第23話 僕と幼馴染と酷な選択

〖それで、いいのか?〗


「……はぁ、はぁ……………時坂っ!!」

自宅から病院まで全速力で走った。多分、今までで1番早く。

病院に入っても、僕は走った。看護師さん達から注意も受けたが今はそんな所じゃない。

だが、時坂の病室のドアは開けられていた。医師と看護師が数名いる。切羽詰まった状況だと、誰が見ても分かった。

「……っ!先生!時坂は!?」

「あぁ、君は時坂様のお友達………。我々も、全力を注いでいますが時坂様の意識が、戻らず……脈も……」

「………助かるんですか?助からないんですか?」

中年の医師は少し目を逸らし………

「…………現状だと、後者になります……」

先程から胸をチリジリと焦がしていた炎が途端に強火になる。

「先生………頼みます、時坂を助けてやって下さい。僕は………あいつに、まだ言わなきゃいけない事が残ってるんです!!………だから、今……いなくなったら……こまるん、です…!!」

「………最善は、尽くさせてもらいます」

"ブー、ブー"と、スマホが、震えた。

「……すいません、少し失礼します」

病室を抜け、ベンチに腰かける。

「………夢乃から?………なんだ?」

今は、三辻の元に居るはず………。

「…………もしもし?夢乃?」

電話越しで、夢乃ではない声が聞こえてきた。

「…………やぁ、影里君。時坂さんの調子はどうかな?彼女の心配をするのもいいけど、君の彼女の心配もした方が良いんじゃないかな?」

「……………っ、お前、夢乃に何かしたらタダじゃ済まないぞ……!」

僕のセリフも、三辻はさらりと受け流して話を進める。

「まぁ、まぁ、落ち着いてよ。今すぐ来れば問題無いさ。今すぐに…………ね」

そう言って、通話が切れた。

また、何か嫌な予感がする――――――。

そして、その予感は直ぐ当たることになった。

"ビービー"と、院内にベルが鳴り響く。

医師達が、時坂を囲むようにして集結した。

「ど、どうしたんですか!?時坂に何か――!?」

「極めて危険な状態です。これから、集中治療室に運びます」

「……………ぇ、嘘……だろ」

数分して、その場に残ったのは僕だけだった。

そう、ここで全てが繋がった。

僕達は最初から三辻の思うがままだったんだ。アイツの手の上で踊らされてたんだよ。

「………………くそっ!!」

時坂から離れる訳には行かないが、夢乃の所にも行かなきゃならない―――――。



数十秒の思考の末、僕は決断した。



その場所に向かって、足を動かす。



後悔だけは、もうしたくない。



どんな結末が待っていようと、後悔だけは、絶対に―――――。


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僕の幼馴染が可愛すぎる件について 雪境 ユキ @Sakino1214

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