第3話 「このホモ野郎!」

「セシル。お客さんかい?」

「え!? ああ~そうなんだ。一緒に神を倒した時のパーティーの白魔法使いのカトリーヌだ。」

「初めまして、プリースト様。私は神殺しよりもプリーストを殺す方が好きな白魔法使いです。」

 なぜかカトリーヌの目はジャスティンを睨んでいた。

「あれ? なぜか睨まれているような?」

 ジャスティンもカトリーヌの異様な殺気に気がついた。

「こらー! やめろ! カトリーヌ! さっさと魔物を退治しに行くぞ!」

「キャアアアー!?」

 俺はカトリーヌを引きずりながら村の外に逃げていく。


「何しにに来た? カトリーヌ。」

「酷いわ! そんな言い方! 私は、あなたのことが忘れられなくて、こんな辺境の田舎まで会いに来たのに!」

「いや、来なくていい。」

 カトリーヌの目的は、俺だった。

「くらえ! ジャスティン・ブレイク!」

 かつて俺は最強の勇者として大活躍していた。

「キャー! キャー! セシル!」

「カッコイイ!」

「付き合ってください!」

「私と、結婚して!」

 街に凱旋した時には、世界を救った英雄として、たくさんの若い女性たちからモテモテだった。自分でいうのもなんだが、大人気だった。

「セシル! 私と付き合ってください!」

 ある日、同じ戦闘パーティーだったカトリーヌからも告白された。

「ごめん。俺には心に決めた人がいるんだ。」

「誰!? セーラ? それともアロア!?」 

「違う。ここにはいない。」

 俺はカトリーヌの告白を断った。

「セシル、好き。」

「断る。」

「セシル、愛してる。」

「断る。」

「セシル、金返せ。」

「借りてない。」

 俺は毎日カトリーヌから告白され続けた。

「ええ~い! しつこい! ストーカー女め! 俺が好きなのは、ジャスティンという男なんだ! だから女のおまえに興味はない! 分かったら、俺のことは忘れてくれ!」

 堪忍袋の緒が切れた俺はカトリーヌに同性愛者だと告白した。

「ジャスティン、殺す。」

 カトリーヌは諦めるどころか、俺の愛するジャスティンの命を狙うために姿を消した。

「ジャスティンが危ない!? 直ぐに村に戻らなければ!?」

 ということで伝説の英雄である俺は、愛するジャスティンがいる辺境の村に帰ってきた。

「まさか、ここまで追って来るとはな!? さすがストーカーだ!?」

「知ってるでしょ? 私、クレリックの白魔法使いだけど暗殺も得意なのよね。」

「さすが俺のパーティーだったことはある。簡単には倒せそうにないな。」

「乙女の純情を踏みにじったことを後悔させてやる! このホモ野郎!」

 俺とカトリーヌの頂上決戦が始まろうとしていた。

 つづく。

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