第22話 僕と幼馴染と逆襲の刃

〖ここから〗


「……………夢乃、本当に大丈夫か?」

「……うんっ!!任せて!玲葉を救う手がかり、見つけるよっ!!」

夢乃と話あった。

結論として、夢乃は再び三辻の手に入り僕達に情報を伝える――――いわば、スパイの様な役割をしてくれるということ。

だが、勿論リスクもある。

それも、かなり大きな。

でも、夢乃はやると言った。心臓が爆ぜる程心配だけど、ここは夢乃を信じようと思う。

「なに、なに〜?柊太ってもしかして、案外、嫉妬深い??大丈夫だよ、私は柊太一筋だからっ!!」

そう言って微笑んでくれる。

なんだ………凄い、照れるな……。

「あ、顔赤い………照れてる?」

「………うっ!し、しょうがないだろ!!照れるに決まってるさ………こんなの……」

「……………も〜、しょうがないなぁ……!!じゃあ、特別だよっ?」

――――――――――ぇ?

言うと、夢乃は僕に抱きついてきて。

「ぎゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ぅっ!!!………これで、どう?元気になった?不安じゃない?」

不安は、不安だよ!!

でも……………まぁ。

「あぁ。元気になった。それと、ちょい………苦しいから……………」



「――――――――――――ダメ」


「……………もうちょっとでいいから、このままでいて?」


そう言う、夢乃の手、体は震えていた。


夢乃も、本当は怖がっているんだ。


そんな事にも、気づいてやれてないのかよ、僕は。


「……………そりゃ、怖いよな」


「…………うん、怖い。柊太と離れるの……ヤダ」


「……………でも、これは柊太の為だけじゃない」


「…………これは、柊太の為であり、私の為で、玲葉の為でもある」


「だから、やらなくちゃいけない」


そっか…………。


僕は、今一度夢乃の強さを感じた。


みんなの為に、一生懸命で、たとえ怖くても立ち向かう。それでいて、凄く可愛い…………。


僕は、そんな所に惚れたんだろう。




〖動き始める、僕達の作戦〗


夢乃は、夢乃のやるべき事をしてくれている。

なら、僕には何が出来る―――――――?

僕の、すべき事……………。

夢乃の情報を待ってるだけじゃダメだ。自分でも、動かなければ。

化学の授業中、僕はずっと考えていた。

そして、出た。

結論を、どうにか導き出すことが出来た。

今、僕に出来る事、それは――――――――。

敵の暗部に侵入し、黒幕を突き止めること。

僕が、記憶を回復したことは三辻にはまだ言っていない。恐らく、あいつは今も僕が以前の記憶を失っていると思っている。これを、逆手にとることにした。

まぁ、要は―――――――、

どこまで、ヤツらを騙せるか、だ。



―――――――――――――――――――――――



下校時刻になった。

夢乃とアイコンタクトをとり、僕は速やかに下校する。三辻に、夢乃は歩み寄った。

「……………三辻君、この前は……ごめんなさい。私、ついカッとなっちゃって………ごめんね?」

いや、それはぁ………………………。

世の中の男イチコロよ?

キュンとしないやついないから、うん。

「…………ん?あぁ、天咲さん。俺も気にしてねぇよ。ちょっと、オレの方もカッてなってな。うん、オレと、より戻してくれるか?」

チョロいな、おい。

お前、道歩いてる女(美人)に1万貸して?って言われたら即座に貸すタイプだろ。見返りもないのに。

「…………じゃあ、いつものとこ行こーぜ」

いつものとこ?

廃工場の事か……………?

後をつけるのは、やめるか。流石にバレたら痛い。

僕は、僕のすべき事、だよな。



―――――――――――――――――――――――



僕は、家に帰り少し落ち着いて現状を整理しようと思う。

スマホを起動させて、メモを打とうとした時。

電話が、来た。

「………………………ん?病院から?」

これって…………時坂の病院か?

電話なんて…………今まで、一度も無かったぞ。

突如、不安の波が押し寄せる。

焦燥感に駆られ、冷や汗が垂れる。

大丈夫、大丈夫だ。きっと、大丈夫。

そう思いながら、恐る恐る着信ボタンを押す。

「…………もしもし、影里です……」

電話越しに、女性の声………看護婦らしき人の声が聴こえた。

『急に、お電話をして申し訳ありません!!お願いします、至急、病院に起こし下さい!!時坂様が……………っ!!』

電話越しの看護婦の声は、とても震えていた。

同時に、僕の全身も震えが治まらなかった。

それでも、極めて冷静、平常に言葉を返す。

「…………時坂に……玲葉に、何かあったのですか?」

『時坂様の…………命が、危ないのです!!お願いします、早く、来てください!!』

視界が揺らいだ。

命が…………危ない?

数日前までは、もう退院出来るほどだったし、どこも悪そうでもなかった。

ここに来て。

このタイミングで、起こった。

僕の、スマホを握る力が増す。

「……………分かりました。直ぐに行きます。それまで、どうか玲葉の命、お願いします」

そう言って僕は通話を終える。


「……………もう、許さないっ。許せるわけがない。僕は、絶対にあいつらを許さないっ!!」








頼む。












玲葉、生きていてくれ。


死なないでくれ。












僕の心で静かに蒼い怒りの炎が、火花を散らした。






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