SS6 由樹の大浴場突撃作戦
『まえがき』
いつもアクセスありがとうございます。
今回はR15です。
***
「たまには芙蓉も大浴場に行こうぜ」
とある夜の自由時間に湯上りの由樹が俺に掛けた一言だ。
全寮制の東高は第1魔法公社が多くの資金を投資しているので、設備がとても充実している。
俺たちの部屋だって、今いる勉強机や本棚が4組ある居間とは別に、奥にベッドとクローゼットが並ぶ寝室がある。
そしてそれぞれの部屋にシャワーが設置されているが、1階には大浴場がある。
ニホン人たちは大きい風呂を好む傾向にあるが、ステイツでの生活が長かった俺からしてみれば、シャワーで十分だ。
もちろん湯を張った風呂が嫌いな訳ではない。
問題なのは大浴場で誰かと接触してしまうと、魔法式が勝手に魔力を吸って浮かび上がってしまうことだ。
魔法式自体は珍しくないが、俺の場合は背中をはじめとして体の大部分に現れるのだが、これは極めて異常だ。
最悪、クレアさんみたいなマッドサイエンティストに拉致される可能性だってあり得る。
どの国だって魔法の研究は行っており、国際法に抵触するグレーゾーンな実験だって水面下で稼働している。
余計な敵を作らないためにも、隠すに越したことはない。
校内で俺の魔法式を知っているのは会長と工藤先輩、もしかしたら草薙先輩を含めた生徒会役員たちだけで、ルームメイトの蓮司と由樹や、協力者のリズにも話していない。
彼らにだって被害が及ぶ可能性があるので、男同士でも裸を見せるのが苦手だという設定にして上手く避けている。
ちなみに霊峰の温泉で、会長と混浴をしたことはトップシークレットだ。
しかし偶には湯船に浸かりたくて、今晩のためにとある計画を準備していた。
大浴場は原則、夕食前後の時間しか入れないが、寮監の後藤先生にお願いして日曜日の深夜に1人で入らせてもらえることになった。
そして今日が待ちに待った日曜だ。
***
いつもと変わらない日常の中、夜が更けていく。
時刻は0時を回り、日付の上では次の日になっている。
蓮司と由樹の2人は寝室の方に入っていき、俺は週明けの課題を終えていないと言い訳をして、居間に残った。
東高の生徒は、規則正しく生活する者が多い。
全寮制で朝食と夕食の時間が決まっていることもあるが、激しい実技で消耗するので、自己管理がとても重要だ。
夜遅くまでゲームをしたり、本を読んだりしている由樹でも日曜日の夜はしっかりと休み、新たな1週間へと備える。
俺は物音を立てないようにこっそりとタオルを片手に部屋を抜け出した。
***
「蓮司、起きろ」
ベッドに入り、眠りにつこうとしていたところを起こされた。
声に続き、すぐに寝室の照明を点けられてしまい、拒絶は許されなかった。
いったい何なのやら。
面倒だが寝室を出て、居間へ向かった由樹を追いかけた。
そこには先ほどまで、机に向かっていたはずの芙蓉の姿がなかった。
机の上は綺麗に片付けられていて、少し席を外している訳ではなさそうだ。
どういうことなのか、いまいち状況が飲み込めない。
「芙蓉は大浴場に行ったのさ」
なるほど、いつもシャワーで済ませていた芙蓉が1階の風呂に入りに行ったのか。
俺たちは特に気にしないが、帰国子女の彼は他人と同じ湯船に入ることを嫌っていた。
しかしそんなことは、そっとしておけばいいのに、俺まで起こして由樹は何をするつもりなのやら。
「芙蓉の奴にニホン男児の付き合い方ってやつを教えてやるぜ。背中を流し合って、浴槽で水泳大会だ。もちろんタオルで隠すなんて言語道断さ」
さすがに一緒になって泳ぐつもりはないが、背中を流すくらいならばいいかもしれないな。
最近の芙蓉は、会長のせいで周りからの中傷が多く疲れているように見える。
この寮の中ですら、日当たりが厳しい。
たまにはこういう
由樹の企画にしては、珍しく健全だ。
「ついでに芙蓉がこそこそしている秘密を探ってやるぜ」
そっちが本心だったか。
