幼女降臨

そうして部屋に戻るとさっきまで舞花が座っていたところに幼女が座っていた。次はなんの冗談だか、そう思い周りを見渡すが舞花の姿はない。

探せど探せど舞花はいない。いるのは舞花によく似た幼女だけだ。


「こんにちは!お名前はなんていうんですか?」


仕方が無いので幼女に話しかける。こんなセリフ舞花に聞かれたら恥ずかしくて顔から火が出るだろう。しかし、オレはこの子に興味があった。

柔らかそうなほっぺた、サラサラな髪、など似ているところが沢山ある。

中でも一番よく似ていたのは冷めた目だった。この世の中には期待しないような冷たい目。舞花に惹かれる一番の理由。

舞花(仮)は右手を上げて元気に言い放った。


「いくた まいかです!ももぐみ、5さいです!」


ぐはっ、幼女ってこんなに可愛いんですか?天使降臨ってことでいいんですか?ってかさっきから口調がおかしくなってませんか?

落ちつけ久世原 君彦。相手は年端もいかない女の子だぞ。大の大人が落ち着かんでどうする!もう二十六だろうが!


「よく出来ました!おじさんは君彦っていうんだ!よろしくね」


何とか大人の威厳は保てた。危ないところだった。

しかしどうやらこの子は舞花本人らしい。ただ幼くなっただけだ。

幼い頃の舞花を見てみたいと思ったことがあったがこんな形で見ることができるとは思っていなかった。

善行は積んで、長生きはするものだ。


「おじさんは怖い人?」


「おじっ」


もうそんなことを言われるような歳になったのか、と膝に来るダメージを覚えた。だがよくよく思うと、さっき自分でおじさんと名乗っていたからそういったのだ、と自分に言い聞かせる。


「そんなことないよ!そうだ、まいかちゃんが大人になってからの話をしてあげよう!」


「え!まいかおとなになれるの?すごい!」


まいか(幼女)からの信頼を得るために、大人になってからの舞花の話をしようとしたら意外と受けがよかった。

この頃の子どもって大人になれるのが当たり前で、そんなことには疑問すら感じないんじゃないか思っていた。しかし、いつも舞花が「安全であればいいよ」って言っていたことを思えば、これくらい小さい頃から色々と苦悩があったのだろう。

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