11 面会謝絶

『あらすじ』

ステイツからの刺客

狙撃を回避

会長は不意打ちに弱い

 ***


 襲撃のあった次の日の朝、俺たち男子3人は生徒会ハウスへと向かっていた。

 本日は土曜日ということもあり、生徒会の業務は休みなのだが、負傷した会長の様子を確認するためだ。

 もともとはこっそり訪ねるつもりだったが、由佳が見舞いを提案したので、全員で堂々と訪問することになった。


 昨日は日が傾くと、宣言通り凛花先輩が俺たちを寮へと送り届けた。

 その際、彼女に今回の相手がステイツのいずれかの勢力の可能性が高いと告げた。

 俺自身の口から正体を認めてはいないが、彼女は俺がどこかの組織からの任務を帯びていることを承知している。

 生徒会の3人は第5公社に伝手があるようなので、そちらの線からの調査を期待している。

 さらにゴーレム使いである彼女は防衛に向いているので、しっかりと有効活用したい。

 俺とリズで長時間の護衛には限界があるが、ゴーレムならば24時間不眠不休で会長のことを守ることができる。


 また現場にいなかった蓮司にも、昨晩のうちに事情を説明してある。

 今回の襲撃について生徒会としても学園としても、戒厳令が敷いているが、生徒会ハウスに出入りメンバーには、知らせておく必要があった。

 もちろん俺たちには、事態が収束するまで生徒会を休むという選択肢もあったが、みんな図太いのか、ただ流されているだけなのか引き下がる者は誰もいなかった。


「どうしてですか?」

「だから無理だ!」


 俺たちが生徒会ハウスのエントランスに辿り着くと、入ってすぐにある2階への階段の先から話声が聞こえてきた。

 気配から4、5人といったところで、どうやら由佳たちが先に到着していたようだ。

 2階にあるのは生徒会役員の私室なので、1度も上がったことがない。

 本来ならば一声掛けるべきなのだが、何やら揉めているようなので、俺たち男子3人は少しドキドキしながらもそろりそろりと階段を上った。


 階段を進むにつれ、徐々に広がる光景には、廊下の先にある部屋の前に立つ凛花先輩と、彼女に抗議するクラスメイト女子たちの姿だった。


「だから紫苑は面会謝絶だ」

「病院でもないのに、会えないだなんて変じゃないですか」


 状況はいたってシンプルのようだ。

 会長の部屋の入口を塞いでおり凛花先輩と、簡単には引き下がろうとしない気の強い内の女子組による、対立構造だ。

 由佳が、慕っている凛花先輩に歯向かうのは珍しい。

 何だかんだで、みんな会長のことを憎からず思っているようだ。


 昨日、会長は銃弾が掠った程度だったので、甘く見ていた。

 その処置を怠れば感染症の危険があるし、弾に熱や衝撃に強い毒物が仕込まれていれば、後から容態が悪化することもあり得る。

 もしも彼女がひんしているならば、なりふり構わず対処する必要がある。

 凛花先輩の側からしてみれば、表に出したくない弱みかもしれないが、こちらにだって立場がある。


 女性陣の1番後ろにいたリズが俺たちに気づいた。

 俺はすぐに彼女からのアイコンタクトを受け取る。

 リズが陽動で、俺が本命だ。


 凛花先輩が声を発する隙を狙って、リズが飛び出した。

 リズはその小さな体で、扉を守る凛花先輩の横をすり抜けようとする。

 しかしその腕を掴まれてしまい、ドアノブには手が届かない。

 俺の姿が凛花先輩の視界から外れたタイミングを計って、リズとは逆側から門番を突破した。

 ドアノブに手を掛け、扉を引いた。

 廊下から中を確認しようとしたが、由佳たちが後ろから押しこんできたので、会長の部屋に入ってしまった。


「悔しい。悔しい、悔しいー! あー、ムシャクシャする!!」


 ベッドの上で横になっている彼女の姿を想像していたのだが、随分と元気なようだ。


 部屋の中は、強盗でも入ったかのように荒れ放題だ。

 それは片付けられないとかの問題ではなく、誰かが暴れたような形跡が多々ある。

 誰が暴れたのかは、今更説明はいらないはずだ。


 つまり、会長様はご乱心だった。

 だから凛花先輩は面会謝絶だと言って、俺たちと彼女の接触を妨げようとしたのだ。


 そして荒ぶる彼女と目が合ってしまった。

 俺はすぐに部屋の外へと逃げようとしたが、手遅れだった。


「「「ご、ごゆっくり~」」」


 同じ教室で授業を受け、放課後は一緒に生徒会の業務をする仲間達だったが、あっさりと俺を生贄に差し出した。

 俺を取り残したまま、廊下への扉が閉ざされた。

 この先の未来は、誰でも簡単に予想ができるだろう。


「止めろ。こっ、こっちに来るな! 誰かここから出してくれー!」


 俺は会長様のストレス発散のために、サンドバックへと転職するのであった。

 一応、奪った魔力で防御力を高めたが、その衝撃までは完全に受け流すことはできなかった。

 結局、昨日彼女が受けた以上のダメージを負うことになった。


 これ、俺じゃなかったら、マジで死んでいるぞ。

 これだけ騒いで、部屋の壁が無事なのが驚きだ。


“後日、凛花先輩から教えてもらったことだが、生徒会ハウスの壁は会長様が破壊するたびに堅牢に補強されていた”


 ***

『あとがき』

コメディ回でした。

次回は真面目に物語を進めます。

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