たしかに芙蓉は、俺たちに隠していることがある。
夜中に寮を抜け出して出歩くことがあるし、寝室でこそこそしていていることもあれば、林間合宿では火薬式の拳銃を持って1人で飛び出して行った。
それに彼が使う魔法も実際のところよく分からない。
身体強化系なのは確かだが、そんな単純なものではない。
彼は実習などで戦いに対しては、冷ややかでストイックなところがある。
俺たちに見せていないが、自信を裏付ける何かがあるのだろう。
魔法使いであれば、誰だって他人の能力は気になるところだが、それを訊ねるのはマナー違反だ。
まぁ適当に由樹の
俺は干してあったタオルを取ると、部屋を出ようとしたのだが、由樹に止められた。
「まぁ待て。勘の鋭い芙蓉のことだから、万全を期すために助っ人を呼んだのさ」
背中を流すだけのイベントのはずが、何か大事になりそうな気がしてならない。
***
由樹がスマートフォンで助っ人とやらに連絡するのを待ってから、俺たちは寮の1階の玄関に集合していた。
助っ人と言われたときに同じ寮の連中だと思っていたが、彼は予想外の強烈なメンバーを呼んでいた。
「的場くんが高宮くんの入浴を襲うだなんて、こんなイベント見逃せないわ」
おかしな発言もするが、その飾らず屈託のない性格が功を奏して、男女ともに人気がある。
そしてそんな彼女が連れてきたのは、同室の物静かな銀髪の少女だった。
「今回は刺激が強そうだから、胡桃と芽衣は置いてきたわ」
だからといってリゼットをこのイベントに引っ張るのはズレている気がする。
「違う。興味ある。少しだけ」
橘が無理矢理連れてきたと思っていたが、どうやら本人の意思のようだ。
リゼットは芙蓉に懐いている節があるが、興味とは彼の魔法の秘密についてだと信じたい。
すでにキャパオーバーに感じるが、助っ人はもう1人いた。
由樹は眼鏡をくいっと上げるポーズを決めて、台詞を言っていた。
『この作戦を確実に成功させるために、俺は悪魔に魂を捧げたのさ』
そう3人目の助っ人は、あのお方だった。
「こんな面白そうな企画に呼んでくれるだなんて、褒めて遣わそう」
由樹は『は、はー』と芝居がかった挨拶をしている。
たしかに最強の生徒会長がいれば、誰であっても逃げることはできないが、やり過ぎな気がする。
ちなみに俺と由樹は寝巻のままだが、女子は3人ともジャージのようなラフな部屋着で来ている。
そのままエントランスで作戦会議が始まった。
といっても基本的な方針は、俺と由樹が風呂に突撃したあとに芙蓉を逃がさないように女性陣が退路を塞いで、問答無用で背中を流すだけだ。
「後輩くんの服を燃やしてしまえば、確実に逃げられないわ」
たしかに逃げられないが、さすがに酷いな。
それなら燃やさずに隠すだけで十分だろう。
もちろん会長の案は、人道的な理由で却下された。
そして由樹から改めて作戦の説明が始まった。
「俺の作戦は準備の段階で1歩先を進んでいる。すでに仕込みは済ませてある。これさ」
彼が取り出したのは万年筆のようなペンだった。
「悪戯の筆ペンね」
「その通りさ」
言い当てたのは橘だったが、俺だって知っている。
一時期ニホンで流行ったおもちゃだ。
おもちゃと言っても、汎用的な魔道具で、微弱な魔力を使って物や空間に描くことができて、魔力が切れると消失する。
少しでも魔力があれば扱えるが、使い道など落書き程度しかない。
子供が魔法使いの気分を味わえるおもちゃというわけだ。
「これにはちょっとした裏技がある。魔法陣を書き上げれば、魔力の拡散が安定して魔法を発動できるのさ」
そういえば由樹の部活は魔法開発部だったな。
彼は簡単に言うが、公開されている魔法陣で四元素魔法の下級魔法でも、精確に書くのに数時間は要するので、現実的でない。
しかし彼が部活で開発したシンプルな魔法陣だといくつかが実用可能だった。
実用と言っても、どれもくだらない陣ばかりだが、今回の作戦にうってつけのものがあった。
