長年苦しめられていたの。特にここ数年は制御が効かずに、命に関わるほどまでに進行していたわ。普通の方法では精霊の本体にダメージを与えることはできないけど、後輩君が精霊殺しの剣で斬ったでしょ。精霊とのパスは完全に切れていたし、おそらく精霊はあちらの世界で消滅したわ」


 精霊を斬ったことは確かだし、その場ですぐに再生することもなかった。

 それは佐参の技量の問題であって、一晩すれば回復する可能性も想定していた。

 会長の言葉を信じるならば、馬と魚が混ざったような水の精霊は、どうやら俺が殺したようだ。


 それにしても精霊殺しの剣は、俺の使い方を間違っていなければ、途轍とてつもない欠陥品だ。

“殺し”とめい打っておきながら、その作用はあくまでもダメージを通すだけで、刃を当てた精霊を無条件に死に至らしめる訳ではない。

 昨晩、水の精霊を殺すのに何度か斬りつける必要があった。

 これが精霊王相手だとしたら、短剣一本で挑むのはあまりにも無謀過ぎる。

 ステイツ政府が求めているような、魔法公社優位の今の社会を崩す切り札にはなりえない。

 実際に扱うならば、精霊王の魔法を牽制しながら、その身体を削る必要がある。

 会長やローズかあさんクラスの魔法使いが複数人揃って、ようやく使える戦法であり、あまり現実的ではない。

 ニホンの地限定的ならば、神降ろしを使える高宮家の面々も候補に挙がるか。

 残念ながら、俺やフレイさんの部下達がこの武器を手に入れても、無用の長物に過ぎない。


 精霊殺しの考察については1度置いておいて、今は目の前の仕事に集中しなければならない。


「会長。確認ですが、今回の依頼は沙耶ちゃんの安否の確認と、彼女の両親の居場所の特定です。それでも地下施設の子供達の保護までするつもりですね」

「当然よ。それと会長じゃなくて、紫苑お姉ちゃんよ」


「はい、はい。紫苑お姉さん」


 孤児院とテトラドの会は蜜月の関係かもしれないので、須藤さんの名前を出すのは彼女にも危険が及ぶ。

 昨晩沙耶ちゃんを説得するために、会長が口を滑らせてしまっただ失態だったな。

 佐参が上手く誤魔化してくれたと思うが、後から来た連中に伝わっていないことを祈る限りだ。


 ニホンを含む多くの国では、公社に属する魔法使いには緊急性の高い場面ならば、依頼に関係なく独自の裁量が認められている。

 もちろん事後的に、警察や行政機関からの依頼という体裁を認められるような案件でなくてはならない。

 今回の場合、非人道的だとしてもそれはまだ俺達の主観によるところがある。

 そして緊急性は認められない。

 対応としては他の子供達については目をつむっても責任は発生しないし、警察に調査を引き継ぐのが無難だ。


 しかし会長がそこで手を引くとは考えられない。

 1度決めたら、押し通すのが彼女だ。

 俺はそれに付き合うしかない。

 方針の確認を終えたところで、部屋のドアが開けられた。


「俺は外で待っている。手短に済ませなさい」


 この場を設けた佐参は少し顔を見せると再び退席して、入れ替わりで2人の人物が入ってきた。

 俺達と同じ白色の支給品を着ている男女。

 20代半ばのニホン人の若い夫婦。

 料亭で須藤さんから見せてもらった沙耶ちゃんの写真に一緒に写っていた人物と一致する。


 ファミリーネームはたしか菅野だったはずだ。

 服装は他の信者と同じだし、装飾品はなく、化粧や髪型のセットをすることは許されていない。

 清楚というよりは、飾り気のない質素な雰囲気。

 軟禁に近い状態で世相から隔離されていたようだが、見た目から健康状態に問題はなさそうだ。


 事前調査では書類上夫婦なことは確認できているが、養女を引き取るための偽造という可能性もある。


 聞き込みをするにあたって、会長が俺に話しを進行するように目配せした。

 さて、どう切り込むものか。

 依頼主を明かすことはできないし、俺達が魔法使いであることも伏せておきたい。


「あなた方は沙耶ちゃんが、この建物の地下でどんな扱いを受けているのかご存知でしょうか?」


 自己紹介などせずに、一気に核心から攻めることにした。

 2人の顔から動揺が表れ、遅れて後ろめたさが続いた。

 どのくらいかは分からないが時間が限られているので、信用を得ることよりもブラフで畳みかけることにした。


「昨日も実験台に無理矢理押し付けられた沙耶ちゃんはずっと泣き叫んでおりました。見兼ねた私共が強引に連れ出そうとしたら、あなた方と一緒でなければ嫌だと頑なに断り、今も耐えております」


