本編

初めてのソシャゲ

「そんでな『紹介がある場合はコードを打ち込んでください』って出るからこのコードを打ち込んで……」


 相変わらず面倒くせえな、この先輩。そんなこと考えてる俺、辻元拓也。現在大学2年生。

 特にやりたいこともなく、行けそうな大学に入って、少しずつ単位を落としながらも何とか進級してる。夢は特に無い。


「おい、聞いてんのか?」

「すみません。自分ソシャゲとかやったこと無いんで」

「だから教えてやってんだろ? 絶対に紹介コード打ち込めよ、やる意味無くなるから」


 そんでこの先輩がいぬい玄太郎、軽音サークルの先輩。めちゃくちゃ厄介。先輩という立場を利用して、かなり面倒なことを後輩に押し付けて来る、いわゆるバツ先輩。今回も自分がやってるソーシャルゲーム、略してソシャゲの紹介ポイント集めに俺を利用しようとしている。


「頼むよ? 今日中にな」


 そう言って去っていった。


 マジ面倒くさいわ、そう思って踵を返した俺の背後に声がかかった。


「あ、拓也。ちなみにそのゲーム、かなりヤバいから」


 それだけ言うと再び講義室のある建物に消えていった。


 何だよ、ヤバいって。

 俺がその「ヤバい」を理解するのはもう少し後のことになる。

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