「ずばり液体を□ーションに変える魔法だ」
由樹の言葉に橘は過剰に反応していたが、会長とリゼットはあまり気にしていなかった。
化粧水以外の用途を先に想像してしまう俺たちに比べて、2人はまだ
由樹はすでに大浴場の全てのボディーソープの容器に魔法陣を書いていて、今晩中に誰かが触れるとその人物の魔力を吸収して発動するように仕込みを済ませていた。
つまり芙蓉は身体を洗うどころか、□―ションまみれになってしまう。
そこに俺たちが無事なボディーソープを持参して、背中を流しに入るわけだ。
なぜここまで大掛かりになったのやら。
こんなくだらない作戦に参加するのが、恥ずかしくなってきた。
なんだかこの企画から降りたい気分だ。
「さぁ、芙蓉の秘密を暴きにいくぜ!」
「穢れなきエデンへ!」
「……」
「後輩くんをからかいに!」
本来の目的は芙蓉を元気付けるはずだったのに、主旨が変わってきている。
全員、清々しいほどに自分の欲望に忠実だった。
リゼットに至っては、本当に今回の企画を理解しているのか疑問だ。
「おまえら! こんな夜に何をしている!」
「やばっ、後藤ちゃんだ」
寮の玄関から大浴場までの通り道には寮監室があって、夜にこんなに騒いだら、怪しまれるのは当然のことだった。
寮監の後藤先生は俺たちの担任であり、素っ気ない性格だが職務を忠実にこなす、清潔感にあふれたスーツ系の成人男性だ。
そして彼をちゃん付けできるのは、会長様くらいだ。
さて、どうしたものか。
俺と由樹だけならば、適当に誤魔化して風呂に行くのだが、下手に女性陣を連れ込んだせいで、どんな言い訳をしても回避できない。
馬鹿だが、頭の回転が早い由樹ならば、こんなことは想定済みのはずだ。
「
彼は彼女に向かって真っすぐ90°の礼をした。
完全に会長頼りだな。
「教員相手だと
車の免許みたいな言い方だが、教員に対しても引かない彼女でも学校の裁定には従うようで、今月はすでに後がないそうだ。
ちなみに5月はまだ半分も残っている。
さっそく由樹の作戦に
しかし問題児は会長だけでなかった。
「
橘が飛び出して後藤先生に体当たりした。
盾を振り回して戦う前衛タイプの彼女は、女子にしてはそれなりに鍛えられている。
たとえ獲物がなくても、座学教官の後藤先生に止められる訳がない。
倒れた彼に対して、橘はそのまま締め技を掛けて抑え込んだ。
「ここは私に任せて先に行って」
死亡フラグのようなその言葉に従い、俺たちは先に進んだ。
彼女には悪いが、個人的には橘が最初に脱落してくれて良かったと思う。
なぜか当たり前の男同士の付き合いが、彼女の頭の中では桃色になってしまう。
***
橘を切り離した俺たちは、脱衣所に辿り着いた。
造りは旅館に似ており、入り口で上履きを脱いで衣類は籠に入れるタイプで、1度に30人前後が使用することを前提にしているのでそれなりに広い。
寮の内部なので、わざわざ鍵付きのロッカーは存在しない。
天井ではサーキュレーターがゆっくりと回っていて、3つだけだが鏡付きの洗面台があり、ハンドソープ、化粧水や、ドライヤーなどが備え付けられてある。
「脱衣所に辿りつくだけでも、壮絶だったぜ」
やった感を出す言葉を口にした由樹だったが、俺とお前だけならば、こんな騒ぎにはならなかったはずだ。
余計な助っ人を呼んで、犠牲者1人(橘ではなく後藤先生)を出しただけだ。
しかし後は風呂場に入るだけなので、むしろリゼットと会長がいると俺たちが服を脱げない。
なんのために連れてきたのやら、というかせめて脱衣所の前で待機させれば良かったのに。
女性陣の視界に入らないように着替え籠の影に移動しようとしたが、会長がゆっくりと前へ進み、風呂場の入り口へと向かって行く。
その不可思議な行動を俺は静止した。
「会長、いったい何を?」
「トレジャーハンターたちが財宝を見つけたら、することはひとつでしょ」
つまり仲間割れか。