 かなり脚色した説明だが、この2人が動かなければ、沙耶ちゃんの保護をできないことには変わりない。

 俺の言葉を聞いて、先に母親の方が泣き崩れた。

 父親も強く握った拳が、自らの手を痛めていた。

 しかし2人の方から語り出すことはなかった。


 攻め方を誤ったか。

 かなり揺さぶっているはずなのに、どうにも煮え切らない。

 このままだと隣に座る会長の方が先に沸騰しそうだ。


「はっきりしなさいよ! 沙耶ちゃんが助けを求めているのに、あなた達は何もせずにただ黙っているの!」


 予感はしていたが、完全に常道セオリー無視だ。

 このような取り調べの場で、こちら側が2人ならば、アメとムチの役割分担が基本になる。

 先に動いた俺がムチなのだから、会長はアメでなければならないのに、平気でムチを握ってきた。


 男女4人が着席している部屋にただただ沈黙が流れる。

 対面にいる夫婦とはなかなか目が合わない。

 こちらから向けると一瞬すれ違うこともあるが、すぐに逸らされてしまう。


 ここで余計な言葉を重ねると、せっかく作り出した緊張が台無しになってしまう。

 俺はともかく、会長にとっては苦手な我慢比べ。


 無言が続く中で、夫婦は1度だけ互いに目を合わせると、俺の正面に座る旦那の方が口を開いた。


「僕らには親としての自信がありません。元々テトラドの会の紹介で、二カ月ほど前に沙耶と引き合わされました。彼女の親になることを条件に、祈りを捧げるときに代弁者様から近い位置を準備してくれるとのことでした」


 彼の言葉通りならば、目の前の男女は子供を望んで沙耶ちゃんを引き取ったのではなく、テトラド主導で彼女を代弁者の候補として確保するために養子縁組をしたのだろう。


「でもあのは僕らのことを『お父さん』、『お母さん』と呼んで、屈託くったくのない顔を見せてくれます。それを目にするたびに、彼女の期待に応えたいという思いと同時に、自分達のことばかりしか考えていなかったみにくさを自覚させられました。今は沙耶のためになりたいのに、本当に彼女の傍に居ていいのか分からないのです」


 矛盾ばかりで一貫していない言葉。

 だけどそれが虚言きょげん詭弁きべんでないことは分かる。

 旦那に続いて、菅野夫人も喋り出した。


「私達だって、沙耶のことを連れてここから逃げたいです。だけどどうすればいいのか分かりません。テトラドはいとも簡単に養子縁組を成立させました。逆に私達から沙耶を取り上げることだってできるはずです。そして2週間前、孤児院の方との面会で全てを話そうとしていることを司祭達に知られて以来、この施設から出ることを禁じられてしまいました。私達2人だけならどうにか生き延びられても、沙耶と一緒に逃亡生活をする訳にもいきません」


「それにこの施設に入ってから間もなく、代弁者になった沙耶には得体の知れない何かがりついております。僕らではあれをどうにもできません。結局顔を見ることすらできなくてもこの施設に留まるしかありません」


