私の随想

榎澤えのき

随想1 中学時代

 少し時間ができたので、想い出を書きとどめておこうと思う。

 とはいえ、そんなに昔のことは覚えてもいないので、10代の想い出が主になるだろう。単なる自分語りであるし、独り言であり、誰に向けたものでもない。そのため、「ああ、こんなやつがいるのか」と思ってもらえればいいだろうし、自分の体験と比べてみるのもいいだろう。

 ようするに、互いの暇つぶしになればいい。


 さて、どこから語ろうか思慮するに、中学に通っていた時分の話は外せないだろう。であるならば、そこから思い起こせばいいし、語りたいという気持ちが強い。


 中学生になる。

 それは義務教育なので進学するのは当然のことだろうが、小学6年生だった自分の目からは中学に通うというのは何か明確な違いがあるように感じていたように思う。いま思えば、そんなに大それたものでもないが、小学校で学年が変わるのと、小学生から中学生に進学するのは大きな違いだったのだろう。小学生になる前に、ランドセルをもらって嬉しがっていた時も似たような憧れみたいなものを持っていた気がする。要は、小学生を卒業したら中学生になる、という決められた明確な線が、大人に一歩近づいた証のように思えたのだろう。ただ、ランドセルをもらってはしゃいでいた時のような憧れはそんなに持っていなかった。


 中学校は市立。

 いまでこそとても落ち着いた学校になっているようだが、自分が通い始めることになった時は、まだまだ荒れていた。そして、皮肉なことにも荒れていた最後の世代というのが、たまたま自分たちの世代であった。たまに自分たちの世代が卒業してからの母校の評判を聞くと、「落ち着いた学校になった」という返答が返ってくる。「あなたたちが卒業してから」という言葉がついてくる位なのだから、やはり、この認識は間違っていないのだろう。


 

 そう表現すると、漫画や映画の世界を引き合いにだして考えるかもしれない。しかし、そんなに酷くはなかったといまでは思う。せいぜい上履きが勝手に取られるから教室に持って上がらなければならなかったり、窓ガラスが時たま割られていたり、気の弱そうなのを見つけては何人かで囲ったり、授業をさぼったり、怒鳴り声が聞こえてくる。そんな感じだった。もちろん真面目に学校生活を送っているのが大半だったので、そういった行動をとっていたのは少数派だ。

 学校を卒業してから色んな人と話をすると、うちはもっとこうだったとか、なんとかというチームがあって喧嘩ばかりしていたとか聞くものだから、それに比べればまだ大人しくはあったのだろう。実際のところがどうだったかなんて、あまり関わっていなかったので詳細まで知る由もない。もしかしたら、なんとかというチームに入っているのもいたのかもしれない。いまとなっては、もうどうでもいいことである。ただ、当時の自分にとって、その荒れ方は望ましくなかったということだけ。


 さて、ここまで少しだけ母校の中学校について語ったので、気がついた察しのいい者もいるだろう。


 そう。

 自分は中学校にいっていない。

 

 俗にいう、であった。



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