しかしここで俺たちを切り離すことにどんなメリットがあるのだろうか。
「後輩くんの背中を流したり、流してもらったりして、それでそれで……」
なぜか妄想が口から駄々洩れなのだが、身の安全のために記憶から削除しておこう。
世の中には知らない方がいいことだってたくさんある。
会長と対峙する俺の両隣に由樹とリゼットが並ぶ。
1対3の構図が出来上がるが、不利なのは俺たちの方だ。
実力の違いもだが、俺たちはだれ1人獲物を持っていない。
一方、会長は素手が基本スタイルだ。
ここに来て、フィジカルの強い橘を切り離したことが悔やまれる。
「殺さない程度に相手してあげるわ」
そんなことを
会長が1歩前進すると、それに合わせて俺たちは1歩後退した。
先制しなければ、万にひとつの勝機すら失ってしまうが、俺には攻撃の手立てがない。
横目に仲間の状況を確認すると、普段からポーカーフェイスなリゼットがさらに険しい顔をしている。
俺たちのメインアタッカーでも頼りになりそうにない。
しかし由樹の方は手を後ろに回して、何かを隠し持っているようだった。
もし彼に何か手があるならば、俺が注意を引くしかない。
由樹とは逆側から会長に向かって飛び出す。
俺を最初の標的として定めた会長も、1拍遅れて迎え撃つ。
そのタイミングで由樹は、彼女の足元に何かを放り投げた。
そこから液体が飛び出し、会長は足を滑らせて前のめりになり、顔面から倒れ込んだ。
よく見ると彼が投げたのは、蓋を外したハンドソープの容器だ。
その中身が会長の足をすくったのだ。
「何これ? ヌルヌルする~」
もしかして例の物なのか。
俺が由樹を向くと、同じような容器を俺にパスした。
「残り1発ずつさ。芙蓉が体を洗えないように、風呂場のボディーソープだけでなく、脱衣所のハンドソープの容器にも魔法陣を書いておいて正解だった」
魔法陣。
つまり“触れたら液体を□ーションに変える”ということだ。
1撃必殺の会長から1本取ったのは、このジョークのような道具なわけか。
まぁ、彼女が手加減してくれているから掴めた奇跡なのだが。
残弾は俺と由樹の手にある1本ずつしかない。
しかし会長もそれを警戒して、俺たちから目を離さない。
その隙を突いてリゼットが攻めの姿勢を見せた。
会長を飛び越えて、そのまま風呂場への扉を開けた。
「あと、任せた」
短い言葉を残したリゼットは俺たちに振り向きもせず、そのまま芙蓉のいる風呂場へと入っていった。
「違う! 俺たちを置き去りにして意味がない」
リゼットは今回の企画の主旨を分かっているのだろうか。
芙蓉の背中を流すためのタオルは俺の手の中に握られていた。
***
普段はシャワーが楽だが、やはり足を伸ばせる大きい風呂も悪くない。
寮の風呂場では、ひとつしかない大きな浴槽に湯が流れ続けている。
後藤先生に頼んで、お湯を抜かずに、ボイラーを点けたままにしてもらっている。
サウナと水風呂もあるが、本来の入浴時間じゃないのでそちらは稼働していない。
なぜかボディーソープの容器に魔法が掛けられていたが、身体を洗うときにうっかり触れてしまい、魔力を吸収してしまった。
幸い少量だったので、身体に浮き上がった黒い影のような魔法式はすぐに薄くなり消失した。
トラブルがあったものの、しっかり身体を綺麗にして、湯船で温まることができた。
しかし俺のリラックスタイムは唐突に終わりを告げた。
誰もいないはずの脱衣所の方で、慌ただしい物音がしてきた。
気配から複数人だとすぐに分かった。
入浴時間は過ぎているが、大浴場の照明が点いているので、誰かが入りに来てしまったのかもしれない。
それでも体に触れられるようなことがなければ、特に問題ない。
もう少し入っていたくて惜しい気もするが、さっさと風呂から上がることを決めた。
濡れたまま脱衣所に行くわけにはいかないので、扉の前でタオルを絞っていたら、先に誰かが入ってきた。
思っていたよりも、身長が低い。
