初めての女子の部屋で2人きり
伊藤さんに挨拶をし終わった後、昼ご飯について考える。12時までそこまで時間もないし、簡単なものでいいだろうし、ナポリタンでも作るか。作る材料があったし丁度いいだろ。
スパゲティーを茹でてる間に、夜ご飯は何にするか考える。伊藤さんは何が好きなんだろうか? なんとなくハンバーグとかな気がする。知らないうちに伊藤さんの事を考えていたら、茹で上がったため、取り出し、湯切りする。そのあと、はじめに切っておいた玉ねぎとウインナーを中火で炒め、調味料を適量入れたあと、麺を入れ馴染ませる。
「よし、完成だ。そろそろ時間もいいし、持ってくか」
できたばかりのナポリタンを1つの皿にのせ、持っていく。最初は2つに分けて持っていこうと思ったが、玄関を開けるのに一苦労だろうし、流石に伊藤さんの部屋に皿の1枚や2枚はあるだろ。
隣の部屋のインターフォンを鳴らす。鳴らすとすぐに伊藤さんがでてくれた。
「あっ、斎藤くんだ! さっ、入って入って〜!」
「お邪魔します」
靴を脱いで部屋に入る。
初めて女子の部屋に入ったが、こんなに散らかっているものなのだろうか。なんだろう、全くときめかないんだが。
「な、なぁ、ちゃんと掃除はしてるのか?」
「掃除くらいはちゃんとしてるもん! これでも結構綺麗にしてるほうなんだよ?」
「えっ?! これでか? 下着とか色々その辺に投げられてる気がするのは俺だけか?」
俺がいうと、伊藤さんの顔はみるみる赤くなっていく。茹でだこみたいに真っ赤だ。
「ちょ、下着は見ないでよ! ……エッチ」
なんだろう、不覚にもドキッとした。学校での伊藤さんに言われたら、キュンキュンしてたかも知れんが、この部屋を見てからだとその感情もなくなる。
でも、結構子どもらしいパンツ履いてるんだな、と思ったのは内緒だ。
今の見た目は、髪を整えており、誰が見ても可愛いと思うはずなのだが。
「なら、散らかすなよ。ちゃんと洗濯かごにいれるか、クローゼットの中に入れとけ」
「ご、ごめんなさい。そうします。……でも、これは忙しすぎて洗濯することができなかったんだよ?」
「それでもだよ。洗濯かごに入れるくらいはできるだろ。これからは服を脱いだら洗濯かごに入れるっていう習慣をつけたほうがいいぞ?」
「そ、そうだよね。汚いもの見せてごめんなさい」
本当に申し訳ないような感じで謝られるため、悪くないはずなんだが罪悪感が湧いてくる。
「ま、まぁ次から気を付けてくれよ? 服ならまだいいが、流石に下着類は見えないところにしてくれ。伊藤さんも見られたら困るだろ?」
「う、うん。今度から気をつける。だから、今日見たものは忘れて? お願い!」
「おう。忘れられるように努力する」
「そ、それよりもさ、ご飯食べよ! 私お腹すいちゃった!」
「そうだな。伊藤さん、皿1枚あるか? ナポリタンを分けたいんだが」
「お皿? 私お皿持ってないんだ! 今まで必要なかったし!」
なんか、朝から驚きの連発なんだが。俺が思っている伊藤さんはもっとなんでも出来るようなイメージだった。
勉強とかスポーツもなんでもそつなくこなすから、余計にそう思っていた。だから、目の前にいる伊藤さんがプライベートだとこんな感じになるとは夢にも思わなかった。
でも、伊藤さんも人間なんだなと思ってホッとしている俺もいる。
「ま、まじかよ。なら、部屋から皿持ってくるか」
「えっ? このまま2人で食べればよくない?」
「伊藤さんがいいならいいんだが。そんじゃ食べますか」
やっとご飯が食べられる、そう思った俺であった。
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