 この2人が親として適格かの判断は別として、ここまでの証言で警察に情報提供するのには十分。

 いくらテトラドの会が仕組んだ親子関係だとしても、今親権を持つのは目の前の夫婦だ。

 そもそも親子になってまだ数週間なのに、親としての自信なんてものがある方がおかしい。

 彼らがここから出たいと口にすれば、いくらでも手を打てる。


 問題なのは昨晩佐参にも指摘されたが、子供達を保護したところで全てが元通りとはいかない。

 彼らに繋がれた精霊とのパスを断ち切る必要がある。

 精霊殺しの剣が有効かもしれないが、安全性を考慮するならば、実行犯の科学者を確保するべきだ。

 しかしそんなことをこの場で菅野夫妻に話しても仕方がない。

 それは俺達がどうにかすべき問題だ。


 対談の最後に、警察への通報に関して2人の意思を確認しようとしたら、隣に座っていた会長が動いた。


「そんな言い訳を口にしている時点で親として失格なのよ!」


 俺はすぐに彼女の手首を掴んで静止した。


 そこは踏み込むべきところじゃない。

 俺達の仕事は沙耶ちゃんを幸せにすることではない。

 あくまでも彼女の安全を確保することだ。

 親子のケアは依頼内容に含まれていないし、所詮他人でしかない会長や俺が口出しすべきではない。

 基本的に感情任せの彼女だが、これでも第5公社の副長という立場の人間がそんなことも分からないとは思えない。


 そういえば昨晩の地下室での沙耶ちゃんや子供達への対応でも、焦りがとても目立っていた。

 佐参の登場で注意がおろそかになってしまっていたが、よく考えたら彼女らしくない。

 傍目には直情的な会長だが、ひとつひとつの言動に狙いがある曲者だ。

 しかし今の彼女は演技などではなく、自身の感情に振り回されているように見える。


 どうにも私情が混ざっていないだろうか。

 会長にとって、親子絡みの案件は何かあるのかもしれない。

 今回の仕事だって、第5公社が担当するような内容でもないのに、彼女はどこからか須藤さんの依頼を持って来た。

 東高に来る前の彼女の出自について、俺は何も知らない。

 近いようで、遠いものだ。


 しかし今俺がすべきことはいつもと変わらず、荒ぶる会長様のケアでしかない。

 机の上に乗り出しそうな、彼女を夫妻から隠すように前に出る。


「あなた方が嘘を言っているとは、俺には思えない。ひとつだけ確認したいのですが、テトラドにいるということは、その年齢でも未だに魔法使いを目指している。魔法よりも沙耶ちゃんのことを優先できますか?」


 これはとても残酷な質問。

 子供のために夢を諦めろと言っている。

 何気なく綺麗ごとを口にするのは簡単だが、人間というものは他者の前で誓約せいやくしたことをくつがえすのは難しい生き物だ。


 夫婦が覚悟を決めるまでに数十秒を要した。


 残念ながら欲しかった言葉は得られなかったが、今はこれで十分だ。

 沙耶ちゃんの前に立った時、改めて決意を固められるかが重要。


 会長はまだ言いたいこと残していたようだが、俺が遮る位置取りを維持して抑えた。

 さすがに素人の前で暴力的な魔力を振るわせる訳にはいかない。

 急いで部屋の外にいる佐参を呼んで、2人の安全を確保してもらった。


 ***


「どうしてあんないい加減な親を野放しにするのよ!」


 もちろん会長の言葉だ。


 たしかに理想的な親とは言い難いかもしれない。

 しかし完璧な親子なんているのだろうか。

 少なくとも沙耶ちゃんは先程までいた菅野夫妻を『お母さん』、『お父さん』と呼び、その夫婦は沙耶ちゃんのことを娘だと思いたがっていた。

 あの親子が本当の絆を築くには、時間が足りな過ぎる。


 小さな部屋に残された2人。

 不満をぶちまけていた会長は、暴れ疲れて俺の胸の中で大人しくなっていた。


「どうして会ってたった数日しか暮らしていない親の為に、沙耶ちゃんが苦しい思いをしなければいけないのよ……親なんて」


 小さく会長が漏らした言葉。

 元々、感情の起伏が激しい彼女だが、今回はいつもと違って情緒不安定だ。

 やはり何か別の事柄と、目の前の案件を混同しているように思える。

 もしかして自身と沙耶ちゃんを重ねているのだろうか。


 会長は菅野夫妻があの子を引き取ることを快く思っていないようだが、俺の考えは違う。

 あの娘の気持ちが分からなくもない。

 俺にとってローズかあさんは血縁上の母親ではないが、親だと思っている。

 それは捨てられた今でも変わらない。

 たとえ短くても、たとえ血が繋がらなくても親子の絆は存在すると信じたい。

 子供にとって、庇護者である親とは無条件に頼れるものだ。

 それを取り上げる権利はテトラドにも、そして俺達にもない。


 警察への通報に必要な証拠と証言は集まった。

 後は3人で手分けして、子供達の安全と科学者の身柄を確保するだけだ。


 ***

『あとがき』

次回、芙蓉が科学者を問い詰めます。


沙耶は芙蓉にとっての鏡であり、紫苑にとっての鏡でもあります。

芙蓉は、実の肉親を殺して自身を捨てたローズを、未だにかあさんと呼んでおります。

一方で幼少期にフォーティーンの呼称で実験体にされた紫苑は親を知りません。

沙耶は2人の背景と部分的に似ていながらも、彼女独自の物語があります。

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