顔を下に向けると、見覚えのある綺麗な銀の髪が目に入ってきた。
風呂場に服を着たまま入ってきた闖入者は下の方を見たまま、いつもの通り短く小さな声を発した。
「芙蓉、見た目、ニホン人……そっち、ステイツサイズ……」
なにがどうしたらこんなことになった。
しかも未だに彼女の視線は下を向いたままで硬直していた。
理由は分からないが闖入者が彼女で良かったのかもしれない。
ステイツの特殊部隊の訓練に合流したときは、着替えや身体検査で男女が別けられていないこともあった。
そのため同業者の彼女相手ならば、かろうじて平静を装えた。
(ごめんなさい。嘘です。めっさ、恥ずかしいです)
しかしこうなると、脱衣所から感じられる他の気配は一体誰なのか。
さらなる受難の予感しかしない。
未だに下を向いて固まったままのリズを無視して、腰にタオルを巻くと、堂々と脱衣所へと撤退する。
しかしそこには、なぜかパンツ一丁のルームメイト2人と、服を着たままびしょ濡れの会長が対峙しているという情事が繰り広げられていた。
「芙蓉、身体を観察させろ!」
「男同士で仲良く背中を流しあおうぜ!」
「後輩くん。ヌルヌルが気持ち悪いよぉ~」
由樹、蓮司そして会長様の順だ。
一体なにがあれば、こんなことになったのだろうか。
なぜだか今の由樹に近づいてはいけない気がする。
そして珍しく蓮司が暑苦しい。
会長に関しては、ただ濡れているのではなく、言葉の通り動くたびに垂れている水滴の尾が引いていて、動き回るたびにヌルヌルが広がっていく。
彼女がおかしいのはいつもの事なので、放っておきたいが、彼女の側が俺のことを放ってくれるかは別の問題だ。
足元が滑って、まともに歩けていない会長が手を広げ、俺に抱き着こうとて飛び掛かってきた。
今はタオル1枚だけなので、触れられたら魔法式が浮き上がって、蓮司たちに見られてしまう。
それにせっかく風呂から上がったばかりなのに汚れたくない。
いつもの彼女の直進ならば直撃コースだが、足元がおぼつかなく踏み込みが甘いので、軽く横に動くだけで簡単に回避する。
俺に抱き着けなかった会長は、そのまま前のめりに滑って顔面から倒れた。
すぐに顔を上げて不機嫌そうに抗議してきた。
「どうして避けるのよ。私たちは誓いを交わした仲じゃないの」
何の誓いか知らないが、1度だけ全てを捨ててでも彼女を守ることならば、こんなところで使ってもいいのか。
俺は目を合わすことなく、他人の振りをしながら、身体を拭き服を着始めた。
髪を乾かすのは、部屋に戻ってからでもいいだろう。
俺があまりにも堂々と無視を決め込むせいなのか、会長も蓮司たちも反応に困っていた。
それでも立ち直りが1番早かったのは、ポジティブシンキングな会長様だった。
「後輩くんに冷たく扱われるのも、新鮮で楽しいかも」
この人は転んでもただでは起きないな。
今まで以上に
とりあえず部屋に戻ったら、会長を回収してもらうために
ちなみに透けブラを観察する余裕が無かったことを、惜しいと思ったことは、正直に告白しよう。
帰り道に後藤先生を押し倒す橘を目撃してしまったが、そういう深い事情には踏み込まない方がいいだろう。
***
次の日、蓮司と由樹は大浴場の清掃をやらされた。
橘たちも女子寮で掃除をやらされることになった。
こうして9班の悪評は日々、増していった。
ちなみに会長の奇行はいつものことなので、評判が上がることも下がることもなかった。
***
『あとがき』
いかがでしたか。
R15の範囲で書かせていただいております。
ターゲットが芙蓉で、トラブルは全て由樹の自業自得でした。
女子風呂は? 筆者はそのようなことを予告しておりません。
そのうち再戦『第2回由樹の大浴場突撃作戦』を書きたいです。
次回は会長による人物紹介が再び帰ってきます。
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